トヨタ イスト デビュー時は4万台超受注! 人気車が犯した小さくて大きな命取り【偉大な生産終了車】

■北米向けの「全幅1695→1725mm」という選択が命取りに

 初代のデビュー当初は爆発的に売れたトヨタ イストが、2代目で廃番となってしまった理由。それは、「中途半端に大きくなったから」ということに尽きるでしょう。

 初代イストは当初国内専用車でしたが、途中から北米トヨタのサイオンブランドで「サイオン xA」としても販売されるようになりました。

 しかし2代目イストは、最初から北米での展開を想定していました。

 そうなると1695mmという全幅は、コンパクトカーといえども北米基準では小さすぎるため、2代目イストの全幅は1725mmとなったのです。

 また広大なアメリカを走るうえでは1.3Lエンジンでは小さすぎるという判断からか、エンジンも初代の「1.3Lまたは1.5L」から「1.5Lまたは1.8L」という組み合わせに変更されました。

ボリューム感を増し、全幅も1725mmへと拡大されたイスト。だがこれが命取りとなる(写真は2代目)。なおist(イスト)の名は「Stylist(スタイリスト)」「Artist(アーティスト)」のように、「~をする人」という意味を表す接尾辞に由来する
ボリューム感を増し、全幅も1725mmへと拡大されたイスト。だがこれが命取りとなる(写真は2代目)。なおist(イスト)の名は「Stylist(スタイリスト)」「Artist(アーティスト)」のように、「~をする人」という意味を表す接尾辞に由来する

 このあたりの判断は、北米基準というかグローバル基準で物事を考えるのであればきわめて妥当であり、また1725mmという全幅も、今となっては「カワイイもの」といえる程度のサイズ感でしかありません。

 しかし2代目トヨタ イストが登場した2007年の段階では、「小型車の車幅が3ナンバーサイズである」というのは、ユーザー心理として許容しかねるものでした。

 また税金の面で中途半端に不利になる「1.8Lエンジン」というのも、日本市場とは相性の悪い排気量でした。

 当時のトヨタが「いや、それでもイケるはず!」と自信を持って2代目をGoさせたのか、あるいは「ちょっと難しいかもしれないけど、今や日本市場だけを見て車を作るわけにもいかないし……」的な判断で2代目イストの国内販売をスタートさせたのかは、筆者にはわかりません。

初代のリアビュー。前後の足まわりにスタビライザーを装着。さらに後輪のサスペンション自体にスタビライザー効果のあるトーションビームを別途備え、走りの安定性に優れた
初代のリアビュー。前後の足まわりにスタビライザーを装着。さらに後輪のサスペンション自体にスタビライザー効果のあるトーションビームを別途備え、走りの安定性に優れた

 しかしいずれにせよ当時の日本市場は、2代目イストに対して数字で「No!」と言いました。

 2代目イストは「ものすごくいい車だった」とはいえないかもしれませんが、少なくとも「そんなに悪くない車」ではありました。

 そして寸法も、3ナンバー枠になったとはいえ前述のとおり「今にして思えばカワイイもの=特に大きすぎるわけではない」というものでした。

 しかしそれは2021年の今だからそういえることであって、2007年当時であれば、筆者も「コンパクトカーとしてはちょっとデカすぎるかな……」みたいに難色を示したかもしれません。

 全幅1765mmのヤリス クロスが売れに売れている今の視点で見ると、「1725mmごときで何騒いでんだ?」という話ではあるのですが、2007年から2010年代初頭あたりというのは、まだまだ人々が「1695mm」という数字に重きを置いている時代だったのです。

■トヨタ イスト(2代目)主要諸元
・全長×全幅×全高:3930mm×1725mm×1525mm
・ホイールベース:2460mm
・車重:1170kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、1797cc
・最高出力:132ps/6000rpm
・最大トルク:17.5kgm/4400rpm
・燃費:15.4km/L(10・15モード)
・価格:189万円(2007年式 180G)

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