■ポルテ
2004年から2020年まで2代にわたり販売されてきたポルテ。大開口のスライドドアは乗降性がよく、小さな子どものいるファミリー層から高齢者層までをターゲットとした。
しかし、運転席側からリアシートへのアクセスが悪く、購入に二の足を踏むユーザーが多かった。(初代では運転席側リアドアなし、2代目ではヒンジドアが採用される)
小さなミニバンを意味する「プチバン」として売り出した2代目も、ミニバン志向のユーザーは囲い込めなかった。子育てママをメインターゲットにしたが、2015年には2代目シエンタが登場し、ポルテを選ぶユーザーは、輪をかけて少なくなる。
同時期に販売されていたプジョー 1007のように、両側に大開口のスライドドアが装備されていれば、ポルテの特徴を、より強調できたように思う。小さなミニバンとして売り出すには、機能性をもう少し高めてほしかった。
■2代目イスト
シンプルなコンパクトカーが多かった2000年代初頭に、クロスオーバーSUVの雰囲気を醸し出し、5ナンバーサイズにまとめ上げた初代イストは、約5年間で37万台超を販売する大ヒットとなった。
しかしながら、SUVテイストを強くし、ボディ幅を1725mmまで拡大した2代目イストは、販売台数を大きく落とす。
フルモデルチェンジを期に、コンパクトカーユーザーではなく、SUV志向のユーザーへターゲットを変えてしまったことが、販売不振の大きな原因だ。ボディが大きくなったことにより、初代イストからの代替が進まず、イストユーザーへも提案しづらいクルマに代わってしまった。
車格アップは、イストを支持していたユーザーを遠ざける結果となる。コンパクトクロスオーバーSUVというコンセプトは良かっただけに、ボディサイズを5ナンバーサイズに収めていれば、2代続けての大ヒットとなったであろう。
■オーパ
全長4250mmながら、室内長2025mmという広大な空間を生み出した、5ドアハッチバックがオーパである。2000年から2005年まで販売され、1代で生涯を終えたが、クルマとしての完成度は高かった。
2700mmのロングホイールベースが直進安定性を高め、リアシートにはスライド機構を備える。5ナンバーサイズながら、大型セダン並みの乗り心地と居住性を誇った。
走行性能・機能性ともに万能なクルマであったが、目立ったセールスポイントが少なく、販売ターゲットが絞りにくかったのが、売りにくさにもつながってしまったかもしれない。
優等生過ぎて気品が高い、ちょっとおしゃれなフランス車のような佇まいが、トヨタの中では馴染まなかったのだろうか。クルマとしての素性は良いだけに、一つ飛びぬけた特徴があれば、販売動向は大きく変化したクルマに違いない。
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今回取り上げた5台は、どのクルマも開発陣の熱量が高い、良いクルマばかりだ。筆者は自動車ディーラーで働き、「良いクルマ」と「売れるクルマ」は全く別物であるということを、強く感じている。
メーカーは、良いクルマを作ることはできるが、売れるクルマかどうかは、販売してみないとわからない。ヒットするかしないかは時の運の要素が強い。良いクルマを投入し続ければ、メーカー開発陣の努力は必ず結実するはずだ。これからも、各メーカーの考える「良いクルマ」に期待していきたい。
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