売れなくても武器!? スポーツカーは販売店にとって「無用の長物」なのか

売れなくても武器!? スポーツカーは販売店にとって「無用の長物」なのか

 様々な種類があるクルマのなかで、花形とされるのがスポーツカーだ。スーパーカーからコンパクトスポーツまで、その幅は広い。しかし昨今、スポーツカーの数は、めっきりと減ってしまった。

 クルマ好きにとって、憧れの的であるスポーツカーだが、販売を任される自動車ディーラーでは、厄介者と扱われることもしばしばだ。一部には、スポーツカーに対する冷ややかな目も存在する。

 販売店にとってスポーツカーは、もはや無用の長物なのだろうか。元自動車ディーラー営業マンの筆者が、販売現場におけるスポーツカーの存在意義を考えていく。

文/佐々木亘 写真/TOYOTA、SUBARU

【画像ギャラリー】スポーツカーの復権なるか!? 2021年4月に発表された新型86/BRZを見る


■数を減らし、隅に追いやられるスポーツカーたち

国産スポーツモデルで最も売れているスイフトスポーツでさえも、ルーミーの10分の1にも満たない台数だ

 皆さんは、国産スポーツカーといえば何を思い浮かべるだろうか。

 流線形の美しい2ドアクーペ、メーカーチューニングのセダン、ライトウェイトコンパクトや軽スポーツなど、ひと口にスポーツカーといっても、さまざまだ。

 実際に、国産メーカーのホームページに掲載されるクルマの中で、スポーツカーを選抜してみた。2021年3月の新車販売台数とともに、紹介していく。

【国産各社のスポーツモデルと販売台数】

●トヨタ:GRヤリス(1240台)、スープラ(120台)、86(408台)
●レクサス:RC F(12台)
●日産:GT-R(106台)、フェアレディZ(46台)
●ホンダ:NSX(1台)、シビックタイプR(357台)、S660(288台)※オーダー終了
●スバル:BRZ、WRX S4(106台)※生産終了
●マツダ:ロードスター(954台)
●スズキ:スイフトスポーツ(1276台)、アルトワークス(単独でのデータなし)
●ダイハツ:コペン(304台)
●三菱:ラインナップなし

 ちなみに、2021年3月に最も売れた普通車のトヨタ ルーミーは、1万6504台を販売した。先に挙げたスポーツカーたちとはケタ違いの販売台数だ。単純に台数だけを比べてしまうと、販売台数の伸びないスポーツカーに対して、扱いが冷たくなる現状も理解できなくはない。

■試乗に一日3時間!? スポーツカー販売のネックは成約率の低さ?

先代の86発売当時、土日の営業時間は試乗対応に終始したが、成約に至るのはごくわずかだった

 スポーツカーの商談に対して、消極的な営業マンは少なくない。これにはスポーツカーの商談における成約率の低さが大きく関係している。膨大な数の商談をこなし時間をかけても、契約に至るのはごくわずかであり、かけた労力に対しての成果が伴わないことが多い。

 筆者もトヨタ 86の発表時、スポーツカーという存在に振り回された。

 当時勤務していたお店には、3台の試乗車が用意された。発売から2か月弱、土日の営業は86の試乗対応に終始することとなる。

 朝から晩まで途切れることなく試乗希望者が来店し、試乗車はフル回転だ。試乗には必ず営業マンが同乗するのだが、1日に10回程度、1回20分強の試乗対応をするのは、骨の折れる仕事だ。試乗対応だけで、3時間以上を費やしている。

 しっかりとした試乗をおこない、その性能に満足しなければ、スポーツカーの契約は取れないだろう。スポーツカーの試乗は、営業活動の中で大切なプロセスであるが、その数が過剰になってくると、さすがの営業マンもギブアップ寸前となってしまう。

 販売店や営業マンに対する評価基準は、試乗や商談の数ではなく、あくまで販売(契約)台数である。短時間で効率的に営業活動を進めていきたいスタッフには、スポーツカーの商談は好かれない。結果としてスポーツカーが、販売店にとって面倒な存在になっているのは、事実だろう。

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