売れなくても武器!? スポーツカーは販売店にとって「無用の長物」なのか

■試乗に一日3時間!? スポーツカー販売のネックは成約率の低さ?

先代の86発売当時、土日の営業時間は試乗対応に終始したが、成約に至るのはごくわずかだった
先代の86発売当時、土日の営業時間は試乗対応に終始したが、成約に至るのはごくわずかだった

 スポーツカーの商談に対して、消極的な営業マンは少なくない。これにはスポーツカーの商談における成約率の低さが大きく関係している。膨大な数の商談をこなし時間をかけても、契約に至るのはごくわずかであり、かけた労力に対しての成果が伴わないことが多い。

 筆者もトヨタ 86の発表時、スポーツカーという存在に振り回された。

 当時勤務していたお店には、3台の試乗車が用意された。発売から2か月弱、土日の営業は86の試乗対応に終始することとなる。

 朝から晩まで途切れることなく試乗希望者が来店し、試乗車はフル回転だ。試乗には必ず営業マンが同乗するのだが、1日に10回程度、1回20分強の試乗対応をするのは、骨の折れる仕事だ。試乗対応だけで、3時間以上を費やしている。

 しっかりとした試乗をおこない、その性能に満足しなければ、スポーツカーの契約は取れないだろう。スポーツカーの試乗は、営業活動の中で大切なプロセスであるが、その数が過剰になってくると、さすがの営業マンもギブアップ寸前となってしまう。

 販売店や営業マンに対する評価基準は、試乗や商談の数ではなく、あくまで販売(契約)台数である。短時間で効率的に営業活動を進めていきたいスタッフには、スポーツカーの商談は好かれない。結果としてスポーツカーが、販売店にとって面倒な存在になっているのは、事実だろう。

■それでもスポーツカーは「ファン」を増やすための武器

2012年、86発表会の写真。メーカーやディーラーは自社がラインナップするスポーツカーの存在に助けられている面も多々ある
2012年、86発表会の写真。メーカーやディーラーは自社がラインナップするスポーツカーの存在に助けられている面も多々ある

 筆者は個人的にスポーツカーが大好きだ。クルマが好きで販売店の営業職に就き、スポーツカーは憧れの存在でもある。愛車も燃費性能を考えプリウスにしたが、グレードはG’s(現在のGR SPORT)にこだわった。

 営業マンとして活動していて、スポーツカーの存在に助けられたことも数えきれないほどある。

 スポーツカーを見に来るユーザーは、機械的な興味・運転に対する高揚感など、様々な理由があるが、総じてクルマする強い興味がある方が多いだろう。

 このユーザーを満足させ、購入へとつなげることができれば、そのクルマ・メーカー・営業マンのファンとなってくれることが多く、良いお客様が増えることにもつながる。

 筆者はトヨタを離れ、レクサスでセールスコンサルタントに従事しているとき、スポーツカーの力を最も大きく感じていた。

 自分が担当させてもらっているレクサスオーナーには、積極的にスポーツカーの試乗を勧めた。点検の待ち時間を中心にRC FやGS Fなどに乗ってもらい、普段乗っているレクサス車とは違う、エキサイティングな体験をしてもらうのだ。この活動は、オーナーとの親密度を高めるきっかけになっていた。

 担当しているオーナーをファン化させることが、営業活動を楽しく円滑に、そして効果的におこなうことができる方法だと筆者は考える。非日常を体験できるスポーツカーの試乗は、楽しい時間を共有し、レクサスや私のファンになってくれるオーナーを、増やしていった。

 スポーツカーの存在を、販売店にとって無用の長物と言ってしまうのはもったいない。使い方次第で、良質な営業活動を行ううえでの、大きな武器となってくれる。

 環境面や使い勝手、販売台数においてスポーツカーは、SUVやミニバンなどには勝つことができない。しかし、スポーツカーの力は単純な数字だけでは語り切れないところにある。

 現在の販売現場では隅のほうに追いやられる存在になっているスポーツカーだが、スポーツカーによって営業機会が生み出されることも事実だ。これからも各社の技術を結集させたスポーツカーには、販売活動を陰ながら支えていってほしい。

【画像ギャラリー】スポーツカーの復権なるか!? 2021年4月に発表された新型86/BRZを見る

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