■スーパーカーの『爆音』の不思議
しかしここで疑問が沸く。
今売られているスーパーカーも、最低限フェーズ1の規制はクリアしているはずだが、どう考えても普通のクルマより音が大きい。いったいどうやってクリアしているのか。これも宮廷政治なのだろうか?
そこで、加速騒音に関する測定規定を読んでみた。以下は日本の規定だが、国連基準に沿っているので、欧州も同様のはずだ。
<自動変速機を備えた自動車の場合、市街地走行時に通常使用されるレンジ・モード(ドライブレンジ)で、50km/hから加速ペダルを一杯に踏み込む>
フェラーリF8トリブートでこれをやれば、ギアは1速までキックダウンし、凄まじい爆音が轟く……はずだ。
しかしこの規定では、いわゆるDレンジを使うとされているのみで、キックダウンや変速のタイミングを変更するドライビングモードに関する規定は見当たらない。
■規制の抜け穴を使ってこれからも官能サウンドを響かせるか
たとえばフェラーリのドライビングモード「マネッティーノ」の場合、モデルによって異なるが、穏やかな順に「スノー」「ウェット」「コンフォート」「スポーツ」「ESC OFF」等、5段階あることが多い。
このうち「スノー」や「ウェット」は、50km/hからアクセルを全開にしても過度にキックダウンしないので、 騒音規制をクリアできているのでは?
プラグインハイブリッドの場合、ここにEVモードが加わるはずだ。バッテリー残量がある場合、EVモードに入れておけばエンジンは始動せず、アクセル全開でもモーターのみの走行にすることが可能。それで厳しい加速騒音規制から逃れられる……ということはないだろうか?
また、規制強化の対象ではないが、騒音規制には「近接排気騒音」もあり、こっちは停止状態(ニュートラル)で空ぶかしすることで測定する。
その際エンジンは、最高出力発生回転の75%で測定しなければならない。9000pmで570馬力を発生するフェラーリ458イタリアなら、6750rpmまでブチ回して測定したはずだ。
ただ、こちらも、「過回転防止装置を備えた自動車等の取り扱い」という規定があり、「空ぶかしでの回転数を抑制する装置を備えたクルマは、その回転の95%の回転数を使用する」となっている。
近年のスーパーカー(前述の458イタリアを含む)は、ニュートラルでアクセルを踏んでも、4000rpmあたりまでしか回転が上がらない。私はエンジン保護のためかと思い込んでいたが、騒音規制クリアという目的もあったのかもしれないと、今さらながらに気付いた。
このあたりについては、検査の実態を知ることが難しく、推測に過ぎないが、これまでもスーパーカーは、規制の抜け穴をうまく使って、治外法権的なサウンドを実現してきた。今後もその姿勢は変わらないのでないか。
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