ダイハツ ミラ ジーノが“リストラ”の憂き目に遭った背景【偉大な生産終了車】

ダイハツ ミラ ジーノが“リストラ”の憂き目に遭った背景【偉大な生産終了車】

 毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。

 時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。

 しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。

 訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はダイハツ ミラ ジーノ(1999-2008)をご紹介します。

文/伊達軍曹 写真/DAIHATSU

【画像ギャラリー】2代に渡り活躍!ダイハツ ミラジーノの10年をギャラリーで辿る


■レトロカーブームに登場したミラ ジーノ

 1993年のスバル サンバー ディアス クラシック、あるいは1995年のスバル ヴィヴィオ ビストロから始まったレトロ調軽自動車ブームを受けて、1999年に登場。

 多くのレトロ調軽自動車が「一過性の何か」で終わったなか、このモデルはレトロうんぬんだけではない本質の部分でも高く評価され、2004年には2代目へとフルモデルチェンジ。

 しかし、折りからの軽トールワゴン/スーパートールワゴン人気にあらがうことはできず、2009年に生産終了となった実力派の軽自動車。

 それが、ダイハツ ミラ ジーノです。

 1990年代半ばのレトロ調軽自動車ブームを受けてダイハツは1997年、当時のミラに丸形のヘッドランプやブラウンの内装などを与えた「ミラ クラシック」を発売します。

 しかし、いかにも取ってつけたような安直なデザインは不評で、ダイハツは「そうではない、ちゃんとしたレトロ系デザインの軽自動車」をリリースする必要にかられました。

 そして1999年に登場したのが、5代目ミラの追加グレードである「ミラ ジーノ」です。

ダイハツ ミラ ジーノ(初代)。専用設計された豊かな曲面のボンネットフード&フロントフェンダーが特徴的
ダイハツ ミラ ジーノ(初代)。専用設計された豊かな曲面のボンネットフード&フロントフェンダーが特徴的

 ダイハツのかつての名車「コンパーノ」をモチーフにしたという丸形ヘッドライトと、メッキ処理されたバンパーなどの処理、あるいは全体のフォルムは「英国のミニの模倣だ」とも言われました。

こちらがダイハツ コンパーノ(1963-1969)
こちらがダイハツ コンパーノ(1963-1969)

 その指摘の真偽はさておき、初代ミラ ジーノは決して「取ってつけたような感じ」ではない、新型車として真摯なデザインが採用されていました。

 当初のグレードは、直3自然吸気の「ジーノ」と、直3インタークーラー付きターボを搭載する「ジーノ ターボ」の2種類。トランスミッションは5MTと4速AT、3速ATが用意されました。

 2000年10月にはマイナーチェンジが行われ、新グレードとして3ドアターボの「ジーノS」のほか、英国のホイールブランドである「ミニライト」とタイアップした「ミニライトスペシャル」を設定。こちらも大いに人気となりました。

 初代ミラ ジーノはその後も細かな仕様変更を重ね、ついでに2002年には1Lエンジンを搭載した小型乗用車「ミラ ジーノ1000」も追加しながら、2004年末近くまで生産と販売を続行。

 そして2004年11月、ミラ ジーノは2代目へとフルモデルチェンジされました。

2代目となったミラ ジーノ。「ミラ」からは独立したモデルとなった
2代目となったミラ ジーノ。「ミラ」からは独立したモデルとなった

 2代目はミラとボディを共用しないオリジナルデザインで、車台は6代目のミラと共通ですが、Aピラーが寝ているミラと違って2代目ジーノのAピラーはかなり立っており、逆にCピラーにはそこそこの傾斜が付いています。

 このクラシカルなフォルムに、BMW製のほうのミニをなんとなく思わせる丸形のヘッドランプを合わせることで、2代目ミラ ジーノは――賛否は分かれるかもしれませんが――これまた「取ってつけたような感じ」ではないデザインに仕上がったのです。

 初代ではラインナップされたターボエンジンは廃止され、パワートレインは3気筒の自然吸気エンジン+4速ATに一本化。

 しかし、より上質になったインテリアの質感や室内の広さ、「乗ってみると非常に運転しやすい」ということなどから、2代目のミラ ジーノもまずまずの人気モデルとなりました。

 そんな2代目ミラ ジーノも2008年12月には生産終了となり、翌2009年月には販売のほうも終了。

「3代目のミラ ジーノ」は作られず、2009年8月に発売された「ミラ ココア」が、事実上の後継モデルとなってしまいました。

次ページは : ■2代目も好評。にもかかわらずミラ ジーノが生産終了となった背景は?

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