愛車にあまり乗っていない人は注意!! 走ってないほどタイヤは劣化するって本当?

■タイヤは生もの

 タイヤメーカーの人は、よく「タイヤは生もの」という言い方をします。製造した時から劣化が始まり性能を落としていきます。といっても刺身のようにイッキに鮮度が落ちてしまうわけではなく、徐々に劣化が始まります。

 ですから、それほどひどい状態になっているとは思っていなかったのですが、考えが甘かったようです。

 タイヤはとても安定した製品だと考えがちですが、じつは酸化劣化は製品が完成したところから始まっていて、性能は少しずつ低くなっているのです。すぐに性能が落ちないように、劣化防止剤とか老化防止剤といわれる添加剤が配合されています。これによって性能の低下を抑えているわけです。

 具体的には、紫外線、熱、オゾン、水、酸化化合物などによって引き起こされます。はじめはタイヤの表面部分から劣化が始まり、合わせてゴムの柔軟性を保つために配合されていたオイル分が染み出したり、蒸発することでタイヤの柔軟性は失われていきます。

 なので、多少走行頻度が少なくても、少し走ってタイヤの表面をひと皮むければ比較的状態のいいゴムが顔を出すことが多いのです。

 例に挙げたバースト事案は、クルマをほとんど走らせらせておらず、ショールームの中で長期間オゾンや紫外線にさらされていたことにも大きな要因があるのです。

バーストしたタイヤ(norikko@AdobeStock)
バーストしたタイヤ(norikko@AdobeStock)

■古くなったタイヤは硬くなる

 それからもう一点。タイヤは製造工程の最後に「加硫」と呼ばれる工程を行います。ここで百数十度の温度で加熱しながらゴムに硫黄を加えるのですが、これによってゴムの分子同士が互いに結び付き(架橋)、強靭さ=弾性限界を飛躍的に高くすることができるのです。

 ところが、この架橋はタイヤ製造時で終わるわけではなく、酸化劣化時にも起こるのです。再架橋とも言われているのですが、さらに架橋が進むと分子同士の結び付きが強くなりすぎてゴムは柔軟性をなくしてしまうのです。

 タイヤの劣化と再架橋(これも劣化ですが)などの条件が重なってしまうと、ちょっとした突起を踏んだだけでバーストしてしまうなんてことも起こりうるわけです。

製造した時から酸化による劣化は始まる(279photo@AdobeStock)
製造した時から酸化による劣化は始まる(279photo@AdobeStock)

 バーストしたタイヤのサイドウォールはみごとに裂け……というか割れて一瞬で空気圧ゼロに。スピードが出ていなかったので大事には至りませんでしたが、危ない場面でもありました。

 といった具合に、クルマに乗る頻度が少なく、タイヤが全然摩耗しておらず、溝が新品同様に残っていたとしても、タイヤの性能が大きく落ちていることがあるんです。

 タイヤのトレッド面を触ってみると、カサカサでゴムならではのしっとりした感触や柔軟性がなくなっているのでわかりやすいと思います。

 またトレッドブロックやブロックの付け根、サイドウォール部に細かいひび割れがたくさん入っています。

 タイヤに配合されているオイルに触れましたが 、オイルはタイヤ表面を洗剤でごしごし洗ってしまうと洗い流されてしまうので、タイヤが汚れてしまっても軽く水洗いをする程度にとどめ、タイヤの持っている油分を残しておいたほうが、タイヤのゴムの劣化を防ぐことができるようです。

タイヤが汚れても軽く水洗いをする程度にとどめ、タイヤの油分を残しておいたほうが、劣化を防ぐことができる(Parilov@AdobeStock_)
タイヤが汚れても軽く水洗いをする程度にとどめ、タイヤの油分を残しておいたほうが、劣化を防ぐことができる(Parilov@AdobeStock_)

■近年、タイヤのパンクトラブルが増えているのはなぜ?

 先にバーストの例を上げましたが、「JAFロードサービス救援依頼内容」というレポートによると、ここ数年パンクのトラブルも多くなっているのだそうです。なぜ近年パンクトラブルが増えているのでしょう? 

 理由のトップ5は(1)走行中、釘など異物が刺さる。(2)タイヤの空気圧不足。(3)タイヤのサイドウォールを縁石にヒットさせ傷つけた。(4)タイヤの劣化。(5)ホイールリムの変形。となっています。

 このなかで気になるのは、(2)のタイヤの空気不足と(5)のホイールの変形です。タイヤの空気圧はここ数年減りが少なくなりました。

 “タイヤの空気はほって置くと徐々に減ってしまうので、1カ月に1度くらいは空気圧をチェックしましょう。”なんて言ったり書いたりしていましたが、純正タイヤ+純正ホイールだと今はほとんど減らないんじゃないでしょうか。

 そんなわけで何度か試しても空気圧の調整が必要ないので、そのうちに空気圧のチェックをしなくなってしまった、なんて人もいるかもしれません。

 特に50偏平以下の低偏平タイヤは空気圧が少なくなっても変化がわかりにくくなっています。空気圧が少ない状態で高速道路に乗ると、案外簡単にスタンディングウェーブを起こしてしまうことがあります。

扁平率が低くサイドウォールの薄いタイヤは空気圧が不足していてもわかりずらい
扁平率が低くサイドウォールの薄いタイヤは空気圧が不足していてもわかりずらい

 スタンディングウェーブ現象は、回転しているタイヤの接地面のすぐ後ろ側が波打った状態になる現象のことを言います。そのまま走り続けているとタイヤが発熱→バーストしてしまいます。タイヤのゴムが劣化してゴムに柔軟性がなくなっていると、バーストは簡単に起こってしまいます。

 (5)のホイールの変形は、先に例に挙げたバーストの話です。ここ数年クルマの低偏平化が進んでいます。路面の段差やキャッツアイなどを30km/hくらいで踏み越えても、突起とホイールにタイヤのサイドウォールが挟まれて破断してしまうのです。

 60~70扁平タイヤが主流だった頃は突起を乗り越えてもタイヤの厚みで突起ぶんを吸収していたのですが、タイヤが薄くなるとそれができずホイールやタイヤのサイドウォールにダメージを与えてしまうのです。

 バーストしなくてもサイドウォールに小さなコブのような突起ができることもあります。

 これはタイヤ内部のカーカスと呼ばれる骨格部分のコードが切れてしまった状態で、バーストの危険がありますので、すぐにタイヤ交換する必要があります。

 タイヤのゴムが劣化して柔軟性がなくなっていくとパンクやバーストの危険はぐっと大きくなります。劣化が認められたらなるべく早いタイミングでタイヤ交換することをお薦めします。

【画像ギャラリー】タイヤ劣化に関するアレコレを画像でもチェック!

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