「自動運転で『ナイト2000』は作れるか」ホンダ 杉本洋一氏インタビュー(後編)【自律自動運転の未来 第13回】


 自動運転技術にまつわる最新情報をお届けする本連載、今回は、前回からお届けしているホンダの杉本洋一氏へのインタビュー「後編」をお届けします。杉本さんは株式会社本田技術研究所の先進技術研究所に所属していて、世界初の自動化レベル3技術を含む「Honda SENSING Elite」の開発を担当。

「前編」では、「なぜホンダは世界初の「レベル3」技術の発売にこだわったのか」という点がポイントでした。要求される安全性や使い方を考えると、「レベル2」技術の進化でもよかったのでは? まったくフェイズの違う「レベル3」にこだわる必要はなかったのでは?? その質問に杉本さんは、「レベル3として求められる精度はさらに高度で、要求精度も大きく高まる。だからこそやる価値がある」という返答でした。「(技術進化を高めるため)あえて狙った」というわけです。今回はその続きとなります。

 高齢化社会に自動運転技術はどう対応するのか? 他車との流れのなかで自動運転車はどう振る舞うのか? そして「ナイト2000」のような自律自動運転車は将来登場…する……のか??

文/西村直人 写真/奥隅圭之、西村直人

「自動運転レベル3でなければいけなかった理由」ホンダ 杉本洋一氏インタビュー(前編)【自律自動運転の未来 第12回】
シリーズ【自律自動運転の未来】で自動運転技術の「いま」を知る

■クルマが「人」や「社会」と協調する必要がある

西村直人(以下、西村) レベル2とレベル3では、同じハンズオフ走行であっても提供される技術の精度や信頼性は格段に違うわけですね。そうなると、結果として可能となった、いわば副次的な効果であるハンズオフ走行はレベル2やレベル3の主たる目的ではないということでしょうか。

ホンダ 杉本洋一氏(以下、杉本) はい、そうです。この先の知能化には協調的で自律型のインテリジェントが求められます。そして機械同士の信頼性向上とともに、人や社会などとも機械は協調しなければなりません。これを我々は「協調型AI」と呼んでいます。

ホンダで自動運転技術開発を率いる杉本氏。広い視点で「自動運転に必要な技術と社会環境」を見つめている

西村 そうなると各々をつなぐのは、やはり大規模なITS技術ですか。

杉本 確かにITSも有用な手段です。私も長年、デトロイトでコネクティッド技術を中心としたITSの開発を行ってきましたが、残念ながら本格的な普及は迎えていません。よってここ暫くは大規模な通信型だけに頼るのではなく、ある程度は自律型でがんばらないといけない。きっかけとなるのが2017年のCESで我々が発表した「SAFE SWARM/セーフスォーム」という考え方です。

西村 小さな個体自らが考えて群れを形成する魚の「群れ/SWARM」のように、交通全体の流れを個車がつかみとり、安全かつスムースにしていくという技術コンセプトですね。

道路上でのクルマの動きを踏まえたうえで、それぞれのクルマがどのような動きをすればいいか、を考える「SAFE SWARM/セーフスォーム」
2021年3月に発表されたホンダレジェンド。世界初の量産車自動運転技術「レベル3」を搭載している

杉本 はい。2018年初頭より、車車間/路車間(V2X)通信機を搭載した車両を用いて、米国オハイオ州コロンバス地域とHonda R&D Americas, Incをつなぐ州道33号線にて実証実験を行ないました。

 そこでの結果を踏まえると、自律型であっても狭義の通信機器を備えることで、我々が考える自動化に近づけるのかと思います。また、ボディアクション、つまり他車の挙動をシステムが認識して自車の制御を考え出すという研究も成果を上げています。

 ただし、遠距離の情報や、壁の裏側の情報など、自律型だけでは認識できない部分もあるので、そこは大規模なITSとの併用も視野に入れています。やはりネゴシエーション通信があると精度を高めやすいですから。

西村 魚の群れを形成する考え方を自動化や車両制御に適合させる手法は、2009年に日産が魚群のルールで群走行するロボットカー「エポロ」で具現化していました。その前年、日産は蜂の行動解析にもとづく衝突回避技術を搭載したロボットカー「BR23C」を発表しています。自然界に衝突回避を目的とした自動化や支援技術の解を求めるのは理に適っていますね。

 ボディアクションも重要なんですね。私はバスドライバーの経験があるのですが、他車のタイヤの動き、とくに自車周囲で確認できる車両のタイヤの向きが変わる瞬間を見逃さないよう運転していました。

 たとえば、大型観光バスは0.8G以上の高い減速度を生み出すブレーキ性能を有していますが、乗客の車内事故を考えるとむやみに急ブレーキは掛けられません。危険を遠ざける運転操作は絶対条件です。

 こうして、自分にとって不穏な動きをする車両情報を目的関数化すれば、将来的にはAIでの機械学習に応用できますね。

■高齢化社会に自動運転技術はどう役に立つ?

西村 超高齢社会となった日本ですが、高齢化と自動運転技術の関係ははどう考えていくべきでしょうか? また、福祉車両に対する自動化はどうでしょうか? レベル2との連携度合いを、たとえば30㎞/h以下の低速域限って早期に作動させるようしきい値を下げるなどの案はいかがでしょう。

杉本 そうした課題には、自動化レベルの向上が現実的な対処方法として考えられます。具体的にレベル4が実現すれば、そうした課題への対応が始まると予想できますが、ただ早期の普及はむずかしいです。

 福祉車両に関しては、我々もレベル2の技術を用いた解析を試みています。ある大学機関によると、車載の外界認識センサーの画角を拡げることで、視覚に障害をお持ちの方の事故低減効果が高まるという研究結果もあるようです。

 レベル2の技術をベースに特化したシステムの優位性が説明できれば、運転免許証についても警察庁と相談できるようになると思います。しかし、レベル2は精度を高めたとしても、やはり運転支援技術であり、責任はドライバーにあります。さらに、身体の障害もレベルがさまざまですので、高齢者や障害者の方向けの技術開発を早期に実現するのはむずかしいかもしれません。

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