■大混戦の中生き残るトランスミッションは……
さて、となると準決勝は(3)と(4)。すなわち、DCTとCVTということになるわけだが、ここでちょっと「待った!」がはいる。
前述のとおり、DCTは欧州人のAT嫌いを克服した画期的新ATで、人気なのは欧州を中心とした市場。いっぽう、CVTはモード燃費みたいなゆるい走りで最高の燃費効率を叩き出すエコ型ATで、平均速度の低い地域(日本を中心としたアジア圏)で、評判がいい。
DCTとCVTをガチで戦わせようとすると、お互いの得意技がぜんぜん噛み合わず試合にならないという感じなのだ。
じつは、ここで「待った!」をかけたのは、一回戦第二試合で敗れたはずのトルコンステップATだ。
DCTやCVTの著しい進化で、トルコンステップATは21世紀には「終わったAT」というイメージすらあったのだが、そこからの技術革新が凄まじかった。
まずは多段化。20世紀には多くても5速だったものが、あれよあれよというまに10速までギアが増加。ここまでくると、カバレッジレシオの大きさやステップ比のスムーズさでCVTを圧倒する性能を発揮するようになる。
さらに制御の精密化がすごい。昔のトルコンステップATはとにかくスムーズに変速させるのが最優先で、例えばマニュアルでアップやダウンの操作をしても、えらくもっさりしていてタイムラグが大きかった。
この辺がスポーツドライビング好きに「DCTとは比較にならん」と嫌われた要因なのだが、最近のトルコンステップATは以前とは別物。
機種によりけりではあるが、パドル操作でバウンと一発ブリッピングして鮮やかにダウンシフトを決めるような機種もあり、スポーツドライビングという視点で見ても、もはやDCTとトルコンステップATは互角といってもいい状態だ。
■欠点を克服して劇的進化を遂げたトルコンAT
かくして、欠点を克服したトルコンステップATは、スムーズな発進加速や自然なシフト感覚など、その本来の持ち味がさらに輝きを増しているわけですよ。
その一方で、当初は切れ味のいいシフト感覚を評価されたDCTは、渋滞時のギクシャクやクラッチの耐久性に問題を抱えていることが判明したし、CVTは相変わらず大きなトルクの伝達は苦手で、大パワーのスポーツカーや高級車には使われない。
DCTとCVTで決勝戦と思ったら、試合の前にお互いの欠点が露呈。その隙をついて、敗者復活したトルコンステップATが先にゴールに飛び込んでしまったという状況なのだ。
そんなわけだから、内燃機関のフィナーレを飾る最後の花形コンビには、進境著しい最新のトルコンステップATこそ相応しいというのがぼくの結論。
ぼく自身、いま自分のマイカーはZFの8ATなのだが、こういうよく出来たATに乗っちゃうと、CVTはもちろん中途半端なDCTも要らねぇと思えちゃうんでございますよ。
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