ここ1〜2年で急激に内燃機関への逆風が強まり、もはや「2030年代半ばに新車販売禁止」という方針を日本政府や世界の主要国が打ち出しているのはご承知のとおり。
冷静に考えると拙速な内燃機関廃止論は無理スジだと思うが、内燃機関が生き残るためには1にも2にも熱効率(=燃費)を向上させるしかない。
クルマ好きをシビレさせる官能的なエンジンが減っているのはその辺が理由。ライバルは電気モーターなんだから、高回転のパンチが……とか、トルク特性が……とか、排気サウンドが……とか、もはや情緒的な性能にこだわっている余裕などないのだ。
そこで、そんな時代の今だからこそ気持ちのいいエンジン車に乗っておきたい! ということで、その魅力をお伝えしていこう。
文/鈴木直也
写真/ベストカー編集部
【画像ギャラリー】内燃機関のフィールを楽しめるのもあとわずか!? 今買っておきたい『気持ちのいいエンジン車』
■超高回転型ホンダエンジン! 暴騰していないFD2型シビックタイプR
最近、1980〜1990年代に造られたスポーツカーの中古価格が高騰するなど絶版車の人気が高まっているが、そのひとつの理由は現代のエンジンでは味わえない官能性能の魅力。こういうクルマに乗るなら今が最後のチャンスでは? 多くの人がそう考えているわけだ。
そこで、本稿では「最高に気持ちのいいエンジン」という括りで、ぼくのお薦め車を挙げてみた。
まず、絶滅危惧種という意味では、すでに希少種となって久しいのが高回転高出力型のエンジンだ。回転を上げればフリクションも増えるから、熱効率狙いのエンジンはできるだけ回転を上げないのがセオリー。残念ながら、高回転型というのは今では企画段階でボツになる案件といっても過言ではない。
しかし、ホンダが2輪GPを席巻していた1960年代は今とは価値観が正反対。馬力=最高回転数だったから、どこまで回転が上げられるかが勝負。その決定版が言うまでもなくホンダのVTECだ。
VTEC登場以前の常識では、7000rpm以上回るような高回転型エンジンはレース専用。低速トルクが貧弱で、とてもじゃないが街乗りなんかできなかった。
しかし、1989年デビューの2代目インテグラに搭載されたB16A型エンジンは、ロッカーアームに切り換えピンを仕込むことで、低速/高速カムをシームレスに可変。NAでリッター当たり100psとなる160psを絞り出しながら、余裕で街乗りもできるフレキシブルなトルク特性を実現した画期的なエンジンだったのだ。
このシリーズが大きく開花するのが、1995年デビューの初代DC2インテR、続くEK9シビックR、そしてS2000などを経て、最後のNAエンジンタイプRとなったFD2シビックRまでだ。
トルクではターボエンジンには勝てないが、VTEC特有の高回転域で弾けるシャープな吹き上がりがこのシリーズの醍醐味。
4000rpmあたりでカムが切り替わると、突然スイッチが入ったかのように「クゥォーンン!」と弾ける高回転域での伸び。このVTEC特有のパワーフィールがエキサイティングのひとことで、多くのホンダファンを熱狂させることになった。
さすがに、21世紀が近くなるとエンジン開発の方向性がパワーから燃費にシフトし、「高回転型」というコンセプトそのものが廃れてくるのだが、それでも最後まで粘ったのはさすがホンダ。S2000とFD2型シビックタイプRによって、2010年までNA高回転型スポーツエンジンを造り続けたのだから根性がある。
EK9型シビックタイプRやインテRなどは暴騰してしまったが、両車ともまだ中古車市場にそこそこタマ数があって、300万円くらい出せば、まずまず程度のいい個体が入手可能だからこの2台をお薦めしたい。
コメント
コメントの使い方