2012年6月にRX-8が生産終了してからもう6年、日本の、いや世界の新車市場からロータリーエンジンを搭載したスポーツカーは姿を消している。
確かにグローバル化、部品共用化が進んだ現代では、単一車種単一エンジンなんて効率の悪いモデルは存在しづらいし、それが採算の取りづらい「手頃な価格で買えるスポーツカー」となるとさらにハードルは上がるだろう。
単純に考えると、かつてのRX-7やRX-8のようなロータリースポーツカーが復活する可能性は、低い。
しかし、である。そもそもマツダという会社は、そういう「低い可能性」に賭けて、突破し、その姿が支持されて、大きくなってきたメーカーではなかったか。
本稿ではそんなエールや期待を込めて、自動車ジャーナリストの片岡英明氏に「RX-7のようなクルマが復活する可能性ってあるんですかね」と聞き、「もちろんあります」とお答えいただき、その思いを原稿にしていただいた。
文:片岡英明
■多くの人が「内燃機関の未来」を諦めたその時に
2002年4月、マツダは「Zoom-Zoom」のブランドメッセージを全世界に発信し、クルマの新しい楽しみ方を提案し、ここからクルマづくりを大きく変えた。「ズームズーム」とは自動車が走っているときに発する音のことで、子供が動くものに対する感動を表した「ブーブー」の意味だ。
この時期、「ICE(内燃機関)は21世紀の半ばに絶滅するだろう」と思われていた。エンジンを積むクルマに代わって主役に座に就くのは、EV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)など。あの頃、(自動車メーカーや自動車専門メディアの中の人間でさえ)多くの人はそう思っていたし、信じていたのである。
が、マツダはそれに異を唱え、内燃機関の可能性と未来を熱く語った。
内燃機関に新しい発想と新しい技術を盛り込めば、21世紀に必要とされるクルマの環境性能と安全性能を向上させながら、持続可能(サスティナブル)な未来を実現できるだろうと考えたのである。そのために、すべての人に「走る歓び」と「優れた環境・安全性能」を届けるために発表したのが「SKYACTIV」テクノロジーだ。これはブレイクスルーから生まれた、奇想天外な次世代のエコテクノロジーだった。
マツダが発表した「スカイアクティブ」は、クルマの基本性能を飛躍的に高めるために開発された次世代技術の総称だ。運転する楽しさやワクワク感を失うことなく、地球環境に配慮したクルマづくりをすることを目指している。性能に関わるすべてのものを高いレベルに引き上げるために、クルマの基本となる技術を1から見直した。
この2002年8月、マツダは排ガス規制への対応が難しい、と判断し、13B型ロータリーターボを積むRX-7(FD3S)の生産を打ち切っている。代わって自然吸気のロータリーエンジンを積むRX-8が登場した。が、これも頼みの綱となる北米市場で不発に終わる。販売が低迷したため2012年をもって生産を終了し、ロータリーエンジンは姿を消した。
■マツダの反転攻勢を決定づけたSKYACTIV路線
ロータリーエンジンと入れ替わるように、マツダはスカイアクティブ技術を採用したCX-5やアテンザを続けざまに投入する。
新世代のガソリンエンジンだけでなく直噴ディーゼルターボもヒットさせ、快進撃を続けた。
その後、アクセラを新世代にし、クロスオーバーSUVの分野には弟分のCX-3を送り出した。
CX-5は世界中で愛され、3列シートのCX-8やCX-9も人気モデルとなっている。また、末っ子のCX-3も毎年のように気合いの入ったマイナーチェンジを行い、活気を取り戻した。
マツダは東洋工業を名乗っていた時代から、走る歓びと感動を追い求め、新しい技術も積極的に導入している。だからこそロータリーエンジンの実用化に成功したし、時代に先駆けてミラーサイクルエンジンも送り出した。パワートレインの理想の燃焼を追求していくのがマツダのエンジニアの取り組み姿勢だ。
これは現代にまで連なるマツダの社風だし、この先も変わることはないだろう。そしてその対象となるのはもちろん、レシプロエンジンだけとは限らない。マツダのスポーツDNAの源は、誰がなんと言おうとロータリーエンジンだ。
その復活を「夢物語」にしてほしくない。
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