bBやS-MX…「若者向けのクルマ」とはなんだったのか!?

bBやS-MX…「若者向けのクルマ」とはなんだったのか!?

 日本自動車界の最盛期といっても過言ではない1990年代後半から2000年代初頭にかけて。

 この時期、いま考えるとちょっと不思議なクルマが数多く登場した。「若者向け」と銘打たれたハイルーフ型ワゴン車だ。代表格は、ホンダS-MXやトヨタbB。なんでこの時期、こうした不思議なコンセプトのクルマが登場したのか。そもそもどんなクルマだったのか。開発背景や当時の雰囲気を、あの頃を知る自動車ジャーナリストに伺った。

文/片岡英明 写真/HONDA、TOYOTA

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■若者受けを狙って開発されたハイルーフ型ワゴン車

1996年11月、クリエイティブムーバー第4弾として登場したホンダS-MX。デビュー当時は月間1万台近く売れたが徐々に失速
1996年11月、クリエイティブムーバー第4弾として登場したホンダS-MX。デビュー当時は月間1万台近く売れたが徐々に失速

 1990年代前半までの時期、日本はバブルの後押しを受け、元気いっぱいだった。クルマが売れているから余裕が生まれ、イケイケの風潮が強まっている。

 その頃、ユーザーの嗜好も変わってきた。アウトドアブームやウインタースポーツのブームが到来したから、クルマの好みもスポーツクーペからRVにシフトしている。パジェロなどの4WDやみんなが快適に移動できるエスティマなどのミニバンが市民権を得て、セダンに代わってファミリーカーになった。

 背の高いクルマに違和感がなくなると、クラスとジャンルを飛び越えて空いているところに個性の強い「若者向けの変わり種モデル」を送り込むメーカーも増えていった。今でいう「クロスオーバーカー」だ。

 このジャンルとマーケットは日本が開拓し、定着させた。イケイケの時代に若者を中心としたエントリーユーザーに向けて企画され、開発された「変わり種」は90年代半ばから登場する(なおメーカーの狙いどおり実際に若者がそういうクルマを買ったかというと、その限りではない)。

 RVがブームになったことから分かるように、現実的なライフスタイルが持てはやされている時代だ。背をちょっと高くし、見下ろし感覚の高めのアイポジションでルーズに運転するクルマに仕立てている。

 当時の自動車メーカーの開発者は、「若者向け」をそのように考えた。

 当然、マルチに使える十分なキャビンスペースと開放感を実現するために台形フォルムとし、デザインなども遊びゴコロが強い。若い人たちはカップルでドライブするだけでなく仲間とワイワイガヤガヤ楽しむのが好きだ。だから後席もそれなりに広く設計した。

 背の高いミニバンやSUVはコーナリングが得意じゃない。だが、スポーツクーペよりRVを好む若者たちは、パフォーマンスよりもデザインや感性を重視する人が多く、走りの実力は二の次と考えていた。スポーティさにこだわらない人たちが増えたことが、若者向けの変わり種モデルを定着させることにつながった。

 その代表が、ホンダが1996年11月に送り出したS-MXだった。ステップワゴンに続くクリエイティブムーバーの第4弾で、販売価格もリーズナブルだった。

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