■初代のスタイリングは「トゥデイ」リスペクト
トゥインゴは1992年にルノーがそれまでの「4(キャトル)」に代わる”足”として、投入したスモールカー。初代は多彩なシートアレンジやコンパクトなエンジン、ユニークなスタイリングで、欧州でも人気車種になった。
余談だがそのユニークなスタイリングは、1983年から1998年まで生産されていた日本の軽自動車「ホンダトゥデイ」を参考にしたものと言われていた。しかもルノーはそれを否定しなかったのだ。この初代トゥインゴは、マイナーチェンジをくり返しながら、2007年まで生産されるロングライフモデルにもなった。
2代目は2007年に発表され、クラス上のルーテシアのシャーシに手を加えて、開発された。スタイリングも大きく変わったが、3ドアだけのスモールカー(Aセグメント)だった。
2代目の特徴は、限定車を次々に出して、ユーザーの関心を引きつけたこと。「ゴルディーニ」などかつてのルノースポーツのブランドを実用化したモデルも登場している。
日本でも右ハンドルやマニュアルミッション車などを設定するなど販売を展開したが、初代ほどの人気は得られなかった。
そこで登場したのが3代目のトゥインゴだった。このクルマは先ほど説明したように、日本ではルノー車のベストセラーカー、カングーに並ぶヒット商品となっている。そのヒット商品も、ベースになるシャーシの共同開発相手がいなくなってしまうというのだ。
ルノー・ジャポン広報は「現時点では生産中止になるとかの話しはいっさい出ていません。あと2~3年はこのままだと思います」とコメントしている。
■次期型トゥインゴの開発情報は出ていない
しかし、今年1月、ルノーの新しいCEOに就任したルカ・デメオ氏のカンファレンスでの資料を見てみるとショッキングな事実が判明した。
そのカンファレンスで、ルノーの将来を見据えた車種開発の記述があったのだが、そのなかになんと、トゥインゴの名前がなかったのだ。やはり、トゥインゴは消滅の運命にあるのか。人気車種なのに、なぜ開発の話しが出てこないのか。現実は厳しいのだ。
欧州に取材をしてみると、意外な事実がわかった。
トゥインゴの属しているAセグメントは、ボディもコンパクトで車両価格も安い。と思われているのだが、実は車両価格はそう安くはないという。ボディはコンパクトでも開発費用はかかり、内装などにもお金をかけないと、ユーザーは見向きもしてくれない。
その結果、1クラス上のBセグメントのベースモデルと、大差のない車両価格になってしまっているのだ。購入する側からすれば、同じような価格なら、ボディが大きく、室内や荷室も広い1クラス上のクルマを購入するというのは常識。
そういうパターンが多くなっているようなのだ。これはルノーだけでなく、プジョーやシトロエンも同じ。Aセグメント全体が意外に売れていないのだ。
おしゃれで、カワイクて、コンパクトなトゥインゴだが、欧州の販売戦線では苦戦を強いられている。しかし、日本市場での販売は好調なので、次々と魅力的なバリエーションが発売される。
日本では車両価格も200万円前半のモデルも多く、買いやすい輸入車といえる。しかし、本国でのポジションは意外に厳しいという。
魅力的なトゥインゴが消滅の危機にある。スモールカー購入を考えている人は一度、試乗してみてほしい。その楽しさのトリコになってしまうに違いない。
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