スカイラインの神通力はもう消えた!? 日産がスカイラインクロスオーバーから学んだこと

■「スカイラインのSUV化」は愚か?

スカイラインクロスオーバーのシート。撮影角度の関係もあるが、確かに後席スペースは広々しているとはいえない
スカイラインクロスオーバーのシート。撮影角度の関係もあるが、確かに後席スペースは広々しているとはいえない

 まず、現行のV37スカイラインをSUVにするにあたって、スカイラインクロスオーバーの弱点でもあった、「後席と荷室の狭さ」と「燃費」を解決したとしても、コストのかかるFRベースでつくっていては、車両価格の高さを完全に解決することは難しい。

 SUVならば、FRベースである必要はなく、コストの低いFFベースの4WDをつくったほうがいい。

 そして、既に国内では、「スカイライン」ブランドの神通力は通用しない。常に、「昔のスカイライン」を引き合いに出され、現代のスカイラインに疑問やヤジの声が飛ばされる。スカイラインは、現モデルもものすごく出来の良いスポーツセダンだが、ファンが心にとめているのは、「過去のスカイライン」だけだ。

 セダンである現行スカイラインでさえその状況なのに、SUVにスカイラインという名を付けて出しても通用するはずもなく、かえって「スカイラインファン」を呆れさせるだけで、やる意味は全くない。

 新しいSUVを開発するにしても、DセグメントのQX50やQX55に、スカイライン以外の日本名を付けて売り出す方が、圧倒的に正しい選択だと筆者は考える。

■「Z」だけでも生き残ってくれてよかった

これがインフィニティQX60モノグラフ。FFベースの4WDで北米市場向けのデザインだ
これがインフィニティQX60モノグラフ。FFベースの4WDで北米市場向けのデザインだ

 INFINITIはこの10年、SUVにしか力を入れていない。2016年にはミドルクラスSUVのQX50をモデルチェンジし、インフィニティブランドの稼ぎ頭に成長させ、2020年9月には3列シート7人乗りのSUV「QX60 Monograph(モノグラフ)」を公開。

 2021年2月には「QX55」を発売開始、といった具合で、どれも、FFベースの4WDだ。

 エンジン縦置きFRのレイアウトと比べて省スペースで済み、海外にある現地工場で製造をするので、価格を大きく抑えられる(※FRプラットフォーム車は日産栃木工場がメインであり、そこから世界中へ輸出しているため、輸送費がかかる)。

 さらには為替変動の影響も受けるため、利益が圧縮されることもある。FRセダンにこだわっていては、INFINITI撤退すらありうる状況において、正しい選択だといえる。

 日産ブランドはというと、もしFRセダンから撤退となると、日本市場においては軽、コンパクト、FFベースの4WD SUV、そしてスポーツで戦っていくことになる。そして、それぞれのカテゴリで、EVを出してくるだろう。

 筆者はかねてより、スカイラインやフーガは、EV「アリア」をベースにした「ラグジュアリーEVセダン」として、電動技術を駆使した古典的な後輪駆動のフィーリングの4WD EVになってほしい、と思っていたが、今回の情報を耳にして、その可能性が、より強まったと感じた。

2020年9月に公開されたZプロトタイプ。歴代Zの意匠を随所にまとったデザインで話題となった
2020年9月に公開されたZプロトタイプ。歴代Zの意匠を随所にまとったデザインで話題となった

 唯一の期待は、FRプラットフォームの新型「フェアレディZ」だ。スカイラインが消滅したとしても、ここで新型となるZは、あと10年は生き続けてくれるはずだ。スカイラインが消滅すると決まったわけではないが、この状況で、Zだけでも生き残ってくれたことに、感謝している。

 かつて、スポーツカーが好きで日産に入ってきた開発エンジニアは、筆者を含めて山のようにいた。FRセダンの開発縮小は残念ではあるが、日産がクルマをつくり続けることのほうが大事だ。今後も多くのユーザーに愛されるクルマをつくり続けてほしい。

【画像ギャラリー】生産縮小から廃止へ向かうのか!? 伝統セダンの名を継ぐ現行スカイラインを見る

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす ≫

最新号

S-FR開発プロジェクトが再始動! 土屋圭市さんがトヨタのネオクラを乗りつくす! GWのお得情報満載【ベストカー5月26日号】

S-FR開発プロジェクトが再始動! 土屋圭市さんがトヨタのネオクラを乗りつくす! GWのお得情報満載【ベストカー5月26日号】

不死鳥のごとく蘇る! トヨタS-FR開発計画は再開していた! ドリキンこそレジェンドの土屋圭市さんがトヨタのネオクラシックを一気試乗! GWをより楽しく過ごす情報も満載なベストカー5月26日号、堂々発売中!