ついにこの時が…。日産が、「スカイラインを含むセダンの新型車の開発を中止する」という情報が世間をざわつかせている。情報によると、日産は人気のSUVやEVへ経営資源を集中する方針だということだ。一部では「スカイラインもSUV化する」とのうわさも流れている。
もし、ほんとうにスカイラインがSUVとなったとして、それは成功するのであろうか。「スカイラインクロスオーバー」の前轍を踏むことなく成功する道があるのか、考察していく。
文/吉川賢一、写真/NISSAN
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■直ちに「製造中止」という発表ではない
初めに、今回の情報は、日産が、FRセダンに使われている部品(縦置きエンジン用のトランスミッションや、FR用エンジンマウントなど)を計画的に縮小する旨を、影響を受ける大手サプライヤへ伝えた、という内容だと推測される。
この内容から、FRセダンの開発は縮小となる、ということは推測されるが、直ちに製造中止にする発表ではない。
また、日産に限らず、昨今のセダン系の販売台数状況を見れば、縮小・撤退するのも別段驚くべきことではなく、セダン系の開発縮小が伝えられただけで、「スカイラインがSUVになるのでは!?」というのは、安直すぎる発想だと感じる。
しかしながら、仮にスカイラインがSUVとなったときにどういった姿になるのか、そして、それに意味があるのか、については知りたいところだろう。
■北米向けにつくられていた、スカイラインクロスオーバー
ご存じの通り、歴代スカイラインは、セダンもしくはクーペとして(※3代目スカイラインにはバンタイプもあったが)販売されてきたクルマだ。その歴史のなかで唯一、SUVタイプで販売されたのが、スカイラインクロスオーバー(2009~2016年)であった。
スカイラインクロスオーバーは元々、北米が主戦場である日産の高級車チャンネル「INFINITI」のクロスオーバーSUV「EX35」として、2007年に誕生したクルマだ。
シャシーなどのコンポーネントはG35(日本名:スカイライン)と共用し、3.5LのV6エンジンと7速AT、FRとFRベースの4WDを組み合わせ、「G35のハンドリングと乗り心地の良さを持つ小型プレミアムSUV」と位置づけられたSUVであった。
比較的コンパクトでスタイリッシュなボディスタイルであったのは、ターゲットを女性としており、旦那様がFRセダンに乗り、奥様がSUVに乗ることを想定していたという。
ちなみに「EX」は、INFINITIブランドの呼称統一を受けて「QX50」となり、2018年のフルモデルチェンジで2代目「QX50」となったタイミングで、2.0リットルVCRターボエンジンを積んだ「FFベースのミドルサイズSUV」に生まれ変わり、今ではINIFINITIの稼ぎ頭にまでなっている。
だが日本では、スカイラインクロスオーバーの人気は高くなかった。SUVという割には後席や荷室が狭く、日本には燃費の悪い3.7Lエンジン仕様(編注:北米仕様は3.5L、欧州と日本仕様は3.7L)しか導入されず、価格も420万円~と非常に高かった。
INFINITIのプレミアムSUVをそのまま持ってきて「右ハンドル仕様」にしただけのクルマでは、日本の顧客には響かなかった、ということであろう。せめて中国で出していた2.5リットルVQ25HR型エンジン仕様でもあれば、違った結果となっていたかもしれない。
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