日産 プレセアが描いた9年 柔らかな曲線美が記憶に残る4ドアHTの佳作!【偉大な生産終了車】


 毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。

 時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。

 しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。

 訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回は日産 プレセア(1990-1999)をご紹介します。

文/伊達軍曹 写真/NISSAN

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■カリーナEDのヒットに触発 日産が送り出したミドルクラスの4ドアハードトップ

 トヨタ カリーナEDが巻き起こした「4ドアハードトップブーム」に乗り遅れまいと開発された、7代目日産 サニー(B13型)の基本コンポーネンツを流用した4ドアピラードハードトップ。

 流麗なフォルムにより当初は人気を博したが、居住性に難のある4ドアハードトップのブーム自体が長くは続かず、フルモデルチェンジを受けた2代目のデザインがきわめて凡庸だったこともあり、2000年をもって販売終了となったモデル。

 それが、日産 プレセアです。

 1985年に登場した初代トヨタ カリーナEDに端を発する「背が低い4ドアハードトップ」の一大ブーム。

 そのブームに乗るため、日産が当時のB13型サニーの車台を流用して作ったのが、1990年6月に発売された初代プレセアでした。

日産 初代プレセア。全長×全幅×全高は4395mm×1690mm×1320mm、ホイールベースは2500mm。車名の「PRESEA」は「宝石」という意味

 車台はサニーの流用ですが、ホイールベースは70mm延長して2500mmに。そこに載せられた個性的で美しいボディをデザインしたのは、当時は日産の社内デザイナーだった和田 智氏。

 こちらも名作デザインといえる初代日産 セフィーロもデザインし、その後はアウディに移籍して「アウディ A6」などのデザインを担当することになる人物です。

グリルレスの端正なマスク、流麗なスタイリングでユーザーにアピールした

 搭載エンジンはサニーと共通の1.5L(94ps)のほか、ブルーバードから移植した1.8L(110ps)と2L(140ps)の3種類を用意。トランスミッションは4速ATと5MTが用意されました。

 初代プレセアは、内装デザインもなかなか凝ったものを採用していました。

 主力グレードだったCt.IIでは7種類の仕様から好みのものを選ぶことができ、スポーティな風合いのツイード仕様や、ホフホワイトも選ぶことができた本革&専用クロス仕様は、当時としては「かなりおしゃれ!」と感じられたものです。

車名にちなみグレードをCt.(カラット)で表した

 発売から5年後の1995年にはフルモデルチェンジが行われ、B14型サニーをベースとする2代目のプレセア(R11)が登場しました。

 しかし2代目のデザインは、和田 智氏が担当した初代と違ってすべてが凡庸で、これといった魅力もキレも感じられないものでした。

 さらに1990年代後半になると、4ドアハードトップは「居住性は正直イマイチである」という点からユーザーに敬遠されるようになり、ジャンル自体が急激に失速。

 そのため2代目プレセアは1999年8月には生産終了となり、在庫分のみの対応に。そして在庫を売り切った翌2000年8月、ブルーバードシルフィに統合される形で販売終了となりました。

■ブームとデザイン プレセアを阻んだ2つの“終焉”

 初代の発売当初は好調なセールスを記録した日産 プレセアが、2代目をもって完全に終了してしまった理由。

 それは、直接的には「4ドアハードトップブームが終焉したから」ということになるでしょう。

 1980年代後半から1990年代前半にかけては、各社が登場させた「背の低い4ドアハードトップ」――具体的にはトヨタ カリーナEDやスプリンターマリノ、ユーノス300などが「カッコいい!」ということで、比較的若い世代のドライバーから大きな支持を集めました。

インパネ部(初代)。ライトを点灯させるとメーターが鮮やかなブルーに発光する「マリンブルーメーター」を採用。演出を高めた

 しかし1990年代半ば頃から、一部の自動車評論家は「あんなモノ(背の低い4ドアハードトップ)はセダンじゃない! 邪道だ!」的な主張をし始めました。

 そして――決して自動車評論家の意見につられたわけではないでしょうが(普通の人は車雑誌など読まないので)、多くのユーザーも「よく考えたら、さすがにこの背の低さって不便だよね」と思うようになっていきました。

 そのため、今見てもなかなかカッコいいと思える4ドアハードトップ各車の人気は、日産プレセアを含め、急激にしぼんでいきました。

 そしてプレセアの場合は、そこに追い打ちをかけたのが「2代目の凡庸なデザイン」でした。

 当時は日産の社員だった和田 智氏が線を引いた初代プレセアのスタイリングモチーフは、「川の流れによって削られた自然の石の丸み」とのこと。

リアビュー(初代)

 その高尚なコンセプトは、デザインに関する専門知識ゼロな筆者には理解できません。

 しかし出来上がった完成品を見れば、筆者のような素人にも「造形としての根本的な良し悪し」は理屈抜きで伝わってくるものです。そういった意味で、初代プレセアは偉大なデザインでした。

 しかし2代目は――誰がどういう意図でデザインしたのかは存じませんし、いろいろな社内事情や「上からの指示」みたいなものがあっての結果だろうと理解もできますが、何の印象も残らない、「どこかで見たようなカタチの寄せ集め」でしかありませんでした。

 まぁ仮に2代目が素晴らしいフォルムとディテールであったとしても、1990年代後半にはジャンル自体が終わってしまったため、いずれにせよ日産 プレセアの命脈は途絶える運命にあったのでしょうが……。

■日産 プレセア(初代)主要諸元
・全長×全幅×全高:4395mm×1690mm×1320mm
・ホイールベース:2500mm
・車重:1090kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、1838cc
・最高出力:110ps/6000rpm
・最大トルク:15.3kgm/4000rpm
・燃費:10.4km/L(10・15モード)
・価格:169万円(1990年式 Ct.II 4速AT)

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