「硬ければいい」というものでもない
走行中のクルマには、ステアリングホイールを操作したときだけでなく、高速で直進走行しているときや急ブレーキを踏んだとき、突起物を乗り越したときなども、様々な入力がある。またエンジンのように、クルマ内部で発生する振動もある。
これらの入力や振動は、サスペンションやエンジンマウントの対策だけではカバーができず、車体構造で振動を「いなす」(具体的には共振周波数をずらす)ような工夫が必要となる。車体で「いなす」ことによって、音や振動を小さくすることができ、乗り心地性能を向上させることができるのだ。
数値よりも「どこにどんな対策を施したか」が重要
車体剛性がアップした、と聞くと、素晴らしい対策が施されているようにも思えるが、実は「剛性向上の割にはほとんど効いてない」ってことや、「もっと効率的なやりようがあったんじゃないのか?」と思う例もしばしばある。
先日発表されたレクサスの新型NXでは、ダッシュパネルの周辺を補強してステアリングの周辺剛性を上げており、これは操縦性向上と、振動対策が目的だと考えられる。また、リアの開口部周りに車体補強が施されているが、この部分はキャビンの振動に大きく影響する部位であり、音振性能と乗り心地性能の対策と考えられる。
これらの対策部位は、先代NXや、RAV4、ハリアーといった同カテゴリのSUVボディでの検討で得た知見をもとに、総合的に考慮して行われているはずだ。実際にどれだけ効果が出ているのか、試乗させていただくのが楽しみだ。
車体剛性は、車体の曲げ剛性や捩じり剛性は、車体の強さを示す「代用特性」に過ぎない。「捩じり剛性を〇パーセント向上」という数値よりも、何処にどのような対策を入れたのかが重要。数値は事実であっても、そっくりその分だけ性能向上したとは、信じない方がいいこともあるのだ。
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