全職業の有効求人倍率が0.97倍の今日にあって、トラックドライバーの求人倍率は1.92倍と、依然高率のまま推移している。すなわちトラックドライバーのなり手が少ないということで、ドライバー不足はいよいよ深刻さを増している。
どうしてトラックドライバーのなり手が少ないのだろうか? 危機感を募らせる、運送事業者の業界団体である公益社団法人全日本トラック協会(全ト協)の動きを追った。
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
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■全ト協「標準的な運賃」キャンペーン
『「送料無料」じゃありません! トラック輸送の「標準的な運賃」にご理解・ご協力をお願いします』。全ト協が荷主・一般消費者向けに開始したキャンペーンのメッセージである。
トラック輸送は国内物流の約9割を担う重要な社会インフラだが、担い手不足により物流が停滞する「物流危機」が現実的な問題として表面化したのは2017年のことだった。
それから4年。コロナ禍もあり、世の中は大きく変わった。いっぽうでトラック輸送を取り巻く状況は依然、厳しいままだ。全ト協がキャンペーンを行なう背景にはこうした危機感がある。
■終わらない物流危機
今も続く物流危機の端緒となったのは、宅配便最大手のヤマト運輸が、社員の労働環境改善のために荷受け量を抑制するとともに、法人向けに運賃の値上げを求めて行くと発表したことだ。
同様の動きが他の運送事業者にも広がり、「いつかは来る」と言われていた、ドライバー不足によりモノが運べなくなる事態が現実のものとなった。
荷物量の増加はネット通販事業などの急拡大に起因する。この数年で貨物自動車運送事業法の改正や働き方改革の推進など、行政・事業者は物流機器を回避するための取り組みを行なってきたが、新型コロナウイルスの感染拡大により「巣ごもり消費」が急増し、再びラストワンマイル輸送の需給が逼迫している。
トラックドライバーの有効求人倍率は全職業平均の約2倍という状況がこの数年続いており、コロナ禍で求人数が低下する中でも人手不足は改善していない。
特に若年層(29歳以下)の割合は全産業と比較して4割少なく、ドライバーの高齢化も進んでいる。その理由は、ほかの職業より「拘束時間は2割長く、給料は2割少ない」という過酷な労働環境だ。
結局のところ、運送会社が適切な運賃を収受できなければ、「ドライバー不足の解消」も「安定した輸送インフラの確保」も不可能だ。そのためには荷主や一般消費者の理解と協力が欠かせない。
国土交通省が「標準的な運賃」を告示するという異例の制度はこうした背景から導入されたもの。荷主への交渉力が弱く、法令を遵守しながら持続的な運営を行なうことが困難な小規模な事業者においても、参考となる運賃が示されることで、労働条件の改善や健全な運営の確保といった効果が期待される。
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