■距離制と時間制、二つの「標準的な運賃」
標準的な運賃は令和5年度までの時限措置として2018年(平成30年)の貨物自動車運送事業法の改正(施行は翌年)により導入されたもので、「運転者の労働条件の改善」「運送事業者の健全な運営の確保」「貨物流通機能の維持向上」などを目的とし、「適正な原価及び適正な利潤を基準として」標準的な運賃を定め、国土交通大臣がこれを告示するとしている。
「距離制運賃」と「時間制運賃」の2種類があり、バン型車を基準に全国10ブロック毎に設定する。車種は小型車(2トンクラス)、中型車(4トンクラス)、大型車(10トンクラス)、トレーラ(20トンクラス)の4種類。
具体的な運賃は国交省や全ト協が公表する運賃表を参照してほしいが、例えば距離制なら関東地方のトレーラで、走行距離が100kmなら60420円となっている。
時間制の場合は、近畿地方の小型車で8時間制なら基礎額が3万5580円で、走行距離10km毎に280円、作業時間が1時間増す毎に3400円を加算するというように定められている。
また、冷蔵・冷凍車などの特殊車両、日曜・祝祭日などの休日や深夜・早朝の運送などに2割の割増運賃、30分を超える待機時間が発生する場合は、30分毎の待機時間料を定めている。
待機料は、小型車で1670円、中型車で1750円、大型車で1870円、トレーラで2220円(いずれも30分毎)。ほかに、積み込み、付帯業務や、有料道路・フェリーの利用、燃料サーチャージなどは運賃に含めず、別途、料金・実費を収受するとしている。
これらの取引条件を、取引先ごとに契約書・覚書を作成し規定するように求めている。
■持続可能な物流の構築のために
物流危機はトラックドライバーや物流事業者の努力だけでは解決しない構造的な問題だ。荷主企業(着荷主、元請事業者も含む)の協力と、一般消費者の理解が欠かせない。
働き方改革法の「時間外労働の上限規制」は、トラックドライバーをはじめとする「自動車運転の業務」に関しては、2024年3月末までの猶予期間を設けているが、それまでに労働条件の改善を達成できなければ、物流の停滞は避けられない。日本のサプライチェーンは、現状のままでは、もはや持続可能ではないのだ。
改正貨物自動車運送事業法では「荷主対策の深度化」として、荷主の配慮義務の新設、荷主勧告制度の拡充、違反原因行為をしている疑いがある荷主に対する働きかけ等の規定の新設など、荷主に関する部分が強化されている。両者が共倒れになる前に、協力して改革を進める必要がある。
コロナ禍により、一時、お店からマスクやトイレットペーパーが消えた。生活と産業を支える社会インフラとしての物流の役割を意識した消費者も多かったのではないだろうか。
荷主と社会が物流業界の現状を認識し、ドライバーがその役割に応じた適切な賃金を受け取る。「標準的な運賃」がトラック運送業を適正化し、持続可能な物流環境を構築するための第一歩になって欲しい。
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