■マツダの基幹車種として、ものすごく出来はいいのだが、そのよさが伝わりづらい
というわけで、上に述べたように、マツダ3の出来はとてもいいと思います。ではなぜ人気が盛り上がらないのか。
その理由は「性能のわかりにくさ」にあるのではないかと考えます。
例えばエンジンです。1.5Lは111ps、2Lは156psです。特に貧弱というわけではありませんが、目を見張るほどのパワーでもありません。じつは、圧縮比13.0対1という高圧縮比による高圧縮エンジンならではのビート感とか高回転域の伸びやかさを持っているのですが、それは実際に乗ってみないとわかりません。
ディーゼルエンジンについても、先代アクセラは2.2Lディーゼルターボを搭載していて、172ps/420Nmを発揮。特に420Nmを発揮する極太のトルクとそれによる豪快な加速感が魅力でした。
対してマツダ3は、1.8Lディーゼルターボへとダウンサイジング。マイナーチェンジ前に比べるとのびやかで気持ちのいい吹き上がりを見せるようになりましたが、2.2Lの迫力には及びません。もちろん、過不足のないパワーではあるのですが、このエンジンに乗りたいと思わせる求引力が足りないように思います。
スカイアクティブ-Xは、エンジン設計者が考える内燃機エンジンの理想を追い求めたエンジンで、火花点火を引き金にしているとはいえ、圧縮着火を実現しているわけで、もの凄く高いハードルをクリアしているのです。
内燃機関の可能性を広げる技術を搭載していますから、それだけでも価値があると思うのですが、結果として2L PCCI+マイルドハイブリッド+スーパーチャージャーで、190ps/240Nmというパワースペックと、JC08モード燃費18.0㎞/L、WLTCモード燃費(平均)17.3㎞/Lで、突出した数値とはいいがたいものです。
鳴り物入りで登場した新型エンジンなので、もの凄い燃費とか、もの凄いパワースペックを期待してしまうわけです。
■モノってよければ売れるのか?「売る」ことへメーカーが真剣に向き合う時期ではないか
実際にマツダ3を走らせてみると、スカイアクティブ-Xも、スカイアクティブ-Dも、スカイアクティブ-Gの1.5Lと2Lのガソリンエンジンもどれもが癖がなく、しかもドライバーの意図を汲むように、微細なアクセル操作に反応して一体感のある走りを体感させてくれます。その作り込みは見事だと思います。
でもそれを、初めてディーラーに試乗にやってきたドライバーに感じさせたり納得してもらうのは、なかなか難しい仕事だと思います。
マツダはものすごく真摯にクルマを作り込んでいて、ドライバーがクルマを運転することで得られる一体感とか、思いどおりに走るクルマをの楽しさの実現に全力をかけているわけです。
だから個人的には、マツダ3は価格に見合った魅力的なクルマだと思うのですが(実際ボクはマツダ3を買っちゃいましたから)、その価値のわかりにくさは、このクルマの販売面でのハードルになっているのではないかと思います。
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