■スイフトスポーツのライバル車マーチNISMO
一方、スイフトスポーツのライバル車としては、マーチNISMOが挙げられる。オーテックジャパンが手掛けたマーチのチューニングモデルと考えれば良い。
マーチNISMO・Sでは、専用にセッティングされた直列4気筒1.5Lエンジンと5速MTが搭載され、ブレーキやサスペンションにもチューニングを施した。
ボディの下まわりが補強され、ボディ剛性も高めている。エアロパーツ、16インチアルミホイール、NISMO専用スポーツシートなども備わり、車両全体に手を加えた。
マーチNISMO・Sの価格は187万6600円で、直列3気筒1.2Lノーマルエンジンを搭載するマーチGとの価格差は約20万円だ。機能や装備の違いを考えると、マーチNISMO・Sの価格も、スイフトスポーツに劣らず買い得といえるだろう。
それなのにマーチNISMO・Sの売れ行きは低調だ。2021年1~5月の1か月平均登録台数は、マーチ全体でも850台だから、スイフトスポーツよりも少ない。
マーチNISMO・Sの売れ行きを販売店に尋ねると、以下のように返答された。
「今の日産では、コンパクトな車種の売れ筋は、ノートと軽自動車のデイズ、ルークスになる。マーチの売れ行きは下がった。マーチNISMOはさらに少ない。納期も2021年6月下旬に契約をいただいて、9月下旬から10月上旬になる。生産台数が限られるから納期も長めだ」。
■ベース車の人気がスポーツモデルの売れ行きを左右
以上のように、マーチNISMOの売れ行きが伸び悩む背景には、マーチという車種自体の人気低迷が影響している。割安にエアロパーツを装着したりチューニングを施しても、車種の人気が乏しいと、売れ行きを伸ばせない。
そして人気と同様のことが、走行性能にも当てはまる。コンパクトカーとして走りの素性が優れていれば、高性能なエンジンを搭載したりサスペンションのチューニングを施すと、さらに優れた運転感覚を味わえる。
逆にベース車の造り込みに不満が伴うと、そこにいくらチューニングを施しても、走りの良さにはあまり期待が持てない。マーチNISMOのようなチューニングされた車種の商品力も、ベース車によって大きく左右されるのだ。
マーチの場合は、ベース車の走りがいま一歩と感じさせる。街中では路上の細かなデコボコを伝えやすく、大きめの段差を通過した時の粗さも気になる。ベース車でも操舵に対する反応を妙に機敏に仕上げたから、カーブに進入する時などは、ボディが唐突に傾きやすい。車両全体の動きが滑らかさに欠ける。
このマーチの欠点は、例えばレンタカーを借りて、街中を走る時でもスグに分かる。「マーチは細かく揺すられて、全体の動きがバラバラな感じ」といった感想を聞くことがある。
マーチNISMOは、前述の通りボディを補強して、サスペンションもそれに合わせてチューニングされている。前述の唐突な挙動変化、ボディの大きな傾き方、粗い乗り心地などは相応に改善された。それでも足まわりについては、少し無理に締め上げた印象が残っている。
またボディスタイルは、ユーザーの好みによって変わるから一概にいえないが、マーチの丸みを持たせた外観は可愛らしい印象だ。エアロパーツを装着した時の視覚的なバランスは、現行マーチNISMOよりも、先代マーチ12SRや15SR-Aの方がカッコ良かったと思う。
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