自動化レベル4は大型トラックから? 乗用車と歩みが異なる自動運転【自律自動運転の未来 第18回】

自動化レベル4は大型トラックから? 乗用車と歩みが異なる自動運転【自律自動運転の未来 第18回】

 自動運転技術の最先端情報をキャッチアップしていく本連載、第18回となる今回は「大型トラック業界における自動運転技術の進化」を紹介します。乗用車の領域ではホンダが世界に先駆けて公道走行可能な「レベル3」技術を市販しました。では「レベル4」となるとどうなるか? どうもそちらはトラックが先行しそうな状況のようです。

本文、写真/西村直人

シリーズ【自律自動運転の未来】で自動運転技術の「いま」を知る

■大型トラックは4項目を軸にして「レベル4」へ向かう

 前回(第17回)の文末、大型トラックやMaaS領域から先に自動化レベル4が実装されることを報告しました。今回はその具体例をレポートします。政府の方針を受け、自動化レベル4技術の社会実装に向けて、国土交通省と経済産業省がとりまとめを行っています。

 そこでは以下4項目をレベル4技術の論点として取り組むことが示されました。

(1)遠隔監視レベル4のみで自動運転サービスを実現すること
(2)対象エリア、車両を拡大するとともに、事業性を向上させること
(3)高速道路における隊列走行を含む高性能トラックの実用化すること
(4)混在空間でレベル4を展開するためのインフラ協調や車車間・歩車間を連携させること

2021年7月1日、UDトラックスはフラッグシップトラックである「Quon(クオン)」の一部改良を発表。改良の目玉は運転支援技術である自動化レベル2の搭載で、「UDアクティブステアリング」と名付けられた技術でドライバーの大幅な疲労軽減を謳っている(後述)
2021年7月1日、UDトラックスはフラッグシップトラックである「Quon(クオン)」の一部改良を発表。改良の目玉は運転支援技術である自動化レベル2の搭載で、「UDアクティブステアリング」と名付けられた技術でドライバーの大幅な疲労軽減を謳っている(後述)

(1)では2022年度を目標に、限定エリア内に特定条件が整った車両でレベル4を実現します。当面は10人乗り程度の小型バスを想定し、遠隔監視システムを用いた自動運転サービスとして位置付けます。

 第一段階として、管制センターによる専門の係員が、レベル4走行を行う車両の光学式カメラ情報を画面越しに確認しながら安全な運行を行います。

 第二段階では、路車間&車々間通信技術を使いながら自律自動走行を行いつつ、車内には車掌業務を行う係員が乗車して、クルマ椅子を利用する乗客の乗降サポートを行います。同時に、限定エリアを徐々に拡大しがら、運行速度を高めるなど有用性も向上させます。

(2)では2025年度を目標に、自律自動走行を行う車両の種類を増やしながら、移動店舗など40項目以上のサービスを導入し裾野を拡げます。さらに、車両の開発速度を早めるため競争領域とし、路線バスの廃止が相次ぐ地域での活躍を早期に目指します。

(3)では2025年度以降を目標に、高速道路でのレベル4を実装した大型トラックでの隊列走行を実現します。

 第一段階として、2022年度までにレベル4の事業化や運行管理システムを検討し、同時に検証用の車両(=レベル4を実装した大型トラックのプロトタイプ)も開発します。

 第二段階では、大型トラックならではのODD(Operational Design Domain/運行設計領域)について、その方針と評価システムを確立。そして、商用車メーカーごとに車両システムを開発しつつ、メーカー間の整合性を確認するため実証走行も同時に行います。

(4)では2025年頃を目標に、交通インフラ(信号機や速度などの各種規制標識、道路設備など)と協調する車々間通信や歩車間通信を実現します。

 これまで自動車(乗用車/商用車/MaaS)に特化した自動運転技術が中心でした。その状況に歩行者が加わり我々の生活と密着することで、自動運転技術の社会的受容性が高まり、真の意味での自動運転社会に近づきます。 

 将来的には車々間&歩車間通信技術の国際協調を図り、WP29などとも連携することで業界標準化(ディファクトスタンダード)を目指します。

日本の物流を支える大型トラック。自動運転技術の導入による影響が広いため、乗用車とは異なるルートで進化が進んでいる
日本の物流を支える大型トラック。自動運転技術の導入による影響が広いため、乗用車とは異なるルートで進化が進んでいる

次ページは : ■自動運転技術が「トラック業界」を救う?

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