ロードスターもついに電動化!? マツダの経営計画変更はどうなった?

■ロードスターだけは純エンジン車というわけにはいかないのか?

ロードスターは電動化されるのが確実となった。ただ、HVなのか、マイルドHVなのか、EVなのかは不明
ロードスターは電動化されるのが確実となった。ただ、HVなのか、マイルドHVなのか、EVなのかは不明

 マツダに話を戻すと、2030年には世界で売られるマツダ車の100%を電動化する方針を打ち出した以上、そこにはロードスターも含まれる。

 実際、中期技術・商品方針説明会の質疑応答において「2030年に全車電動化を目指しておりますが、そのなかにロードスターも含まれています」と専務執行役員・研究開発・コスト革新統括の廣瀬一郎氏が答えている。

 ただし、先代ロードスターは約10年間にわたって生産されたこともあり、2022年から2025年の間に導入される8車種には含まれないだろう。現行ロードスターの登場は2015年だから、10年後なら2025年だが、車両の性格やプラットフォームの独自性によって先送りされそうだ。

 新しいマツダ車のプラットフォームには、エンジンを横向きに搭載する前輪駆動車が中心のスモール群、縦向きに搭載する後輪駆動車を基本としたラージ群、さらに電気自動車(スカイアクティブEV)専用の床下にリチウムイオン電池を搭載するプラットフォームもそろえる。

 これらの内、スモール群は今のマツダ車のレイアウトに近い。環境技術には、スカイアクティブX、24Vのマイルドハイブリッド、電気自動車、ロータリーエンジンを使う電動化が挙げられている。

 ラージ群はエンジンを縦向きに搭載する後輪駆動車とあって、専用開発される直列6気筒のガソリンエンジン、スカイアクティブX、クリーンディーゼルターボがある。さらにラージ群でも、直列4気筒ガソリンエンジンを選べる。電動化技術には、48Vのマイルドハイブリッドとプラグインハイブリッドを用意する。

 このほかロードスターは、電動技術としてハイブリッドを併用しながら、現行型と同じくコンパクトな後輪駆動のプラットフォームを個別に用意する。

これまで開発してきたマツダのモノ造り革新の進化(出典:マツダ)
これまで開発してきたマツダのモノ造り革新の進化(出典:マツダ)

■直6エンジンとFR、大いに期待したい!

直6エンジン+FRのプラットフォームを採用するLARGE群(出典:マツダ)
直6エンジン+FRのプラットフォームを採用するLARGE群(出典:マツダ)
マツダのLARGE商品群(エンジン縦置き)のエンジン。左からガソリンの直列6気筒ターボ、中央が直列4気筒+PHEVのパワーユニット、右がディーゼル直列6気筒ターボ(出典:2020年11月9日に発表されたマツダの中期経営計画見直し)
マツダのLARGE商品群(エンジン縦置き)のエンジン。左からガソリンの直列6気筒ターボ、中央が直列4気筒+PHEVのパワーユニット、右がディーゼル直列6気筒ターボ(出典:2020年11月9日に発表されたマツダの中期経営計画見直し)

 マツダの戦略で興味深いのは、直列6気筒エンジンと後輪駆動の組み合わせを新たに設定することだ。もともとマツダのスカイアクティブ技術のコンセプトと魂動デザインは、後輪駆動と親和性の高いものだった。

 特に魂動デザインは、獲物を追いかけて疾走するチーターから外観のイメージを膨らませている。体重を後ろ足に掛けて蹴り上げ、進行方向は、前足を使って機敏に変化させる。この躍動感が魂動デザインのモチーフだ。

 実際にマツダ車の外観では、前輪駆動車なのにボンネットを長くデザインして、荷重が後輪に乗っているように見える。

 実際は後輪駆動ではないから、ボンネットといっても、前側のオーバーハング(前輪よりもボディが前側に張り出した部分)が長い。視覚的なバランスに少々無理が伴い、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)を長く、オーバーハングは短く抑える今のデザイントレンドにも沿っていない。

 その点で後輪駆動を採用すれば、今のマツダ車が抱えるこれらの本質的な矛盾をすべて解消できる。後輪駆動なら、前後輪が負担する重量配分も向上するから、マツダの目指す運転の楽しさも一層高められる。後輪駆動の採用は、最近のマツダにとって当然の成り行きだ。

 ただし、電動化や自動運転に繋がる運転支援技術の開発などを迫られる今、新たに6気筒エンジンと後輪駆動のプラットフォームまで手掛けるのは、相当な英断だろう。多額の投資が集中的に発生するからだ。

 ほかのメーカーは、エンジンやプラットフォームの種類を抑えることで、コストを削減している。例えばボルボのエンジンは、直列4気筒2Lが上限で、高い動力性能が必要な車種にはターボで対応する。

 今は2Lガソリンターボでも最大トルクは40kgm以上を引き出せるから、多気筒の大排気量エンジンは必要性が薄れてきた。

 プラットフォームについても、前輪の中心点とペダルの間隔は一定で、それ以外は柔軟に対応できるタイプが実用化されている。後輪を後方に寄せてホイールベースを伸ばせば、共通のプラットフォームを使って多彩な車種を展開できる。

 このような効率化の時代に、マツダは直列6気筒エンジン、プラットフォームについては後輪駆動と電気自動車専用のタイプまで開発する。

 かつてマツダは、エンジン、プラットフォーム、サスペンションといったスカイアクティブ技術に基づく複数のメカニズムを、ほぼ同時進行で開発した実績がある。

 これを支えたのは、少ない投資で効率の優れた開発と生産を行える「モノ造り革新」だった。今回も同様の考え方で取り組むが、経営的なリスクは大きい。

 それだけに直列6気筒エンジンを搭載する後輪駆動車は、優れた商品に仕上げて成功させてほしい。今時、直列6気筒エンジン+後輪駆動という昭和風のレイアウトがウケるのか? と思うが、走りの味わいという意味では、後輪駆動は前輪駆動と一線を画す。

 そのためにレクサス、メルセデスベンツ、BMWなどのプレミアムブランドは、今でもエンジン縦置きの後輪駆動車を造り続ける。

 相当にリスキーなチャレンジだが、逆の見方も成り立つ。今になって直列6気筒エンジン+後輪駆動を手掛けるのは、クルマ好きから見れば、雄大なロマンではないのか。マツダしかやらないことだろう。

2022年に発売される予定のマツダの直6エンジン+FR車、次期マツダ6の予想CGイラスト(ベストカー製作)
2022年に発売される予定のマツダの直6エンジン+FR車、次期マツダ6の予想CGイラスト(ベストカー製作)

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