一方で両車がホンダユーザーの小型・低価格化偏重招く要因にも
しかしその一方で、実用性の優れたオデッセイやステップワゴンは、ホンダのユーザーが小さなクルマに乗り替えるダウンサイジングの出発点でもあった。
前述の通り1994年に登場したLサイズミニバンの初代オデッセイは好調に売れたが、1996年にミドルサイズミニバンの初代ステップワゴンが発売されると、オデッセイは少なからずユーザーを奪われた。
そのステップワゴンも、2001年に車内の広いコンパクトカーの初代フィット、これをベースにしたコンパクトミニバンのモビリオが登場すると、売れ行きが悪影響を受けてしまう。
そして2011年に軽自動車の初代(先代)N-BOXが発売されると、モビリオの後継となるフリード、あるいはフィットから、N-BOXに乗り替えるユーザーも増え始めた。
この状態が続いた結果、2021年上半期(1~6月)におけるホンダの販売状況を見ると、国内で売られたホンダ車の57%をN-BOXを始めとする軽自動車が占めた。そこにフィットとフリードを加えると78%に達する。
オデッセイとステップワゴンの好調な売れ行きによってスタートしたホンダの実用車路線は、フィットやフリードへのダウンサイジングを招き、その流れがさらに加速して、今ではN-BOXなどの軽自動車が一番の売れ筋カテゴリーになった。
“良きバランサー”を務めたオデッセイを失ったホンダ
今では初代オデッセイやステップワゴンのヒットから25年前後が経過して、初代N-BOXの登場から数えても10年を経ている。そのためにホンダのブランドイメージは、実用的でコンパクト、しかも低価格な方向に偏ってきた。
この状況のなかで、ホンダの高価格車を支えているのもオデッセイだ。つまりオデッセイは、バブル経済崩壊後の業績悪化からホンダを救い、従来のスポーツモデルとは異なる新たな実用路線を切り開き、その後のダウンサイジングにハマってブランドイメージまで小さくなっても、ホンダの高価格車を支え続けている。
自ら生み出した実用路線の責任を取るかのように、価格の高いミニバンでありながら堅調に売れ続ける。
1990年代以降のホンダを振り返ると、オデッセイは国内市場の偏りを是正する存在であった。1990年代はスポーツモデルに偏った売れ方を抑え、近年は低価格路線に歯止めを掛けている。オデッセイはいつも、ホンダ車の売れ方を安全な方向に整えていた。
もしオデッセイが居なかったら、今のホンダはどうなっていたのか。そのオデッセイをホンダは今、葬り去ろうとしている。果たして今後のホンダはどうなるのか……。
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