バブルは弾けたが、販売はそれほど落ち込まず元気いっぱいだった1990年代の日本の自動車業界。デザインが新しい局面を迎え、メカニズムの革新が続いたこの時代は、日本車の、それも高性能スポーツモデルの黄金期といってもいいだろう。モータースポーツにも積極的に挑んでいたから、そこから珠玉の名車が数多く生み出された。
今も華やかで、強い存在感を放っているのが90年代に生を受け、21世紀の扉を開いたスポーツモデルたちだ。デビューから20年前後になるが、今も魅力は色褪せていない。が、そろそろ補修パーツが少なくなり、程度のいいクルマも少なくなってきている。また、中古車価格も上昇中だ。
この時代のスポーツモデルを狙うなら、いまが最末期にして最高のタイミングではないだろうか。そして、どうせ狙うならファイナルバージョンがいい。メーカーが積み上げてきた技術の総決算でもある最終型なら、これからも長く付き合っていける。
各メーカーが熟成に熟成を重ねた、名車中の名車を手に入れる最後のチャンス。特に時代を代表していた5台のスポーツカーを紹介したい。
文:片岡英明
■ホンダS2000
ホンダが1970年にS800の生産を終了して以来、久しぶりとなるFR方式のオープンスポーツカーがS2000だ。本田技研工業創立50周年記念として1998年に発表され、1999年4月に販売された
工夫を凝らしたプラットフォームやサイドメンバー、二重構造のAピラー、高張力鋼管を用いたロールオーバーバーなどにより、世界トップレベルの剛性と衝突安全性能を実現した。電動開閉式のソフトトップは、約6秒で開閉。サスペンションは前後ともダブルウイッシュボーンで、タイヤは前後異サイズだ。意のままに操れる。
エンジンはF20C型と名付けられた2Lの直列4気筒DOHC・VTECを搭載。アルミ鍛造ピストンや肉薄ピストンリングなどを採用して250ps/22.2kgmを絞り出し、リッターあたり出力はレーシングエンジン並みの125psだ。その気になれば9000回転まで実用になる。
6速MTだけを設定し、2000年にはステアリングギア可変式のタイプVを仲間に加えた。2Lモデルは2005年までだ。後期モデルは排気量を2.2Lに拡大し、扱いやすいエンジン特性になる。生産終了は2009年6月だ。
このモデルのために開発されたエンジンを、このモデルのためだけに開発されたボディに搭載する。なんとも贅沢なモデルといえる。
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■トヨタセリカGT-FOUR
スペシャリティカーというジャンルを切り開いたセリカは、1985年8月に大変身を遂げた。時代の先端を行く美しいエアロフォルムをまとい、駆動方式もFFになる。1986年秋にはフルタイム4WDのGT-FOURを追加した。エンジンはターボで武装した2Lの3S-GTE型直列4気筒DOHCだ。4WDを意識させないオン・ザ・レールのハンドリングが自慢で、WRC(世界ラリー選手権)でも大暴れし、1990年にはタイトルも奪取する。
このST165セリカGT-FOURは89年9月にモデルチェンジし、次の世代のST185にバトンを託した。エンジンは進化版の3S-GTE型だ。94年2月にはGT-FOURが二度目のモデルチェンジを断行し、ST205になる。3S-GTE型ターボエンジンは255ps/31.0kgmまでパワーアップされた。3000回転手前からトルクが一気に盛り上がり、加速とともに景色が一変する。しかもスタビリティ能力は驚くほど高い。クルマの挙動は安定している。
最終型は99年だ。今乗っても、操る愉しさは格別である。なによりスタイルが最高だ。今見ても抜群に戦闘的でカッコいい。
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