■乗ってどうだった?
筆者が乗った新型SクラスはS500 4MATICの標準ボディだった。
乗り始めたのは箱根ターンパイクの下り坂だったのだが、車重約2トンのクルマながらそれなりにスピードが出ている下り坂での絶大な安心感や、ハンドル操作に対する絶妙な正確さを持つステアリング系にいきなり圧倒された。
高速道路に入ると、エンジンが遠くで回っているように感じる静粛性の高さや、アクセルを深く踏むと快音を響かせ「V8やV12は不要では?」と感じる直6エンジンの完成度の高さにもウットリしてしまった。
また、運転支援システムの進化などは箱根から東京への帰り道の約100km&約1時間半では確認しきれないほどで、新型Sクラスのような新技術などがテンコ盛りとなったクルマの全体像を把握するにはそれなりの時間が必要なことも再認識した。
■なのに少しだけスッキリしないのはなぜ?
これだけ素晴らしい新型Sクラスながら、冒頭に書いたように少しだけスッキリしないところもあった。それは乗って感じるクルマとの一体感が先代Sクラスには及んでいない点だ。
インテリアも大型ディスプレイを使った操作系は短時間ではマスターできず、静電式となったパワーシートのスイッチの操作感や、電磁式となったドアハンドルが操作から開くまでに僅かながらタイムラグがある点に違和感があったのも事実だ。
また、リア・アクスルステアリングもリアオーバーハングが長いクルマだけに、パーキングメーターなどで壁ギリギリに駐車し、ハンドルを大きく切って出る際などには、リアオーバーハングが大きく振るのを防ぐため、キャンセル機能があってもいいように感じた。
しかし、このあたりはきっと時間が解決してくれるだけに心配はないだろう。
というのも「ある一部分は先代モデルの方がいい」というのは、現行Eクラスや先代Cクラスの初期モデルの乗り心地など、「メルセデスあるある」だ。
それでも現行Eクラスと先代Cクラスの乗り心地は1年もしないうちに見事に改善されただけに、新型Sクラスのクルマとの一体感も早期に先代モデル以上になるに違いない(それだけにメルセデスはクルマの仕上がりや購入条件など、最終モデルは最終モデルで買う意味があるわけだ)。
また、大型ディスプレイなどの操作系も、先々代Sクラスから始まったコラムシフトは最初こそ違和感もあったものの、しばらくするとメルセデスでは当たり前のものとなっており、少なくともオーナーになればいずれ慣れるに違いない。
■まとめ
メルセデスは保守的に思われがちなイメージとは裏腹に、新しいチャレンジをドンドン行うメーカーである。
そのため、メルセデスのフラッグシップかつその世代のメルセデスのトップバッターとなる新型Sクラス(近年はSクラス、Cクラス、Eクラスという順にそれぞれ7年程度のローテーションでフルモデルチェンジされている)は、すぐには完全に理解できず、完成された先代モデルには及ばない細かなところがあるのも当然ということなのだろう。
また、新型Sクラスが採用した大型ディスプレイを核としたシンプルなインテリアやリア・アクスルステアリングなどは日本でも6月に発表された新型Cクラスに盛り込まれている。
こういった技術がやがてAクラスなどにも採用されることで、今後もメルセデスが世界のクルマをリードしていくのが確実なのを、新型Sクラスに乗って強く感じた。
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