■残価率やリセールの高さから、アルファード一強時代が到来してしまった
今回、2016年度から2020年度締めまでの、ヴォクシー、ヴェルファイア、アルファードの各年間販売台数の推移を棒グラフにしてみた。見ていただければ一目瞭然なのだが、販売台数の差こそあれ、ヴォクシーとヴェルファイアは右肩下がりなのに対し、アルファードは右肩上がりとなっている。
まずいえることとしては、ヴォクシーとヴェルファイア両車ともに、アルファードにお客を持っていかれているという状況にあるといえよう。
その要因のひとつには残価設定ローンの残価率がある。残価設定ローンにおいて設定される残価率は店頭で聞く限り、アルファードについては5年後で49%あたりになっている。しかし、この残価率は実際の相場よりも低めに設定されているのである。
ヴェルファイアは2020年度での販売台数の落ち込みもひどく、同じ兄弟車であっても残価率というよりは、実際の中古車市場などでの評価はアルファードには及ばなくなっている。
一方のヴォクシーは、小学生ぐらいの子どもがいる現役子育て世代のニーズが多いので、買い物や子どもの習い事の送迎、レジャーなど多方面で使われる頻度が高く、同年式でも過走行や内外装の状態があまりよくない状況の車両も多いので、5年後の残価率は30%前後と伸び悩んでいる。
そのため残価設定ローンを組んで新車購入を検討していると、車両価格はアルファードが圧倒的に高いのだが、残価率がかなり高いので、支払いプラン次第では「ヴォクシーの月々の支払い額に数千円足すだけでアルファードに乗ることができる」とセールスマンが案内すると、アルファードに飛びつく人が多いとのこと。
こうして、ヴェルファイアはもちろん、当初はヴォクシーの購入を検討していた人の多くもアルファードに流れているのが現状といえるのである。
■現行型は当初、ヴェルファイアが売れていたが、2018年から形勢逆転
2017年12月25日にアルファードとヴェルファイアはマイナーチェンジを行っているのだが、その時の月販目標台数はアルファードが3600台、ヴェルファイアが4500台となっていた。つまり、ヴェルファイアのほうが900台多かったのである。
しかしヴェルファイアは、マイナーチェンジモデルでのフルカウントとなる、2018暦年(2018年1月~12月)、2019暦年、2020暦年、いずれも平均月販台数は月販目標をクリアしていない。さらに、アルファードより多く販売したこともない。
つまり、ヴェルファイアはすでに2017年のマイナーチェンジのタイミングから、販売台数では失速傾向が目立っていたのである。
先ほどの棒グラフを見ると、2017年度でアルファードがヴェルファイアより多く売るようになり、ヴェルファイアの失速も加速しているが、アルファードとの販売台数差はかなりのものとなっている。
これは、“アルファード転がし”などが顕在化してきたタイミングと重なる。
アルファードは東南アジアなどで富裕層から高い人気があり、日本からの正規輸入モデルも販売されているのだが、左側通行(右ハンドル)の国では日本の中古車も人気がとても高い。
そのため中古車輸出が積極化し、日本ではアルファードの新車を短期間で売却する(海外へ出荷するためとされている)、“アルファード転がし”が盛んに行われるようになった。
そのため、「下取り査定額が新車価格を上まわった」とか、「高年式の中古車を買ったユーザーがディーラーで点検してもらっている間に新車の見積りを取ったら、新車のほうが安かった」など、信じられない話が販売現場では聞くことができた。
2020年5月にトヨタが全店で全車種(一部を除く)の併売を始めた時に、販売現場を訪れると、元専売チャンネルであるトヨペット店以外のショールーム内にもアルファードの大判ポスターが、掲示されるようになった。そして、もともとノアを専売していたカローラ店でもヴォクシーの試乗車が置かれていた。
つまり、この時点でトヨタの販売店ではアルファード及びヴォクシーをメインに売るようにという流れができていたのである。
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