オデッセイ終売で再評価!? 愛すべき独創的ホンダ車の「成功と失敗」

■時代を捉えたクリエイティブムーバー

日本ではもちろん、北米でもヒットモデルとなったCR-V。シティSUVとしてトヨタRAV4と人気を二分した
日本ではもちろん、北米でもヒットモデルとなったCR-V。シティSUVとしてトヨタRAV4と人気を二分した

 オデッセイと同時期のホンダ車には、クロスオーバーSUVのCR-Vや、初代ステップワゴンとその派生車S-MXがあり、これらはまとめて「クリエイティブ・ムーバー」と呼ばれ、どれも「今までありそうでなかった」コンセプトでヒットモデルに。それまで、当時流行していたクロカン・RV的な車種を持たず、業績が低迷していたホンダの救世主となった。

 CR-Vは、シビックのプラットフォームをもとに開発され、1995年にデビュー。男臭いパジェロやランクルと違い、「安いけどおしゃれで都会的、快適で誰でも運転でき、居住性・実用性が高いクロスオーバーSUV」という当時としては珍しかったコンセプトで大人気となった。

 現行モデルは日本では不振だが、アメリカでは引き続き一番売れているホンダ車。2021年1-5月累積販売は17万6000台と、2位シビックの12万台を大きく引き離し、いまだにホンダのドル箱である。

オデッセイとはまた違った趣の新型ミニバンとしてデビューしたステップワゴン。“道具感”のあるシンプルなルックスも人気の理由だった
オデッセイとはまた違った趣の新型ミニバンとしてデビューしたステップワゴン。“道具感”のあるシンプルなルックスも人気の理由だった

 1996年にデビューしたステップワゴンも、背が高いのにフロアが低いおかげで運転しやすく、実用性も高いというパッケージングの良さで月に1万台以上を売る大ヒットモデルとなった。

 当時少なかった2列目、3列目が完全にフラットになるシートアレンジが可能で、派生車種のカップル向けモデル、S-MXと合わせて、様々なニーズに応えたことも人気の理由だった。

■時代を先取り過ぎた“Jムーバー” HR-V

HR-Vはコンパクトカーのロゴをベースに最低地上高を高くとったクロスオーバーSUV。今見ても斬新なデザインだが、当時は評価が高くなかった
HR-Vはコンパクトカーのロゴをベースに最低地上高を高くとったクロスオーバーSUV。今見ても斬新なデザインだが、当時は評価が高くなかった

 手持ちの少ない武器でどうやったら戦えるのか。ホンダの技術者たちが知恵を絞って「これまでになかった」ヒット車を生み出した話は、今聞いてもワクワクする。しかし、うまい話ばかりでないところもまたホンダの面白いところ。

 大ヒットした「クリエイティブ・ムーバー」の次の世代としてホンダが世に送り出したのが「J・ムーバー」。テーマは「Small is Smart」。1998年に発売開始されたHR-Vはそのうちの1台で、現在のヴェゼルの祖先にあたる。よく見ると水平基調のキャラクターラインが新型ヴェゼルと共通なことがわかるだろう。

 発売当初は3ドアで、全長は3995mm、都会的な小型RVとしてもあまりに室内空間が狭かったことから売れ行きがふるわず、翌年急遽5ドア車が追加設定されたが、「Small is Smart」の看板がいきなりずっこけてしまう。今見るとステキなデザインだが、当時は若者向けとしても個性的過ぎて、また開発にあたって重視された環境安全性能なども含め、時代を先取りし過ぎていた感があった。

■ホンダ Zはこだわり過ぎた設計で惨敗

1998年の軽自動車規格変更の際に、ブランニューモデルとして誕生したZ。ミッドシップのライトSUVという新ジャンルであった
1998年の軽自動車規格変更の際に、ブランニューモデルとして誕生したZ。ミッドシップのライトSUVという新ジャンルであった

 同時期に「K・ムーバー」というシリーズもあった。そのうちの1台がアンダーフロアミッドシップ、さらにビスカスセンターデフ4WD、という変態的(?)なレイアウトのZ。

 このレイアウトはランボルギーニ・ディアブロと同じだったうえ、50:50の理想の前後重量配分を達成し「軽自動車のスーパーカー」というニックネームまでつけられた。

 ホンダ唯一の軽SUVということで注目を集め、先駆的な設計思想に基づく崇高なモデルだったが、いかんせんライバルのスズキのジムニーらに比べて、オーバースペックかつ割高でマニアックな造りだったため、恐ろしいほどの販売不振に終わった。

現在ではワゴンというジャンル自体が衰退してしまったが、アヴァンシアが登場した99年当時はまだワゴンが売れる時代だった!?
現在ではワゴンというジャンル自体が衰退してしまったが、アヴァンシアが登場した99年当時はまだワゴンが売れる時代だった!?

 その翌年、1999年にはアヴァンシアがデビューしている。初代オデッセイが初めてフルモデルチェンジした年に、二匹目のドジョウを狙ったのか、北米仕様のアコードのプラットフォームをもとにして開発された「これまでにない全く新しい高級車」だ。

 上級グレードはV6の3.0L VTECエンジンが搭載され、ホンダ初のゲート式インパネシフト、センターウォークスルー、リムジンインテリアを採用するなど、高級セダンとミニバンの融合という、これまた「いままでになかった」5ドアステーションワゴンであった。

 だが、パッと見は高級感をあまり感じられなかったこと、2代目オデッセイを超える新カテゴリー車としてのアピール力を持たなかったことから、こちらも惨敗となる。

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