RX-7 インプ スカイライン… 外国人窃盗団から国産旧車の盗難を防ぐには?

■盗難された国産旧車がバラバラにされてアメリカの専門店で発見!

J-Spec Auto Sports Inc.では切断されたフロント部分だけを「フロントクリップ」として販売されていた
J-Spec Auto Sports Inc.では切断されたフロント部分だけを「フロントクリップ」として販売されていた
2代目インテグラタイプRの「フロントクリップ」
2代目インテグラタイプRの「フロントクリップ」
2代目インテグラタイプRの「フロントクリップ」部分の裏側。実に痛々しい
2代目インテグラタイプRの「フロントクリップ」部分の裏側。実に痛々しい

 JDM人気に伴って近年、大きな問題となっているのが国産旧車スポーツカーの盗難である。外国人を中心とした窃盗団による国産旧車の盗難が増え始めたのはR32スカイラインGT-Rが「解禁」となる2014年以降をにらんだ2010年代前半と言われており、この1~2年は特に急増している。

 しかし、実はコロナ禍にあって盗難が激減した時期があった。2020年6月頃から約半年間、自動車盗難情報局に登録される旧車盗難の件数が大幅に減ったのである。

 理由としては、

・コロナ禍で外国人窃盗団の活動がおとなしくなった。入国できなくなった
・コロナ禍で外国へのコンテナ船が止まってしまった(船会社に確認したところ、アメリカ向けのコンテナだけはほとんど影響を受けずに出航していたそう)

 と、感染拡大によって外国との往来がやりにくくなったことが理由としてあったと思われる。しかし理由はこれだけではない。もう一つ、2020年5月末に国産旧車の盗難に絡むとんでもない事実が明るみに出たことも盗難減少に関わっているはずだ。

 これは、筆者もいち早く自動車メディアに記事を書き、TBS「あさチャン!」や同「Nスタ」などでも報道されているが、「日本で盗まれた国産旧車スポーツカーがバラバラにされて、米国ヴァージニア州にあるJDM専門店でオンライン販売」という事案である。

 盗まれたオーナー自身が自らバラバラにされた愛車の写真を発見し、エンジン番号も一致していた。

 その後も続々と、日本から盗まれたことが確実な旧車20台以上がそのサイトで発見された。

 Facebookでは、「Expose J-Spec autosports=ジェイスペックの悪事を晒す会」というグループもでき、わずか3-4日でメンバーは2000人を突破(現在は3000名)。

 メンバーのほとんどはアメリカ人で、「J-Spec Auto Sports Inc.でJDMを購入した。あれは盗品だったのか! 」「J-SpecのオンラインショップでEK9(シビック)のパーツを購入した。詳しく調べたら日本で盗まれたクルマの部品であることが分かったので返品した」という書き込みもあった。

エンジン番号までバッチリ出ている。Mさん所有のEK9のエンジンである
エンジン番号までバッチリ出ている。Mさん所有のEK9のエンジンである

 筆者もEK9を盗まれた被害者であるM氏の取材とアシストを兼ねてヴァージニア州にあるJ-Spec Auto Sports Inc.にメールや電話や通訳などを行ってきた。また、地元のヘンリコ警察の自動車窃盗専門刑事のグループとも連絡を取り合っていたのだが、いまだ返還には至っていない。

 この事件が発覚した2020年5月末からしばらくは、自動車盗難情報局に登録される旧車の盗難も数か月は激減していたのだ。

■盗まれた国産旧車はどこにいくのか?

2021年7月12日午前1時過ぎ、愛知県中村区烏森町のコインパーキングに停めていたRX-7(FD3S型)を盗まれるのを撮影していた事件があった。翌日には約20km離れた愛知県稲沢市のコインパーキングで発見されるも犯人はまだ捕まっていない(写真提供:RX-7オーナー)
2021年7月12日午前1時過ぎ、愛知県中村区烏森町のコインパーキングに停めていたRX-7(FD3S型)を盗まれるのを撮影していた事件があった。翌日には約20km離れた愛知県稲沢市のコインパーキングで発見されるも犯人はまだ捕まっていない(写真提供:RX-7オーナー)

 日本で盗まれた旧車は、まず1~2日以内に「ヤード」といわれる解体作業場に持ち込まれる。ヤードは全国に約2000箇所が登録されており、そのうち1/4は千葉県にある。

 愛知、千葉、茨城、埼玉の4府県には「ヤード条例」なる自治体の条例があり、2021年3月には違法ヤードが急増する三重県でも県議会でヤード条例案が提出されている。

 ヤード条例が導入された県内においては解体施設と輸出事業者の届け出や保管場所への標識の掲示、引き取り記録の保全などを義務付ける。違反した場合は公安委員会が業務停止を命じるほか、懲役などの罰則規定も設ける。

 日本で盗難された旧車は即座にナンバーを外されて仮ナンバーや盗んだ別のクルマのナンバーに付け替えられる。そして、違法ヤードに持ち込まれるわけだが、その際、盗んだ場所からヤードまでのルートは証拠が残らないよう事前に調査して「Nシステムがない」ルートを使うことが多い。

 そしてヤードに持ち込んで解体作業開始となる。車台番号は削られてバラバラに解体され、その後はコンテナに積んで違法に海外へ持ち出されるパターンが多いのだが、2020年はコロナ禍によりネットオークションなど国内で販売された例も少なくなかった。

 2020年秋、筆者が取材をしたケースでは、愛知県で盗まれたA80スープラが翌日に千葉県野田市内で走っていたことが判明し(他車のドラレコ映像)、その後、ヤフオクでパーツとして販売されていた例もあった。

 盗難から解体までのスピードは恐ろしく早い。「盗難から2日過ぎると発見の確率が大幅に下がる」と言われているのはそれが理由だ。

 実際、つい最近、愛知県名古屋市内で発生した「マツダRX-7(FD)」の盗難事件は、被害者本人によって撮影された動画がTwitterに投稿されたこともあって、多くのクルマ好き、FDオーナー、そしてテレビ局などが知ることとなり報道合戦が繰り広げられた。

 目の前で愛車が盗まれていく状況に呆然としながらも、オーナーが絶叫するというセンセーショナルな動画は300万回以上再生されている。

 オーナーに話を聞いたところ、「大きな声を出したら諦めて逃げていくんじゃないかと思った。突然のことで何もできなかった。頭が真っ白になって、ただただ叫んで、動画を撮っていた」とのことだった。

 しかし、その動画拡散が結局は功を奏したのか。多くのメディアで紹介されたことで、世間の注目が集まったのは確かだろう。FDは盗まれた日の翌日、無事、愛知県稲沢市のコインパーキングで発見されている。

 幸い、イグニションキーの損傷はあったものの、外観の損傷等はなく、室内が荒らされたり、消火器撒かれたりということはなかったそうだ。

GTウイングやマフラーが装着されたRX-7(写真提供:RX-7オーナー)
GTウイングやマフラーが装着されたRX-7(写真提供:RX-7オーナー)
イグニションキーが破壊されていた(写真提供:RX-7オーナー)
イグニションキーが破壊されていた(写真提供:RX-7オーナー)

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