■両車ともターボ付きでないと、動力性能的には厳しい
動力性能は、両車ともにノーマルエンジンは充分ではない。ルーミーは直列3気筒1Lで車両重量は1100kg弱、N-BOXは660ccで900kg以上だから、いずれもエンジンの負荷が大きい。
それでも実用回転域の駆動力は、排気量が1.5倍に増えるルーミーに余裕がある。その半面、N-BOXは遮音性能が優れ、ノイズはルーミーよりも小さい。
両車ともにターボも用意され、ルーミーでは動力性能がノーマルエンジンの1.4L相当、N-BOXも1L相当に拡大される。ターボの動力性能もルーミーが高く、遮音性能はN-BOXが優れている。
WLTCモード燃費(2WD)は、ルーミーのノーマルエンジンが18.4km/L、N-BOXは21.2km/Lだ。ターボはルーミーが16.8km/L、N-BOXは20.2km/Lになる。いずれも軽自動車のN-BOXが優れている。特にN-BOXではターボに注目したい。
N-BOXの最大トルクはノーマルエンジンが6.6kgm、ターボは10.6kgmだから1.6倍に増強されるが、燃費数値は5%しか悪化しない。N-BOXのターボは動力性能の割に燃費が優れている。
走行安定性は両車とも重心の高さを意識させるが、危険を避ける操作をした時は、車幅が狭いのにN-BOXが安定している。ルーミーは唐突にボディが傾いて不安定になりやすい。乗り心地は両車ともに硬めだが、N-BOXは足まわりが少し滑らかに動く印象がある。
■総合的にみれば王者N-BOXが優位
以上のようにN-BOXは、内装の質感、後席の着座姿勢と座り心地、エンジンノイズ、走行安定性、乗り心地などでルーミーに勝っている。現行N-BOXは2代目で、初代の成功を受けてコストを費やして開発されたからだ。
逆にルーミーは、開発段階で無理を強いられた。2014年は先代ハスラーのヒットを切っ掛けに、スズキとダイハツの軽自動車販売合戦が激化して、新車として売られたクルマの41%を軽自動車が占めた(2021年1~6月は38%)。
一部のOEMを除くと、軽自動車をほとんど扱わないトヨタでは、小型車から他社の軽自動車に乗り替えるユーザーも増えた。トヨタは急遽、対応を迫られた。
そこでわずか2年間でダイハツに開発させたのがルーミーだ。軽自動車で販売の好調なスーパーハイトワゴンを小型車のサイズで作り上げた。
ただし当時はライズから採用を開始した新しいプラットフォームが開発途上にあり、エンジンを含めて、メカニズムの大半をパッソから流用している。ルーミーの車両重量はパッソよりも約200kg重いから、走行安定性や乗り心地では不利になった。前述のとおりN-BOXと比べても、さまざまな機能に粗さが目立つ。
それでもルーミーが販売面で成功したのは、開発期間が乏しいこともあり、N-BOXやタントの特徴をほぼ忠実に再現したからだ。小型車だからカッコよくしようと考えて、ピラー(柱)を寝かせるなど手を加えていたら、ここまでのヒットは望めなかったかも知れない。
ルーミーは大量に売られるだけあって、日常生活のなかで使いやすい実用的なツールだが、ライバル車のソリオ、軽自動車のN-BOX/スペーシア/タント/ルークスなどと比べて選ぶのがいいだろう。一見すると皆同じように見えるが、各車とも工夫を凝らしているからだ。
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