実は「右ウインカー」だった輸入車も過去には存在
しかし、JISに従って右ウインカー、左ワイパーとしている輸入車も少数ながらあり、筆者の記憶では以下のような例があった。
【1990年代後半~2000年代前半】
●サターンの右ハンドル車
●キャデラックセビルの5代目モデル
(同車はシートやペダルといったドライビングポジションを日本人向けに、当時のセルシオやシーマに対抗すべくバンパーを変えて全長を5m以下に、ディスプレイの表記をカタカナに、価格は500万円台と、日本市場への対応を非常に入念に行っていた)
【2000年代以降】
●燃料電池車ネッソ、ヒュンダイ車全般
●2013年からフォードの日本撤退まで販売された3代目フォーカス
(日本仕様がタイ国生産車だったためという事情もあるが)
しかし、「では、ウインカーとワイパーを移設するという日本市場対応をした輸入車が成功したのか?」となると、皮肉なことにキャデラックセビルの5代目モデルがまずまず成功したくらいで、この点は「大勢には影響なく、セビル以外は鳴かず飛ばずに終わった。結局はクルマ自体の魅力や商品力の方が重要」というのが率直な印象だ。
また、近年のメルセデスベンツやテスラの右側にあるコラムシフトもISOに従って左ウインカーだ。
そのため右ウインカーの日本車に乗った後だと、うっかりコラムシフトをウインカーと間違って、左にウインカーを出す左折の際にコラムシフトがニュートラルに入って失速……ということも稀にある。これはちょっとややこしい話ではある。
日本車が「左ウインカー」になる可能性はあるのか?
これは筆者の見解となるが、その可能性はゼロだろう。というのも、日本車は前述したようにJIS、ISOそれぞれへの対応体制が整っていることに加え、右ハンドルならJISの右ウインカーは合理的で、日本人はJISに慣れている、など、今さらISOに変えるほうが混乱を招くことにもなり得て、メリットは皆無だと思う。
なお、日本でクルマに乗る際のウインカーとワイパーのJISとISOへの対応だが、筆者のように自動車メディアで働いていても、取材現場に日本仕様の日本車と輸入車があると、ワイパーとウインカーを間違うということは珍しくない。
しかし、人間の適応能力というのも大したもので、特にクルマに対して興味がなく、輸入車から日本車に乗り換えたことがある筆者の母や叔母でも、その際にはすぐに慣れており、大した問題ではないと思っていい。
そう考えると、日本仕様の日本車はJIS規格に準じ、輸入車は基本的にISOという現状は、無難な落としどころといえるのではないだろうか。
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