広さ重視ならヴェゼルやカローラクロスも一考
非常に多くのユーザーを満足させてくれるヤリスクロスだが、使い方によっては気になる点も出てくる。
まずは、全長4180mm、ホイールベース2560mmという大きさだ。ベースとなっているヤリスと比べ、全長は240mm長くなっているのだが、ホイールベースは、わずか10mmの拡大にとどまる。コンパクトSUVだからと言ってしまえばそこまでだが、ヤリスとほぼ同じホイールベースでは、室内スペースが苦しい。
特にヤリスクロスでは、前席とラゲッジスペースを広く作っている。そのため、短いホイールベースの影響で、後席スペースがかなり狭くなっている印象だ。
特に、後席足元の空間はヤリスとほぼ同等である。ヒップポイントが高まっているぶん、着座姿勢は幾分か改善されてはいるが、ロングドライブとなると、後席に押し込められたパッセンジャーは苦しい。
この点では、キックスやヴェゼルのほうが、後席の快適性は高い。
常時2名乗車で、後席を使用する頻度が高くないという場合には、ヤリスクロスが良い。しかし、常時3~4名での乗車になり、後席を使用する機会が多い場合には、ヤリスクロスから車格を一つ上げることをおすすめする。どうしても同サイズのSUVで検討する場合には、後席空間に余裕があるのライズがいいだろう。
実際に販売店では、ヤリスクロスからライズに検討車種を変更するユーザーも多いと聞く。
2021年9月にはカローラクロスが登場し、SUV市場はさらに熱を帯びる。特にリアシートの快適性を重視するユーザーは、ヤリスクロスよりも、カローラクロスの登場を待ったほうがいいかもしれない。
単身or夫婦のみなら大満足! 子どもの年齢次第では要注意
爆発的人気のヤリスクロスについて、販売店で実際のオーナーの声を聞いてみた。その中からは、これからヤリスクロスを選ぶうえで、気を付けたいポイントが見えてくる。
実際にヤリスクロスを所有するオーナーの多くは、単身者や夫婦のみの世帯が多かった。まだ子供がいない夫婦、もしくは子育てを終え、子供が独立していった中高年夫婦が多い。この夫婦のみ世帯に、もし子どもと乗るときにヤリスクロスを選ぶか聞いてみると次のような答えが返ってきた。
「チャイルドシートを積み込むのも大変そうだし、ベビーカーもと考えると、新生児から4、5才くらいまでは、ヤリスクロスでは狭そう。就学してから小学校高学年くらいまでは、耐えられそうですが、それ以上になると、一つ大きなSUVかミニバンを選ぶかな。期間限定ならば、ヤリスクロスでも十分対応はできそうですが」
販売店の営業マンも、ヤリスクロスの商談時には、聞き取りを十二分におこなう。昨年のデビュー時、大人気のまま販売を続けていると、ユーザーとクルマのミスマッチが多くなったというのだ。
なかには、一度ライズを購入し、ヤリスクロスがデビューすると乗り換え、またライズに戻ったというユーザーもいるらしい。その理由は、ライズの方が、使い勝手が格段によかったからだという。
また、検討車種をヤリスクロスから、RAV4やハリアーなど車格が上のSUVに変更する、もしくは、カローラツーリングやカローラスポーツに変えるユーザーも多いという。割合としては商談をするユーザーの1割程度だが、どちらのケースでも、後席の居住性と使い勝手が変更の決め手のようだ。
それでも、ヤリスクロスの優位点は数多くある。しかし、大人気車だからこそ、その人気の理由を冷静に分析し、自分の使い方に合っているのかを、見極める必要があるのではなかろうか。
数少ないデメリットが、自分の使い方では目立たないとわかれば、あとは出来のいいクルマを存分に楽しめばいい。人気や評判で購入するのもいいが、少し立ち止まって考える時間が、ヤリスクロス購入時には重要になるだろう。
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