売れ行きイマイチ けど激推ししたいクルマたちの「販促会議」8選

【閑話休題】「フィジカルアベイラビリティ」と「メンタルアベイラビリティ」とは?

●「手に入れやすさ」と「想起されやすさ」の違い

 ソリオのところで述べた「フィジカルアベイラビリティ」とは、「その商品をいかに簡単に手に入れられるか」ということ。

 クルマの場合は、要するに販売拠点の数が多いか少ないか、だ。

「メンタルアベイラビリティ」というのは「ブランドの想起のされやすさ」で、クルマを買おうと思った人の頭のなかに、そのブランドがパッと思い浮かぶかどうかということ。広告やプロモーション活動などが重要となる分野である。

 この2つのアベイラビリティ(可用性)をともに向上させていくことが、モノを売るうえでは重要であり、それすなわち“マーケティング”である。

■三菱・日産編

■三菱 デリカD:5

三菱 デリカD:5…登場は2007年と古いが、インパクト充分なマイナーチェンジで人気を保つ三菱のミニバン。だが直近の2021年5月は619台しか売れず ●2021年1~5月平均販売台数:1581台/月 ●2021年5月販売台数ランキング:46位
三菱 デリカD:5…登場は2007年と古いが、インパクト充分なマイナーチェンジで人気を保つ三菱のミニバン。だが直近の2021年5月は619台しか売れず ●2021年1~5月平均販売台数:1581台/月 ●2021年5月販売台数ランキング:46位

 独自の世界観を築き上げているデリカD:5は、一部ユーザーの心はガッチリつかんでいるものの、市場全体で見ると5月度の販売台数はわずか619台の46位と、いささか弱い。

 まぁ登場してからずいぶん時間がたつモデルゆえ仕方ないのだが、「悪路もイケるミニバン」という稀有なキャラから考えれば、もっと売れて然るべきである。

 デリカD:5の販売台数を増加させるには、「電気シェーバーみたい」と揶揄されてしまうことも多いフロントグリルのデザインを逆手に取り、メンタルアベイラビリティ(ブランドや商品の想起のされやすさ)を上げるのが効果的。

たしかに電気シェーバーに激似のD:5のフロントマスク。これほどまで似てるならそれを生かさない手はない。ブラウンと提携を!
たしかに電気シェーバーに激似のD:5のフロントマスク。これほどまで似てるならそれを生かさない手はない。ブラウンと提携を!

 すなわちブラウンやパナソニックなどの電気シェーバーメーカーと、大々的なタイアップ戦略を展開するのだ。

 それにより毎朝電気シェーバーでヒゲを剃る男性は、「そういえばそろそろ車検だけど、次はデリカD:5にしようかな?」などと、ヒゲを剃りながらD:5を“想起”することになるに違いない!

 タイアップの相手はパナソニックでもいいが、今となっては「モーニングレポート」のCMも懐かしいブラウンが筆者の好みだ。

●結論!→→→イメージを逆手に取れ! 電気シェーバー「ブラウン」と徹底的なタイアップ戦略を実行!!!

■三菱 エクリプスクロス

三菱 エクリプスクロス…2020年暮れのマイナーチェンジでPHEVを追加。S-AWCと併せスペック的には魅力的なのだから、もっとちゃんと「効く宣伝」をしたい! ●2021年1~5月平均販売台数:887台/月 ●2021年5月販売台数ランキング:43位
三菱 エクリプスクロス…2020年暮れのマイナーチェンジでPHEVを追加。S-AWCと併せスペック的には魅力的なのだから、もっとちゃんと「効く宣伝」をしたい! ●2021年1~5月平均販売台数:887台/月 ●2021年5月販売台数ランキング:43位

 国産SUVのなかではトップクラスの4WD性能を誇り、2020年12月には大幅改良を行ってプラグインハイブリッドも追加したエクリプスクロス。

 が、売れゆきはどうにもいまひとつで、今年1~5月の単月販売台数順位は「48位→49位→47位→46位→43位」と低迷している。ヨンクのSUVとしてはピカイチに近いのに、もったいない話である。

 この状況に対して三菱が打っている手は「スペシャルサイト内での、人気Youtuberや三菱自動車社員による体当たりチャレンジ動画の配信」。……拝見したが、残念ながらエクリプスクロスという優れたSUVのイメージ向上に寄与するところまではいっていないように思えた。

4WDは車両統合制御システム「S-AWC」搭載。’20年12月に大幅改良を行ったが、その後の平均月販は887台と苦戦中
4WDは車両統合制御システム「S-AWC」搭載。’20年12月に大幅改良を行ったが、その後の平均月販は887台と苦戦中

 ここはひとつ、あのテの「動画」ではなく、思い切って「映画」に出資すべきだろう(Netflixでも可)。タイトルはズバリ『私をスキーに連れてって─令和版─』だ。いや、スキーではなくスノボのほうがいいかもしれない。

 主演は母になった原田知世と、その娘 さくら(のん)。原田知世とのんがエクリプスクロスの主たる購買層である中年男性と一部青年のハートを鷲掴みにする(少なくとも筆者は鷲掴みされる)。

 そして雪原にて、セリカGT-FOURではなくエクリプスクロスが「優秀なヨンクがある歓び」をアピールするのだ。さあ今すぐ令和版『私をスノボに連れてって』を製作だ!

●結論!→→→ 映画またはNetflixで『私をスキー(スノボ)に連れてって』の令和版製作に全面協力せよ!

※編集部註:大目に見てください。

■日産 キックス

日産 キックス…海外では2016年から販売されていたが日本では2020年6月に発売。日本仕様のパワーユニットは全車「e-POWER」 ●2021年1~5月平均販売台数:3712台/月 ●2021年5月販売台数ランキング:20位
日産 キックス…海外では2016年から販売されていたが日本では2020年6月に発売。日本仕様のパワーユニットは全車「e-POWER」 ●2021年1~5月平均販売台数:3712台/月 ●2021年5月販売台数ランキング:20位

 ジュークの後釜として登場したコンパクトSUVであるキックスは、日本仕様のパワートレーンはe-POWERであるものの、「車台が新興国向けの安いやつである」「内装の質感がとにかくチープだ」みたいな感じで、いまひとつ支持を得られず、販売ランキングは20~27位付近で伸び悩んでいる。

 だがキックスというクルマ、乗ってみればe-POWERは非常に活発であり、車内も広く、そしてチープな内装も「気を使わずガンガン使えるから逆にいい!」と感じられるものだ。

 そういった、いい意味でのチープ系SUVであるにもかかわらず、日産公式の動画CMなどでは妙に高級感というか先進性のようなイメージを訴求しているため、実態とイメージの間にミスマッチが起きているように思える。

キックスの内装はパッと見、まあまあ豪華だが、よく見るとチープ。ならばいっそ「完全なチープシック」に変えたほうがいい!
キックスの内装はパッと見、まあまあ豪華だが、よく見るとチープ。ならばいっそ「完全なチープシック」に変えたほうがいい!

 ならばここはひとつ、日産 キックスは「高級感」「先進性」的なワードはNGにして、「庶民や若者のためのガンガン使えるSUV!」という路線に移行したい(ついでに車両価格も30万円ほど下げれば言うことナシ!)。

 で、CMはおしゃれなイケメンに運転させるのではなく、『じゃりン子チエ』あるいは『ど根性ガエル』などのアニメーションの権利を買って使用し、「猥雑な庶民だからこその、カッコつけず、ざっくばらんに生きることの歓び」を強く訴求するのだ。そうすればランキング10位圏内は確実に見えてくる(ハズ)。

●結論!→→→中途半端な高級感の訴求は即刻やめ!「庶民派街道」を突っ走れ!!!

■日産 スカイライン

日産 スカイライン…2013年に登場した13代目スカイライン。マイチェンやV6ツインターボ「400R」の追加などで頑張っているが、売れず ●2021年1~5月平均販売台数:323台/月 ●2021年5月販売台数ランキング:TOP50圏外
日産 スカイライン…2013年に登場した13代目スカイライン。マイチェンやV6ツインターボ「400R」の追加などで頑張っているが、売れず ●2021年1~5月平均販売台数:323台/月 ●2021年5月販売台数ランキング:TOP50圏外

 日本経済新聞の「日産はスカイラインの新規開発を中止する」との報道に対し、日産の星野副社長は「日産自動車は決してスカイラインを諦めません」と否定したが、実際どうなるかはよくわからない。

 まぁ日産に諦めるつもりがなかったとしても、このままでは「諦めざるを得ない」という状態になるはずだ。

 そのまま永眠させてもよいように思える(失礼!)スカイラインブランドだが、もし起死回生の一撃を放つとしたら、「令和のR32GTS-tタイプM」を作るしかない。

 つまり超ハイパワーじゃなくてぜんぜん構わないので「小ぶりで小気味いい動きをするスカイライン」の令和版を作るのだ。あまり数は出ないはずだが、少なくともおじさん各位は狂喜乱舞する。

●結論!→→→ 「R32 GTS-tタイプM」の令和版を作り、オヤジたちの心に火をつけろ!

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