走ってない人は注意!? チョイ乗りはなぜクルマによくないのか?

走ってない人は注意!? チョイ乗りはなぜクルマによくないのか?

 コロナ禍による緊急事態宣言などによって、最近も相変わらず遠出ができていない人が多いのではないだろうか。最近はクルマに乗る機会も減って、乗っても近所へのチョイ乗りばかりというケースも増えていそうだ。

 その“チョイ乗り”、クルマにとってシビアな使い方といわれるが、どのように厳しいものなのか。チョイ乗りはなぜクルマに悪影響があって、どういうところに不具合が出るのだろうか?

文/鈴木伸一
写真/AdobeStock、ベストカー編集部

【画像ギャラリー】ついついやってしまう「チョイ乗り」。実はクルマに相当負担かかってます


「シビアコンディション」は点検項目が違ってくる

 はやり病で外出も思うようにならない昨今、愛車に乗るにしても近くへの買い物が主体となりがちなことと思う。このような「エンジンが温まらないうちに帰ってくる」走り方、いわゆる「チョイ乗り」。これはクルマへの負担が大きいので注意したい。

近所のコンビニもついついクルマで行ってしまう。そんなチョイ乗りを多用すると、愛車のコンディション維持にも影響を与え、シビアコンディションでの整備がマストになってしまう場合もある
近所のコンビニもついついクルマで行ってしまう。そんなチョイ乗りを多用すると、愛車のコンディション維持にも影響を与え、シビアコンディションでの整備がマストになってしまう場合もある

 メンテナンスノートや点検記録簿に記載されている定期点検における点検項目は、クルマの利用状況によって違ってくる。平坦路や一定速度での走行といった標準的な使用を想定した「ノーマルコンディション」のほかに、「シビアコンディション」と呼ばれるクルマにとってより厳しい使用状況が設定されているのだ。

 消耗パーツや油脂類の劣化が早まるからで、「12カ月点検」では全26項目設定されているうちの11項目が「シビアコンディション」における点検項目で、「ノーマルコンディション」ならそれを省略した15項目でOK(ただし、前回の点検を行っている場合に限る)とされている。

 車検時に行う「24カ月点検」の点検項目は12カ月点検+30項目の全56項目と多くなるが、「シビアコンディション」でなければその内18項目を省略できる。

 また、カーメーカー指定のエンジンオイルの交換サイクルも「シビアコンディション」だった場合、通常の半分の走行距離となる。

シビアコンディションに該当する乗り方とはどの様な場合なのか?

 では、どのようなケースがその「シビアコンディション」に該当するのかというと、以下のいずれかの状況が「走行距離の30%以上」だった場合とされている。

①悪路(凹凸路、砂利道、雪道、未舗装路)での走行が多い(条件の目安:突き上げ感を感じる荒れた路面/石をはね上げたり、わだち等により下廻りを当てたりする機会の多い路面/ホコリの多い路面)。

悪路走行や山坂道走行、また高地走行などはエンジンに負荷をかけるため、走行距離の30%を占めると、シビアコンディションに該当することになる
悪路走行や山坂道走行、また高地走行などはエンジンに負荷をかけるため、走行距離の30%を占めると、シビアコンディションに該当することになる

②走行距離が多い(条件の目安:年間2万km以上、走行する場合)。
③坂山道、登降坂路での走行が多い(条件の目安:登り下りが多く、ブレーキの使用回数が多い)。
④高地走行が多い(高度2000m以上の走行が多い場合)。
⑤短距離走行の繰返し(条件の目安:1回の走行距離が8km以下が多い場合)。
⑥低速走行の繰返し(条件の目安:20km/h以下の走行が多い場合)。

 以上で、①~④に関しては、誰しも納得できると思う。問題は近所への買い物程度の走りに該当する⑤と⑥。つまり、「チョイ乗り」も「シビアコンディション」に該当するのだ。

チョイ乗りはエンジンのあらゆる部分に大きな負担をかけてしまう乗り方だ

 では、「チョイ乗り」を繰り返すとどのような悪影響があるのか?

 冬の寒気に晒されると身体は縮こまり、夏の暑さに見舞われれば汗をかいてグッタリと、快適に過ごせる温度は限られる。これは機械物も同様で、スムーズかつ快適に動作できる「適温」というものがある。

 クルマのエンジンなら冷却水の温度で80~90℃の範囲で、昭和モデルの車両では走り出す前の儀式として、「水温が上がるまでアイドリングさせる暖気運転」が必須であった。

 しかし、電子制御燃料噴射による燃料供給が一般的な現代のクルマは、コンピューターが燃焼状態をチェックすることで常に最適な混合気を供給してくれる。このため、エンジン始動後、すぐ走り出してもOKで、無理な負荷をかけることなくゆったり走らせることが暖機運転の代わりとなる。

かつてのクルマは水温が上がるまでの暖機運転が必要だったが、現在のクルマはコンピューターが自動調整してくれるおかげで、始動直後に低負荷状態で走れば、何の問題もない
かつてのクルマは水温が上がるまでの暖機運転が必要だったが、現在のクルマはコンピューターが自動調整してくれるおかげで、始動直後に低負荷状態で走れば、何の問題もない

 ところが、チョイ乗りは、その暖機運転が終わる前にエンジンを止めたり、暖まる前に無理な加速をするなど、エンジンへの負担が大きい走り方になりやすいのだ。

 例えば、冷却水が適温まで暖まらないとエンジン内部の各部が熱膨張を考慮した適正なクリアランス(隙間)とならないため、無理に回そうとしても回転が重く、異音を発したりする。無闇に回転を上げれば摺動面(金属が擦れ合っている面)にダメージを与える可能性もある。

 さらに、エンジンオイルは適温になるまでに内部に貯まった水分(結露)が蒸発しきれず、これが原因でスラッジが発生。エンジンオイルには燃焼室から吹き抜けたガスも混ざり込むが、エンジンが充分に暖まって燃焼が安定する前に止めてしまうと未燃焼の汚れたガスが混入しやすくなる。このため、チョイ乗りの繰り返しはオイルを劣化させやすいのだ。

チョイ乗りの繰り返しは、スラッジ(エンジン内の燃えカス)や未燃焼のガスがオイルへ混入リスクを高める。混入した異物はオイル劣化を早めてしまう(Piotr@AdobeStock)
チョイ乗りの繰り返しは、スラッジ(エンジン内の燃えカス)や未燃焼のガスがオイルへ混入リスクを高める。混入した異物はオイル劣化を早めてしまう(Piotr@AdobeStock)

 また、スターターモーターには回転時80A以上の大電流が流れるため、大容量接点のマグネットスイッチを介してON/OFFされている。が、それでも瞬間的に高圧電流が流れるため焼損しやすく、時とともに電気が流れにくくなってくる。

 目に見える症状としてはバッテリー上がりに似たような症状を呈するようになるが、始動・停止を繰り返すほどに接点が焼損。導通不良を起こし、回りにくくなってくる。

チョイ乗りではバッテリーに充分な充電も行えず、充電量を上回る電力を使用してしまい、バッテリー上がりを起こしたり、寿命を短くしてしまう恐れがある(hanack@AdobeStock)
チョイ乗りではバッテリーに充分な充電も行えず、充電量を上回る電力を使用してしまい、バッテリー上がりを起こしたり、寿命を短くしてしまう恐れがある(hanack@AdobeStock)

 当然、バッテリーへの負担もより高くなる。走る距離が短いためバッテリーへの充電量(エンジンが回っている時、充電も行われる)が不足ぎみとなり、バッテリー上がりを起こしやすくもなる。

 走行距離に対して始動回数が多くなるチョイ乗り主体の走りは、長い目でみればそのようなトラブルにも見舞われやすいのだ。

次ページは : ハイブリッド車はチョイ乗りには強いが、燃費の悪化は避けられない

PR:かんたん5分! 自動車保険を今すぐ見積もり ≫

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす ≫

最新号

JMS2025に出なかった大物たちの行方は?最新の注目車対決10番勝負『ベストカー12.26号発売!』

JMS2025に出なかった大物たちの行方は?最新の注目車対決10番勝負『ベストカー12.26号発売!』

ベストカー12.26号 価格590円 (税込み)  あの「ジャパンモビリティショー2025…