クルマには多くの油脂類が使われているが、最も代表的かつ身近な存在がエンジンオイルと言っていいだろう。
エンジンオイルは人間でいうところの血液に匹敵すると表現されているとおり、オイルの劣化は諸悪の根源となる可能性が高いのでケアが必要だ。
エンジンオイルの交換は自分で作業する人は少ないけど、エンジンオイルは自動車ユーザーの間で今も昔も関心、注目の高い話題のひとつである。
当記事では疑問や間違いも多いエンジンオイルに関する知っておきたいマメ知識と最新事情を紹介する。
文:永田恵一/写真:TOYOTA、ベストカー編集部、ベストカーWeb編集部
メーカー純正オイルは質が低い!?
基本、非常に高レベルのスタンダートとなるのはディーラーなどでもよく使われるメーカー純正オイルだ。純正オイルは価格が安いのもあり、中には「あまりよくないもの」と認識している人も多いようだが、それはとんでもない間違いだ。
なぜかと言えば自動車メーカーがエンジンを開発する際にはエンジンオイルも部品のひとつのような扱いだ。
そのため自動車メーカーは求められる性能に対し、いくらかの幅はあるにせよエンジンオイルも合わせているうえに、クルマには保証という要素もあるだけに非常に厳しいテストも行っている。
それだけ手間が掛かっている純正オイルの性能が悪かったり、クルマとの相性が悪いということはあり得ない。
価格が安いのは生産時に使われたり、それこそディーラーという大拠点にも置かれるため消費量も多いので、大量生産となるためコストダウンが可能になるからだ。
例えばトヨタ車の0W-16や0W-20といった純正エンジンオイルのベースオイルはクルマ好きの大好物で「高級ないいエンジンオイル」と考えられている、コストが高い全合成油だ。
もちろんエンジンオイルにこだわりがある、好きなブランドがあるというならディーラーにも置いてあるものだとトヨタのGRモーターオイルや日産のモチュールと共同開発されたNISMOスポーツオイル、○○専用エンジンオイルなどの社外品といったより高い性能や嗜好性を持つものを選ぶのもいい。
その際には、「クルマに合ったエンジンオイルを選ぶこと」が非常に重要だ。「クルマに合ったエンジンオイル」というのはエコカー向け、スポーツ車向けといった性格に加えて、特に注意して欲しいのが粘度(≒硬さ)だ。
エンジンオイルを選ぶ際には、「エンジンオイルは○W-××と表現される粘度が高いほうがいいもの」というイメージのある人もいるかもしれないが、これも大きな間違いだ。
「粘度が高いオイルは熱に強いからいいもの」と考えがちで、それは正しいところもある。
しかし粘度が高過ぎるオイルは摩擦抵抗の増加による燃費の悪化や冬場の朝一発目などのエンジンの掛かりが悪くなるなどの弊害も考えられる。
さらに「熱に強いからサーキット走行などの高負荷時に安心」というのも、抵抗が大きいため摩擦が増えエンジンオイルの油温がかえって上がりがちになることもある。
またクルマというかエンジンオイルの流れる経路の形状によっては、粘度が高いエンジンオイルだと硬いためにエンジンオイルが循環しにくくなってトラブルの原因になるという場合もあると聞く。
といった要素を考えるとエンジンオイルの粘度はクルマの指定と違うものにするのはチューニングでも行っていない限りはあまり勧められない、自己責任に近い行為だ。
なおそのクルマの指定となるエンジンオイルの粘度は取扱説明書の後ろのほうに出ている「サービスデータ」などという項目に記載されており、いくつかの粘度に対応していることが多い。
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