新型GR86&BRZの6速ATに試乗! 国産スポーツのATに足りないものとは

■2ペダルのDCTを搭載するGT-RとNSX

生産終了が決まったホンダNSXと生産が続けられている日産GT-R
生産終了が決まったホンダNSXと生産が続けられている日産GT-R

 様々な制約を解放したスポーツAT(厳密にいえば2ペダルMT)といえば、国産車では日産GT-RとホンダNSXを忘れてはならない。MTモデルがそもそも存在せず、2ペダル一本でいくという体制だった2台だ。

 かつてGT-Rの開発陣は500馬力級のクルマをMTにするなど危険すぎると判断したと語っていたことを思い出す。それが本当の理由だったか否かは定かではないが、たしかにハイスピードを達成する状況で駆動が途切れれば危険。3ペダルで乗りこなすのは難しすぎるというのも理解できる。

 結果として、こうした考えがあって誕生した2台は、ざっくりいえばともにデュアルクラッチトランスミッションを搭載するモデルとなった。

 奇数段と具数段ギアに対してそれぞれクラッチを持たせ、交互にクラッチが締結されることで駆動の途切れもスリップもなく加速を重ねるというシステムだ。

 トルクコンバーターを持たないことから、2ペダルMTなどとも称されるが、その仕上がりはともにアクセルに対するダイレクト感がかなり高く、きめ細やかなアクセル操作に対しても反応。車両姿勢のコントロール性はピカイチといっていい。

 ともに今回新型GR86&BRZが搭載したスポーツATの考え方はすでに搭載されており、パドルを弾かずともクルマ側が最適なギアを選択することも可能としている。

 加えてスタンディングスタートを最も効率よく行うことが可能なローンチコントロールをともに装備していることも究極かもしれない。

 定められた設定を行ない、左足でブレーキを目一杯踏み込んだ状態でアクセルを全開にすると、エンジン回転を引き上げたうえでスタンバイ。ブレーキを解除した瞬間にロケットスタートが可能となる。

 トルクコンバーター搭載モデルでも、ある程度は似たようなことが可能だが、駆動がかかり続けた状態を無理やりブレーキで止めている状況。デュアルクラッチ搭載モデルはクラッチをフリーにした状態で回転を高めているため、フィーリングもクルマへの負荷もかなり違う。

 ウイークポイントとしてはタウンスピードにおける半クラッチ領域の制御に難しさがあることだ。トルクコンバーター式に比べれば滑らかさはなく、セッティングによってはギクシャクしがち。

 リプログラミングを繰り返すなどしてマイルドになってきたところもあるが、それは半クラッチを多用することに繋がり精神衛生上は……。

 かつて初期型のGT-Rをマイカーとし、様々なセッティング変更を繰り返した経験があるが、結果的にはスムーズになればなるほど、スリップ感があり心地よくはなかった。

 さらに、走り込んだ結果としてミッションから異音が出た際、アッセンブリ―交換で300万円オーバーという金額提示をされたこともあった。今では対策が行われてそんなこともないらしいが、いずれにしても高価であることに変わりはない。

■秀逸なスイフトスポーツとGRスープラRZのAT

140ps/230Nmを発生する1.4Lの直列4気筒DOHC直噴ターボを搭載するスイフトスポーツ
140ps/230Nmを発生する1.4Lの直列4気筒DOHC直噴ターボを搭載するスイフトスポーツ
6速MTだけでなく専用にチューニングしたパドルシフト付きの6速ATも変速するのが楽しい
6速MTだけでなく専用にチューニングしたパドルシフト付きの6速ATも変速するのが楽しい

 だが、そんなスーパースポーツの世界に踏み込まなくても楽しめるATはまだ存在する。その筆頭がスイフトスポーツではないかと思う。こちらはトルクコンバーター式のATではあるが、エンジンとのマッチングがかなり良く、ストレスなく乗れるATということで評判もいい。MTよりもATのほうが好きだという人さえいるほどなのだ。

 好感触を得る理由はエンジンの特性だろう。カタログスペックは最高出力140ps/5500rpm、最大トルク230Nm/2500~3500rpm。レブリミットは6000回転あたりである。

 つまり、MTでエンジン回転を引っ張り切って乗るという特性ではないわけだ。ダウンサイジングターボで低回転から高過給をかける1.4Lターボは、レブリミットまで回し切ってもそれほどオイシイところはない。

 現にサーキットを走る時でも、かつては2速で走っていたようなタイトターンでも、3速で走ったほうが速かったりするほど。あまりシフトを繰り返しても仕方がないところがあったりする。おかげでATでも十分となるわけだ。

 ただ、厳密にいえば主にフロントがMTに比べて20kg重くなっているという懸念材料があることも事実。ATが軽くなってくれたらイーブンという世界に持ち込めるのかもしれない。

3L、直6ターボを搭載するスープラRZ
3L、直6ターボを搭載するスープラRZ
8速スポーツATを搭載し、パドルシフトでも変速できる
8速スポーツATを搭載し、パドルシフトでも変速できる

 さらに同様の特性を持つのはGRスープラ。3Lモデルなら最高出力387ps/5800rpm、最大トルクはなんと500Nm/1800~5000rpmを発生。搭載される8速ATは低回転からロックアップしていることもあり、コントロール性が高く、どんなに回転ドロップしたとしてもアクセルのツキを得られる仕上がりがある。

 8速という細かな刻みが爽快な加速にも繋がっているし、これはかなり心地良い仕上がり。MTの準備がそもそもないモデルだが、これならATだって十分に愉しめる。

 このようにATでもスポーツできるクルマは多く存在する。MTと併売されるクルマの場合は、若干スポーツ度が落ちることも事実。

 だが、その性能はかなり拮抗してきたというのが現状だろう。スポーツカー=MTという固定概念はそろそろ消えつつあるのかもしれない。

【画像ギャラリー】スポーツカー=MTはもう過去の話!! 国産スポーツカーのATシフトはここまで進化した!!

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