新型のGR86&BRZの6速ATモデルに試乗したモータージャーナリストの評判がすこぶるいいらしい。どれほどいいのか、凄く気になっている人も多いことだろう。
実際、6速ATの評価はどうなのか? それに加えて、今や99%がATといわれている日本において、国産スポーツカー=MTという図式が崩れつつあるなか、国産スポーツのAT車は何が優れていて、何が足りないのか? モータージャーナリストの橋本洋平氏がじっくりと見極めて解説する。
文/橋本洋平
写真/ベストカーweb編集部、トヨタ、スバル
【画像ギャラリー】スポーツカー=MTはもう過去の話!! 国産スポーツカーのATシフトはここまで進化した!!
■GR86&BRZの6速ATの出来は?
そもそもATのメリットはイージードライブであるということが第一に挙げられるだろう。坂道発進もエンストも無縁となれば、誰だってスポーツカーを運転できてしまう。スポーツカーとして嬉しいところはそれだけじゃなく、クラッチを踏まなくて良いために駆動が途切れないというメリットも存在する。
余談ではあるがつい先日、ミニチャレンジカップというMTとATが混走するレースに出てきたのだが、スタンディングスタートでは筆者が乗っていたATは、MTよりも素早くスタートするだけでなく、シフトアップの度に距離が離れて行くことをまじまじと体験した。
すなわち、MTがシフトアップをしようとクラッチを切る度に差が広がるというわけだ。乗っていたATはトルクコンバーターを備えるタイプであり、スリップロスが懸念されるとよく言われるのだが、滑りを減らすためにロックアップ領域を拡大するなどの工夫によってみるみるATは良くなっていることを体感できたのだ。
新型GR86&BRZに搭載されるATも進化を果たした。主にスポーツモードの改良が目玉だ。これは加速側では最速タイムを叩き出すことが可能なようにシフトタイミングを設定しており、レブリミットギリギリでシフトアップを繰り返す。
ロックアップ領域もかなり広く、スリップしている感覚は薄い。一方で減速側は減速Gに合わせたシフトダウンを繰り返し、エンジンブレーキを使えるように高回転をキープ。
コーナー脱出側では最適なギアを選択し続け、素早い加速を続けてくれるという制御だ。パドルを使わず全てをおまかせ制御で走ったとしても軽快に走れる! そこが新型の良さだ。
印象を良くしたのはそれだけじゃない。エンジンが2.4Lへと拡大され、最大トルク250Nm/3700rpmを発生することになったこともATとのマッチングを良くしたと感じられる。旧型の2Lモデルは最大トルク205Nm/6400~6600rpmというスペックで、高回転を維持しなければアクセルのツキが得られないという状況だった。
そこに前述した制御が加わるのだから好感触になるのも当然の流れだろう。回転がドロップしたとしても、アクセルで蹴り出す感覚を味わえる。FRの醍醐味が得やすくなったのは間違いない。
ただし、MTモデルと比較試乗したうえで判断すると、やや物足りない部分があることも事実。実はこのAT本体は旧型のキャリーオーバーであり、ギアのステップ比は旧型と同様、2速と3速とが離れており、4速で直結を迎える。
MTは5速で直結状態となり、それまでを細かく刻んでいるのだから爽快で当然。ATは刻みが荒く、それすなわち回転ドロップが大きくなることから、爽快さがスポイルされるのも仕方がないところだ。
また、新型はトルクが低回転から得られること、そして燃費を達成しようという狙いもあったのだろうが、ファイナルギアを旧型から変更してしまった。具体的にいえば4.100から3.909となったのだ。
そのせいなのか、はたまたギアのステップ比のせいか、高回転は維持しにくくなり、試乗した袖ケ浦フォレストレースウェイでは回転のドロップが気になった。MTに比べればスライドコントロールの自由度は低いなど、まだまだMTにおよばないところが存在する。
気持ち良く仕上がってきたが、ギアのステップ比を見直すか、ファイナル変更がスポーツ走行という観点から見れば欲しいところ。
これまた余談ではあるが、かつてATモデルに旧型86後期のファイナル4.300(ちなみに新型MTのファイナルは4.100)を搭載した旧型86のチューニングカーに試乗したことがあるが、それはMT並みの爽快な走りを実現。MTの必要性を考えさせられるほどだった。様々な制約を解き放つとこれほどまでにATは元気になるのかと痛感させられる一台だった。
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