毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はトヨタ ウィッシュ(2003-2017)をご紹介します。
文/伊達軍曹 写真/TOYOTA
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■ホンダのお株を奪い大ヒット!? ストリームと寸分違わぬサイズで登場したウィッシュ
「ミニバンとしてのユーティリティ性と、セダンに匹敵する走行性能を備えた車」という完全なる新機軸で2000年に登場した、初代ホンダ ストリーム。
そんなストリームと寸分たがわぬボディサイズとコンセプトを伴って2003年に登場し、モデルチェンジを経て2017年まで販売。
しかし時代の変化――つまりハイルーフタイプのミニバンが主流になったことと、SUVが台頭したこと――により、その使命を終えた低床ロールーフミニバン。
それが、トヨタ ウィッシュです。
初代トヨタ ウィッシュは、まずは2002年秋の第36回 東京モーターショーに参考出品され、そのまま翌2003年1月、正式発売された5ナンバーサイズの3列シート車です。
中型セダンであるプレミオ/アリオンのプラットフォームを延長し、そこに1.8L「1ZZ-FE」エンジンと電子制御4速AT「Super ECT」を組み合わせています(※2003年4月には2Lエンジン+CVTを追加)。
ボディサイズは全長4550mm×全幅1695mm×全高1590mmと、先行して2000年10月から販売されている初代ホンダ ストリームとミリ単位でまったく同じ。
ただしホイールベースは、初代ウィッシュのほうが30mm長い数値となっていました。
195mmのスライド機構を持つセカンドシートは左右分割式で、座面跳ね上げ式のダブルフォールディングが可能。サードシートは、シートバックを倒す操作に連動して座面が沈み込む仕組み。各シートを格納することでフラットな荷室を作ることができました。
7人乗車時の荷室容量は144Lですがが、5人乗車の場合は470Lで、ゴルフバッグ4つを収容可能。また2列目をフォールディングして助手席シートバックを前に倒せば、最大2790mmの長尺物も運べるという設計でした。
そんな初代トヨタ ウィッシュは、このジャンルの「元祖」であった初代ホンダ ストリームよりもすべての数値がちょっとずつ良かったからか、もしくはトヨタの販売力が強力だったからなのか、またたく間に大ヒットモデルに。
このカテゴリーを発明したはずのホンダ ストリームを押しのけて「カテゴリーNo.1」の人気車となったのです。
真似された――と言っていいと思いますが――ホンダは、2003年9月のマイナーチェンジ時に「ポリシーは、あるか。」という挑戦的な(というか怒りをはらんだ)CMコピーで対抗し、2006年7月にはストリームのフルモデルチェンジを行いました。
しかしトヨタ ウィッシュもやや遅れて2009年4月、ウィッシュのフルモデルチェンジを敢行しました。
2代目のウィッシュは、目つきと顔つきこそ変わったものの、中身はほぼキープコンセプト。
2代目のストリームは意表を突いて車高を下げてきたのですが、2代目ウィッシュのボディサイズは「日本でジャストサイズであること」を念頭に、ほぼ据え置きとされました。
7人乗車時で144Lから155Lへと容積が増えた荷室は、ゴルフバッグが横向きで収納可能に。
そして6:4分割の2列目と5:5分割の3列目を倒せば、奥行き2mを超えるフラットフロアが現れるという、いかにもトヨタらしいソツのないモデルチェンジでした。
一新された1.8Lおよび2Lエンジンは排気量こそ初代と変わりませんが、出力はそれぞれ12psと3psアップ。一方で燃費は0.8~1.6km/L向上しています。
初代ではATとCVTを使い分けたトランスミッションは、2代目ではすべて7速マニュアルモード付きCVTになりました。
そんな2代目トヨタ ウィッシュは初代同様にホンダ ストリームと“抗争”を繰り広げつつ、初代ほどではありませんでしたが、それなりによく売れました。
そして2012年4月にはマイナーチェンジも受けましたが、いつの頃からかウィッシュの販売台数は低空飛行を続けるように。
その結果として2017年10月、2代目トヨタ ウィッシュの販売は終了と相成りました。
ちなみにライバルであった2代目ホンダ ストリームはひと足早い2014年11月、すでに販売終了となっていました。
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