■車両火災が1日に約10件起きている事実!
まずは念のため、消防庁による“車両火災”の定義を確認しておくと、エンジンやモーターが付いた車両やトレーラー、またこれらに積載されていたものが燃えると“車両火災”にカウントされることになっている。
ゴミ収集車のゴミから出火というケースや、新幹線が放火されたというのも“車両火災”だ。一方、車庫にあるクルマが燃えた、というケースでは“建物火災”とカウントされ、“車両火災”にはならない。
ここで、消防庁による最新の『消防白書』(令和2年版)の「令和2年(1~12月)における火災の状況(確定値)」で、車両火災の統計を見てみたい。
令和2(2020)年に、車両火災は3453件発生し、死亡者は90名。つまり日本中で1日に10件弱の車両火災が発生している計算となる。車両火災の死者というのは放火自殺が多く、令和元年は死亡者数102人に対し放火自殺者等は60人と約6割を占めた。
また、令和元年の車両損害額は18億1610万円。単純に車両損害額を火災発生件数で割ると、一件あたりの損害額は50.7万円となる。
令和2年の車両火災の「出火原因」を見てみると、ワースト3は、排気管(552件、16.0%)、交通機関内配線(306件、8.9%)、電気機器(266件、7.7%)となっており、やはり燃料・排気系と電気系トラブルが出火原因の多くを占めている。これは、ガソリンなどの着火物や可燃物や、高温になったエグゾーストパイプなどが、燃えやすいものに接触したり、電気回線がショートして出火するようなパターンが多いということだ。
■フェラーリは「エンジンルームからの出火」が大半
これら消防庁の統計とは別に、消費者庁の『事故情報データバンクシステム』や、国土交通省の『自動車のリコール・不具合情報』では、メーカー別の車両火災情報を見ることができる。
フェラーリF40の火災事故は、ここにも3件登録されており、その希少性から考えても、イメージ通り燃えやすいクルマなのだと思われる。データベースに登録されているフェラーリの火災情報は、全期間(約10年間?)において20件。いずれも人的被害はなかった。車種別でみると、20件中、360系が5件、F40と456GTがそれぞれ3件とやや多くなっている。
一番新しい事案は、2018年6月に発生した430スパイダー、2005年式、走行距離1万7500kmの車両の火災だ。スパイダーの幌を作動させる油圧パイプが熱に弱いため、エンジンルームの熱で破損し、漏れた油が排気管にかかって炎上したというものだ。この車両は、2009年に発表されたリコール作業が未実施だったために事故に至ったと推定されている。
ちなみに、ランボルギーニは火災の情報登録が全期間で1件のみ。2018年7月に起きた、駐車中のアヴェンタドールから異音および黒煙が発生し、その後、出火したという事例。2012年登録、走行距離不明の個体で、社外品の電気部品の配線ショートで出火に至ったと推定されているが、原因の特定までは至らなかった。
■定説「フェラーリはよく燃える」は本当か?
ここで本題。はたしてフェラーリは他のクルマよりも燃えやすいのだろうか? ざっくりとした計算にはなってしまうが、令和2年3月末時点の保有台数に対して、消費者庁データベースに掲載された火災情報(メーカー名+「火災事故、発煙・発火・過熱」で検索)がどれだけあるかを指標として、他のメーカーのクルマと比較してみた。
■フェラーリ:保有台数 1万4770台に対し火災情報 20件
(1万台あたり13.5台)
■ポルシェ:保有台数 9万7329台に対し火災情報 33件
(1万台あたり3.4台)
■メルセデスベンツ(ダイムラー):保有台数 73万5485台に対し火災情報 21件
(1万台あたり0.3台)
■トヨタ:保有台数 2126万4688台に対し火災情報 1473件
(1万台あたり0.7台)
■日産:保有台数 879万5148台に対し火災情報 1019件
(1万台あたり1.2台)
■ホンダ:保有台数 1044万4016台に対し火災情報 772件
(1万台あたり0.7台)
■全メーカー平均:日本の四輪車全保有台数 7763万8430台に対し火災情報 1万6278件
(1万台あたり2.1台)
あくまで単純計算であり、参考程度の数字ではあるが、やはりフェラーリは他社のクルマと比較して、燃えやすいと言わざるを得ない。たとえギリギリのローンで買ったとしても、車両火災までカバーされる車両保険に入れるなど、余力は残しておきたいところだ。
筆者は小心者につき、「やっぱり車載消火器は積んでおこう」と思っている。
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