■2列シートのミニバン、ルーミーとソリオも採用
中高年齢層でも、子育て期間中にミニバンを使ってスライドドアと高い天井に慣れると、2列シートのクルマにも同様の使い勝手を求める。3列目のシートと長いボディは不要だが、スライドドアと空間効率の優れたボディは欲しい。
いわば2列シートのミニバンで、小型車ではルーミーとソリオ、その姉妹車が該当する。ルーミーは運転のしやすいコンパクトなボディ、高い天井による広い室内、スライドドアの採用によって人気を得た。
2021年1~7月の1ヵ月平均登録台数は1万3200台に達する。コンパクトカーのヤリスとSUVのヤリスクロスを異なる車種として別々に算出すると、ルーミーは小型/普通車の販売1位になる。
トヨタの販売店では、ルーミーの人気について以下のように返答した。「ルーミーはヴォクシーのようなミニバンからダウンサイジングされるお客様に加えて、ヴィッツ(現在のヤリス)などから乗り替えるお客様も多い。1人目の子供が生まれるとルーミーに乗り替える」。
そしてホンダの販売店では「ステップワゴンのお客様は、子育てを終えてフリードに乗り替えることもあるが、一足飛びにN-BOXを購入されることも多い」と述べる。
このように今はミニバンの普及開始から20年以上を経過して、背の高いボディとスライドドアの組み合わせが定着した。ミニバンを使い慣れた人達は、世代を問わず、スライドドアを備えた車種に魅力を感じる。
その結果、フリード、シエンタ、ヴォクシー、アルファードといったミニバンを含めて、販売ランキングの上位にはスライドドア装着車が豊富に並ぶ。
■スライドドアの注意点とは
便利なスライドドアを備えたクルマが好調に売れるのは理解できるが、注意点もある。筆頭に挙げられるのは子供の飛び出しだ。横開きドアは、開いた時に前方がドアパネルで塞がれるが、スライドドアは遮蔽されない。そのために乗降性も良いが、前方も含めて一気に開放されるから、子供が飛び出しやすい。
しかもスライドドアは、ドアパネルが開閉時に外側へ張り出さないから、路上駐車している時に開いても、後方の車両から認識されにくい。
この時に飛び出しがあると一層危険だ。パーキングメーターの使用も含めて、子供を同乗させている時の路上駐車は、なるべく避けたい。内側からドアを開閉できなくするチャイルドセーフティロックも用意されている。ミニバンの長所は、そのまま欠点にもなるわけだ。
このほかスライドドアの注意点として、電動開閉機能が採用されていないと、開閉に強い操作力を要することもある。特に車内に入って2列目シートに座り、スライドドアを閉めようとする時は、手首を返した姿勢になる。こういう時は電動開閉機能が欲しい。
電動機能の価格は車種によって異なるが、メーカーオプションの場合、片側が約5万円、両側では約10万円が相場だ。それでも両手で子供を抱えたり、荷物を持っている時の使い勝手を考えると、電動開閉機能は欲しいだろう。
ただしこれもユーザーによって意見が異なり、電動式は開閉に時間を要するから嫌いという人もいる。素早く乗り込んで発車したい人には、横開きのドアが適するだろう。
このほかスライドドア装着車は、横開きドアの車種に比べると、車両重量が40~60kgほど重い。電動式の採用も含めて価格も高まるので、燃費を含めて経済性でも不利になる。
デザインに与える影響も大きい。スライドドアのレールは大きな傾斜を付けられず、天井の高さも求められる。全高が1500mm以下のクルマにスライドドアを組み合わせても便利には使えない。
ルーフの部分は水平基調だから、スライドドアを装着して、プリウスのように天井が後方へ傾斜したボディスタイルに仕上げることもできない。
もっとも、スライドドアを備えた車種は、そこも考慮して魅力的にデザインされている。ムーヴキャンバスやワゴンRスマイルなど、水平基調だから柔和な雰囲気を表現できた。
スライドドア装着車には、アルファードのようなコワモテもいるが、総じて今の時代に合った安らげる雰囲気のクルマが多いように思う。その代表が軽自動車のワゴンRスマイルやムーヴキャンバスだ。
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