アイドリングストップ機構はコスト面でも操作性でもキャンセルが正解?

アイドリングストップ機構はコスト面でも操作性でもキャンセルが正解?

 信号待ちでエンジンが自動的に停まり、アクセルを吹かすと自動的にエンジンがかかり、スタートするアイドリングストップ機構。

 停車状態でエンジンを停止させることで、排気ガスの排出を発生させず、燃費向上につながるアイドリングストップ機構は2010年代以降、爆発的に普及しているが、一方で2020年2月に発売されたトヨタヤリスをはじめ、ヤリスクロス、カローラ、RAV4などのトヨタ車の一部に装備されないという流れも出てきた。

 なぜアイドリングストップ機構を装備されないのか、トヨタの見解は、「非装備されない車種はTNGAエンジンを採用しており、アイドリングストップ機構がなくても充分競合性があるため採用していない」とのことだった。

 そもそもアイドリングストップ車用の12Vバッテリーは寿命が短いうえに値段が高いといわれている。元を取るのが難しく、燃費やCO2をなるべく出さないほうがいいのか、バッテリー交換のサイクルが短いためバッテリーの消費を増やすほうがいいのか、モータージャーナリストの高根英幸氏が解説する。

文/高根英幸
写真/Adobe Stcok、ベストカーweb編集部

【画像ギャラリー】販売台数トップの「あのクルマ」もアイドリングストップ非装着ってマジ??


■アイドリングストップ機能は善か悪か

ダイハツタントのアイドリングストップ機構の解説(出典:ダイハツ)
ダイハツタントのアイドリングストップ機構の解説(出典:ダイハツ)
再スタートは瞬時にエンジンがかかり、スムーズに発進する(出典:ダイハツ)
再スタートは瞬時にエンジンがかかり、スムーズに発進する(出典:ダイハツ)

 エンジン車のアイドリングは、排気量にもよるが1分間に12ccから20cc程度のガソリンを消費するといわれている。環境省では普通乗用車の10分間のアイドリング時の燃料消費量は0.14Lで、毎日1時間アイドリングストップをした場合だと年間で約310L、3万円の燃料代が節約できると公表している。

 踏み切りや大きな交差点など、通過待ちの時間が一定以上長い場合は、アイドリングを停止させたほうが燃費は向上する。

 燃料消費率は、エンジンや変速機の組み合せによって様々に変化する。Dレンジにシフトしたままのアイドリング状態では、トルクコンバーターによりストールしてATを抵抗とすることで負荷が高まり、エンジン回転がドロップして、若干燃焼消費率が向上するケースが少なくない。

 ただしエアコンのコンプレッサーが回っている状態では、さらに負荷が高まるのでアイドリングを維持するために燃料消費率が悪化する。このあたりは微妙なバランスなので、季節や温度設定、風量によっても変わってくるのでケースバイケースとしか言えない部分だ。

 CO2の排出量に関しては、環境省によればアイドリング10分間あたりのCO2排出量は90gだから、地球温暖化対策の観点からいえば当然アイドリングストップ機構は有効だ。

 ともあれアイドリングストップは、CO2排出量削減、無駄な燃料消費を抑える手段としては有効だ。アイドリングストップ機構は、クルマが停止すると判断すればエンジンの稼動を停止し、停止中のアイドリングによる燃料消費をカットしてくれる。

 ブレーキペダルを緩めればDレンジのままでエンジンを再始動し、ブレーキペダルからアクセルペダルに踏み換えるだけで発進できるので、アイドリングストップからの再スタートの煩わしい操作を省いてくれる。

 そもそも燃費モードがJC08だった少し前までは、信号待ちなどの停止してからの発進を含むために、アイドリングストップ機構を搭載すると燃費が1割前後伸びるため、ユーザーへの印象も良く、エコカー減税を受けられやすい(と言ってもハイブリッド車と比べれば減税率は低いが)という恩恵があった。

 ところが燃費の計測基準がWLTCモードへと変わった今は、市街地モードだけでなく、郊外と高速道路での走行燃費も別々に計測し、総合的に判断されることになった。

 そのため市街地モード以外ではアイドリングストップ機構がほとんど働かないことから、燃費向上策としての機能が薄らぎ、パワーユニットや車体全体で燃費向上策を図っている最新のエコカーでは、アイドリングストップ機構のコストを燃費向上効果で回収することが難しくなったのだ。

 そうなるとアイドリングストップからの復帰となるエンジン始動が問題になる。エンジン始動時には15秒前後のアイドリング分に相当する燃料を消費するほか、バッテリーの負担は少なくない。

 エアコンの効きにも影響は出る。室温と設定温度との差が大きければ、アイドリングストップを機能させないようにする制御を組み込んでいるクルマも多いが、ある程度空調が整えば、信号待ちでエンジンは停止するので、冷房は停止してしまう。

 スズキのエネチャージやトヨタのアイドリングストップ車、ハイブリッド車には冷房時に室内へ送る空気の熱交換を行なうエバポレーターに蓄冷材を組み込んで、アイドリングストップ中にも冷気を保てるよう工夫されているが、それも装備されていないよりはマシ、という程度で長い信号待ちや渋滞では役に立つとはあまりいえないものだ。

 それにアイドリングストップ機能を実現するのは、安くない。オプション装備となっていた時代で2万~5万円ほどの価格になっていたが、これは専用バッテリーやオルタネーター、セルモーターをグレードアップする費用と専用ECUを装着する差額だ。アイドリングストップ機能を考えなければ、これらの部品を開発する費用もなくなり、車体の軽量化にも役立つ。

アルファードとロードスターのアイドリングストップのオプション価格と燃費差(ロードスターのオプション価格はi-stopとi-ELOOPの合計金額)
アルファードとロードスターのアイドリングストップのオプション価格と燃費差(ロードスターのオプション価格はi-stopとi-ELOOPの合計金額)

 車種によっても異なるが、アイドリングストップ車用のバッテリーは、非装着車用に対し、寿命は3分の2、価格は1.5倍といったところだ。

 実際、バッテリーメーカーの保証を見ると、同じバッテリーを普通に使った場合36ヵ月または10万km、アイドリングストップ装備車に使った場合は18カ月または3万kmとなっている。

 また車検毎にバッテリーを交換するようでは、燃費向上効果の恩恵はほぼ受けられない、と考えていい。バッテリーの価格が4万円だとしても、燃費でそれを取り戻すには2年間で40万円以上の燃料費を費やさなければならないからだ。

 しかもそれだけの燃料費を払ってガンガン乗り回しているユーザーであれば1回の走行距離が長い、つまり郊外や高速道路主体の乗り方が大半で、むしろアイドリングストップ機構をあまり利用していないことになる。

 普通のガソリン車でも最近は充電制御が組み込まれていて、減速時に積極的に発電する(エンジンブレーキがより利くので、ブレーキパッドの節約にもなる)ので、充電時間が短くなりがちのため、バッテリーも充電能力に優れたタイプを採用していることも多く、従来の鉛酸バッテリーより高価になっている。

 そのためバッテリーを長持ちさせることが、カーライフにおいて効果的な節約術となるほか、バッテリーのリサイクルを減らすことにもつながり、環境負荷を抑えることになるのだ。

 燃費が向上しても、バッテリーをどんどん交換しているようではあまり意味がないし、そもそも頻繁すぎるアイドリングストップは燃費向上効果をむしろ低下させてしまうことすらある。

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