■ドライバーの異常時対応システム「エマージェンシー・ストップ・アシスト」を試す
では、今回採用されたスーパーグレートの先進安全装備は、実際にはどのように作動するのだろうか? 早速、栃木県にある三菱ふそう喜連川研究所のテストコースでスーパーグレートに乗り込んで試してみた。
まず、「エマージェンシー・ストップ・アシスト」(ESA)だが、これはレーン・キープ・アシストが作動中であることが条件のため、まずADA2を設定する必要がある。ADA2の起動は、すでに採用されている車間距離維持機能付きクルーズコントロール「アダプティブ・クルーズ・コントロール」(ACC)をセットすればOKだ。
ACCをセットすると、ほどなくしてメーター内のディスプレイ下部に水色のハンドル(を握った手の)マークが表示され、レーン・キープ・アシストが機能したことがわかる。
レベル2の自動運転の定めに則り、レーン・キープ・アシスト中はドライバーがいつでもステアリング操作が行なえることが求められている。このためトルクセンサーを用いたハンズオン認証機能が搭載されており、検知がなされない場合は警告・警報が発せられる。
従来のADA搭載車は、手を離して15秒でディスプレイ警告、30秒後には警報音、55秒後にさらに強い警報音が鳴り、60秒後にシステムがキャンセルされるものだった。
いっぽうADA2搭載車では、ハンドルから手を離すと30秒後までの警告・警報は同じだが、55秒後の警報からハザードランプの点滅が始まり、60秒後にエアホーンがけたたましく鳴り、主ブレーキの強めの制動がかかって停止するというもの。
走行車線での停止は危険を伴うため、ブレーキ制動時にはヘッドライトやストップランプの点灯(点滅はしない)も行なわれており、ホーンの吹鳴とともにESAを解除するまでこの警報は続く。
ESAの解除はインパネスイッチのレーンキープカットスイッチを押せばOK。ただ、ニュートラル状態になっているため、再び走り出すにはセレクター操作で一度ニュートラルに入れてからドライブに入れ直す必要がある。
なお今回のESAは、ドライバーモニターによる脇見・居眠り運転などに対する警報機能「アクティブ・アテンション・アシスト」との連携はしていないので、異常時に必ず作動するといったものではない。
それでも突然の体調不良や居眠り運転に対する有効性はもちろん、ADA作動中の注意力低下や「ながら」運転に対する抑止効果という意味でも期待できる安全装備となりそうだ。
■左折時の巻き込み事故を防止する「アクティブ・サイドガード・アシスト1.0」を体感
次にスーパーグレートと自転車の模型を並走させて、途中でステアリングを左に切り、衝突被害軽減ブレーキを作動させるというASGA1.0の機能を同乗試乗で体験した。
このデモ走行では、車体左側を走る自転車(模型)との間隔は1mほど。スーパーグレートの車速は作動条件の20km/h以下で、自転車はそれよりも若干早い速度で走行する。
サイドミラーに注目していても自転車は見にくいが、ASGA1.0はしっかり対象物を捉え、左ピラーに備わったランプが黄色に点灯。並走途中で左ウインカーをつけると警告音とともにランプは赤色に変わり、さらにステアリングを左に切るとブレーキ制動がかかり自転車にぶつかる寸前で停止した。
デモを繰り返すうち数回は自転車に軽く接触することもあった。この機能はあくまでドライバーが見落とした際の被害軽減に主眼を置くもので、衝突を未然に防げるとは限らないが、それでも被害を軽減する効果は実感できた。
国交省の調べによれば、令和2年度の商用トラックが第一当事者となった死亡事故77件中、左折時の衝突事故が24.7%とダントツ(ワースト2位が駐・停車中の追突で18.2%。右折時の衝突は6.5%)で多くなっており、被害軽減にもたらす効果はかなり大きいはず。
三菱ふそうは、世界のリーディングカンパニーであるダイムラートラックの一員として、グループで先進技術を共有しており、今回のESAもASGA1.0もその賜物といえるが、日本の大型トラックが世界標準の先進安全技術を積極的に採用することは大いに好ましいことだと思う。
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