かつて大流行した「スーパーチャージャー」栄枯盛衰の事情

スーパーチャージャーの過給の仕組み

 スーパーチャージャーは、クランクシャフトからベルトなどを介してコンプレッサーを回転させ、吸気を圧縮(過給)する機械駆動式過給機です。ルーツ式とリショルム式がありますが、現在ではルーツ式が主流です。

 ルーツ式は、ドライブローター(クランクシャフトに連動して回転)とドリブンローターの一対のローターが、互いに逆回転しながら、吸入、圧縮、吐出を繰り返します。一方、リショルム式は、スクリュー式とも呼ばれ、互いに噛み合った一対の螺旋状ローターで構成され、ケースとローター間の空間が徐々に縮小され、吸入空気が圧縮、吐出されます。

日産のノートがかつて採用していたルーツ式スーパーチャージャーの作動原理。2組の2~4葉のローターを回転させて空気を圧縮(イラスト:筆者作成)
日産のノートがかつて採用していたルーツ式スーパーチャージャーの作動原理。2組の2~4葉のローターを回転させて空気を圧縮(イラスト:筆者作成)
2012年に発売されたスーパーチャージャーエンジン搭載の日産ノート。久々のスーパーチャージャーエンジンとして注目を集めた
2012年に発売されたスーパーチャージャーエンジン搭載の日産ノート。久々のスーパーチャージャーエンジンとして注目を集めた

ターボチャージャーのほうがより合理的

 ターボチャージャーは高速で高い過給圧が得られるものの、排気ガスのエネルギーが小さい低速域では過給圧が上がらず、また加速時にタービンの回転遅れによる過給遅れ(ターボラグ)があることが課題です。

 一方のスーパーチャージャーは、エンジンで直接コンプレッサーを回すので、低速域から高い過給圧が得られ、過給遅れもありません。しかし、コンプレッサーを駆動するためにエンジンに余分の駆動損失が発生します。特に駆動損失が増大する高速回転領域で出力が低下することと、燃費の悪化が、最大の課題です。また、過給を高めると騒音が発生しやすいことや、コストが高いことなどもマイナス要因です。

 本来廃棄される排気ガスの運動エネルギーの一部を回収して再利用するターボチャージャーに対して、スーパーチャージャーはシステム効率が劣ります。スーパーチャージャーが悪いというよりも、ターボチャージャーがより合理的なシステムであり、これが、スーパーチャージャーではなくターボチャージャーの採用が多い最大の原因でしょう。

ターボチャージャーは、排気エネルギーを回収して再利用するシステム。スーパーチャージャーは、エンジンで駆動するので駆動損失が発生する分、出力や燃費の面でターボチャージャーに及ばない(イラスト:筆者作成)
ターボチャージャーは、排気エネルギーを回収して再利用するシステム。スーパーチャージャーは、エンジンで駆動するので駆動損失が発生する分、出力や燃費の面でターボチャージャーに及ばない(イラスト:筆者作成)

電動スーパーチャージャーが有効かどうかは、まだ不透明

 電動化時代を迎え、欧州ではターボチャージャーのコンプレッサーをモーターで回す電動スーパーチャージャーが、メルセデスベンツやアウディなどで市販化されています。ターボチャージャーの低速域の過給不足やターボラグ、またスーパーチャージャーの駆動損失を解消することが狙いです。

 画期的な技術ではありますが、やはり課題はあります。電力消費が大きいため、中高速域で多用するとバッテリーが電欠状態になることから、現時点では使用が低速域に限られることです。そのため、電動スーパーチャージャー単独でなく、低速域は電動スーパーチャージャー、中高速域ではターボチャージャーと、双方を組み合わせたシステムで使うのが一般的です。将来有望な技術かどうかは、まだ不透明です。

メルセデスベンツ 「AMG CLS53 4MATIC+」。3L直6エンジンに48Vマイルドハイブリッドと「ターボチャージャー+電動スーパーチャージャー」を組み合わせた贅沢な仕様
メルセデスベンツ 「AMG CLS53 4MATIC+」。3L直6エンジンに48Vマイルドハイブリッドと「ターボチャージャー+電動スーパーチャージャー」を組み合わせた贅沢な仕様
ターボチャージャーのコンプレッサーをモーターで回して過給する電動スーパーチャージャー。消費電力が大きく、現在はレスポンス向上や低速域の過給のために限定的に使用(イラスト:筆者作成)
ターボチャージャーのコンプレッサーをモーターで回して過給する電動スーパーチャージャー。消費電力が大きく、現在はレスポンス向上や低速域の過給のために限定的に使用(イラスト:筆者作成)

次ページは : スーパーチャージャーの復活の可能性は低い

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