■EVは内燃機関車の2倍の二酸化炭素を排出する?
内燃機関を持つクルマは、走行時に二酸化炭素を多く出すので悪であり、電気自動車を多く作れば、CO2排出量の削減につながるという考え方は根深く残る。しかし、この考え方では、CO2排出量は減っていかない。
なぜなら、電池を搭載したBEV製造の際に発生するCO2は、内燃機関のみのクルマを製造する際に発生するCO2の2倍と言われているからだ。特に電池を作る際のCO2排出量が多く、リチウムイオン電池の総電力量が増えるほど、製造過程でのCO2の排出は増えていく。
例えばリチウムイオン電池を搭載したBEVと、クリーンディーゼル車を比較した場合、製造過程で排出されるCO2は、圧倒的にBEVが多い。製造過程で排出されたCO2をBEVは使用過程で取り戻すわけだが、そのためには、BEVが8万5000kmも走行しなければならない。
また、BEVを動かす電気を作る際にもCO2は発生する。再生可能エネルギーを使えばいいが、まだまだ化石燃料による発電に頼る国は多い。日本でも、総発電電力量に占める火力発電の割合は2020年も約75%にもなる。
BEVが脱炭素社会で活躍するのは、もう少し技術革新が進んでからになるだろう。それまでは、従来の内燃機関をベースにして、製造時のCO2排出が比較的抑えられる、ハイブリッド車が環境対策の上でも、有効性の高い手段なのである。
■「安全・長寿命・高品質・良品廉価・高性能」を満たさなければEVは作らない
トヨタは、「安全・長寿命・高品質・良品廉価・高性能」という5つの要素を高次元でバランスさせ、お客様に安心して使ってもらえるクルマを作ってきた。このスタンスは、これから先も変わらない。
筆者が販売店勤務時代、トヨタでもBEVを作らないのかと、メーカー担当者と話をしたことがあるが、当時の回答は「NO」だったのだ。クルマとしてユーザーが安心して使用できるベースがなければ、BEVを従来のクルマと同じ位置づけで販売するのは難しいというのが、トヨタの考えだったからだ。
現在もBEVに対するトヨタの目は厳しい。トヨタ・レクサスを合わせても、現行ラインナップでBEVはレクサス UX200eのみだ。5つの要素を満たす電動車は、まだHEVが最善なのであろう。
今のクルマはHEVを含め、ガソリン満タン状態で500km以上を継続的に走行でき、燃料がなくなれば、手軽に入手できる。燃料の補充にも、数分程度の時間しかかからない。さらに一度購入すれば、5~10年は元気に使用できる耐久性も備わっている。
今後、安全安心にBEVを使ってもらうために、インフラ整備に加えて、電池制御システムの拡充、バッテリーの長寿命化や電費の向上及び高品質化、電池単体のコスト目標達成など、課題は多い。
それでも待ったなしにCO2排出量を削減しなければならない未来はやってくる。現在のハイブリット技術に磨きをかけながら、2050年のカーボンニュートラルに向けて、もっといい電動車の本質的普及を目指し、トヨタは進みつづけるはずだ。
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