■フィルムに収めたトップ争い中のドーナツターン
なんと言ってもパニッツィがすごいのは、この場所が最終SSではなく、サービスを1か所はさんでSSがまだ3本残っている段階でのパフォーマンスだったということだ。
このSSのタイムはトップのバーンズから10秒7遅れの4位だったが、サービス後のSS16、SS17はベストタイム、最終SS18はトップのソルベルグの5.8秒おくれの2位のタイムで、トータル2位のバーンズに39秒の差をつけて優勝してしまう。
トップを争うドライバーがSS中にドーナツターンをやったなんて話は聞いたことない。WRCにおいて、ケン・ブロックがSS中にやったという噂は聞いたことがあるが、彼はドーナツターンのスペシャリストだ。順位に関係なくやった例はあるかもしれないが、まさにトップ争い中にやるのはすごいことだ。
ドーナツターンはエンジンやトランスミッションなどに相当な負荷がかかるので、これをやることでいつリタイヤしてもおかしくないのに、相当自信があったのだろう。
余談になるが、この時代はまだフィルムカメラでの撮影だったので、今と違いフィルム1本で36カットしか撮れなかった。またこのころのカメラは、連写が秒間5コマくらいが最速。
いまのデジカメのように秒間10コマを超えるコマ数に対応するカメラはなく、フィルムなので最大で36枚しか撮影できない時代だ。またコストも莫大で、1ラリー100本撮影すると10万円前後になってしまう。そんなわけで常にフィルムの残量を気にしながらの撮影だった。
そんな悩ましい撮影だったので、写真ではドーナツターンの途中のカットとなってしまっているが、このラリー最大の見せ場を撮影できたのはよかった。
●解説●
WRCラリーではターマック(舗装路)とグラベル(未舗装路)のコースが設定されるが、それぞれを得意とするドライバーが存在する。もちろん年間チャンピオンを獲得するには両方でポイントを獲得できるドライバーが必要になる。
ジル・パニッツイはターマックのスペシャリストとしてプジョーワークス入りを果たし、2002年はターマックのコルシカ、サンレモ、カタルニアで優勝を果たした。2004年~2005年は三菱ワークス入りを果たしてランエボを走らせており、日本のラリーファンにもおなじみのドライバーだ。
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