世界的半導体不足とコロナのダブルパンチ! トヨタなど国内メーカー納期遅延の実態とは!?

■正確な納期が読めないという状況も

2021年9月より発売されているトヨタ カローラクロス。当初は2~3カ月待ちとなっていたが、部品供給不足の影響を受け、予定に乱れが出てきたようだ
2021年9月より発売されているトヨタ カローラクロス。当初は2~3カ月待ちとなっていたが、部品供給不足の影響を受け、予定に乱れが出てきたようだ

 9月14日に正式発売となったトヨタ カローラクロスは、ウエブサイト上の“工場出荷時期目処”では、当初2~3カ月(ただしSグレードは2022年3月から生産開始予定ということもあり、半年となっている)となっていたが、後日改めて確認すると“詳しくは販売店にお問い合わせください”となっていた。

 発売後に急速に受注が積み上がったこともあるだろうが、それに部品供給遅延もあり納期が本格的に乱れ始めたように見える。販売現場で聞いたところでは、「発売と同時に本社(ディーラーの)から、グレードを問わず、納車予定は2022年3月以降との連絡がありました」との話であった。

 事前の予想通りに受注がかなり好調なペースで入っているものの、ヴェゼルの想定外の好調な販売もあるのか、長期の納期遅延となっているのに、受注を増やすようにとプレッシャーがきついとのことであった。

 なお、すでに新型アクアでも、納車時にナビキットが間に合わなくなっていたが、カローラクロスでもナビキットの供給遅延が別途記してあったので、ナビキットの生産は車両以上に混乱しているようである。

 カローラクロスについては、Sグレードを2022年3月から生産開始としているので、あとは最上級グレードのZと、廉価グレードのG系(G“X”も含む)のみが現状では生産されていることになる。

 G系はレンタカーなどのフリート販売向け仕様と見られるので、一般消費者向けでは、Xに当面は生産をかなりの割合で絞り込んでいることになるだろう。これも現状での部品不足だけでなく、新規受注が多く入ってくることによる納期遅延を少しでも押さえ込むことを狙っての生産計画のように見える。

 販売現場で話を聞くと、「カローラクロス以外の車種についても、正確なご案内ができないところが厳しい」と語ってくれた。納期遅延の案内をして、お客さんから「じゃあ、いつになるんだ」と聞かれても、正確どころか、ザックリした時期すら案内できないほど混乱しているのである。

 「トヨタのウエブサイト上の工場出荷目処は9月3日現在のものとなっています(本稿執筆タイミング)。

 ざっと見ると、1~2カ月という早めのものもありますが、9月中旬に改めてトヨタ系ディーラーで納期を聞いてみると、『現状では2~3カ月かかるとご案内し、さらに半導体やASEANからの部品供給遅延などの問題で延びることがあります、とご案内します』と話してくれました。

 2~3カ月、つまり『年内に間に合って欲しい』という希望であって、はっきりした納期が読めない状況にあるようです」と事情通は様子を説明してくれた。

 現場のセールスマンはいまの状況について、「われわれが受けとる販売マージンは、当該月に何台登録できたかで支払われる額が決まります。9月は事業年度締めでの上半期末決算セール月でしたが、店舗スタッフのほとんどが受注した車両のうち登録できたのは1台ずつでした。

 こうなると、受け取る給料はほぼ基本給に近いものとなり厳しい状況がしばらく続きそうです。仕事としては、“どのクルマが納車早いか”などと考えながら売っていられないので、とにかくお客様が希望されるクルマを販売し、受注が1台でも多くなるようにしております」と、混乱した様子を語ってくれた。

■グレードや装着オプションによって納期が前後するという現象も

発売直後のスタートダッシュにやや元気のないトヨタ アクアには際立った納期遅延はない。しかしグレードやオプションによって納期が変動する
発売直後のスタートダッシュにやや元気のないトヨタ アクアには際立った納期遅延はない。しかしグレードやオプションによって納期が変動する

 また、例えば発売直後の立ち上がりがやや元気のない新型アクアは、全体では際立って納期遅延となっていないようだが、同じアクアでもグレードや装着するオプションによって納期が変わる(より遅くなる)というのが、今回の問題の特徴となっている。

 人気のヤリス クロスは、問題が顕在化する以前から納期は半年かかるとされていた。それが、今回の問題が影響し、さらなる納期遅延となるのは間違いないというか、そのように覚悟してもらいたいと、トヨタ系ディーラーセールスマンは語っていた。

 またトヨタにとっては、今回の問題について“逃げ道”がないところも深刻となってきている。

 人気が高く受注が集中した、つまり少し前のヤリスクロスのような納期遅延車を購入希望として検討しているお客さんが納期で契約を躊躇していたら、そして仮に他車の納期がひどく遅延していなければ、「ライズやRAV4はいかがですか?」として勧めることもできる。

 だが、今回はラインナップすべてで納期が読みにくい状況(遅れている)にあるといってよいので、“逃げ道”がないのである。納期が短く、高収益が期待できるアルファードも、現場では「配車予定が2週間延長になった」と、警戒するセールスマンも目立つようだ。

 事実、再度ウエブサイト上の工場出荷時期目処をみると、やはり1カ月ほど時期が延びているのが確認できた。

 「大変だ!」と言っているだけでは新車が売れないので、例えばカローラは7月に改良を行なっているが、その改良前の在庫車があったので、そのような在庫車をお客さんに事情を説明しながら販売するケースもあるようだ。

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