世界的半導体不足とコロナのダブルパンチ! トヨタなど国内メーカー納期遅延の実態とは!?

■トヨタ以外のメーカーにチャンス!? ともいかない事情

普段はアルファードのような短納期の車種の販売を促進して販売実績を積み上げるが、全車種が遅れている現在は事情が深刻だ
普段はアルファードのような短納期の車種の販売を促進して販売実績を積み上げるが、全車種が遅れている現在は事情が深刻だ

 トヨタはコロナ禍となってから、“トヨタ一強”と言われるほど、新車販売の好調状態が続いていた。

 ヤリス クロスのような人気が高く、納期のかかるモデル(受注したけど生産が間に合わず登録申請や納車ができないクルマ=受注残車両)を半ば“貯金”として、アルファードなどの短い納期のモデルの販売促進を進め、新規販売実績を積み上げる。

 そして登録及び納車の目処のついた受注残車両をさらに販売実績として上乗せすることで、他メーカーを圧倒する販売実績を誇っていた。しかし、今回ばかりは納期の短い車種が皆無に近く、受注残ばかり積み上がってしまうことになりそうである(トヨタ以外も状況は大きく変わらないが)。

 「受注時に納期がかかるとされたクルマが急に配車されると端末に表示されましたが、すぐに削除されました。メーカーもかなり混乱しているのだなと思いました」とは現場のトヨタ系セールスマン。

 単純に納期遅延が深刻になるだけではなく、ある日突然“引き当たる(配車される)”こともあるのが、今回の問題をより複雑にしているようである。

 世界のどこの自動車メーカーでも、納期遅延に悩まされているのは同じようだが、やはり生産や販売でスケールの大きいメーカーほど影響が大きいというのも確か。

 それでは前述したように、半導体やASEANからの部品供給不足の影響をあまり受けていない日産が有利に新車販売を進められるのではないかと、日産系ディーラーセールスマンに聞いてみた。

 「それがですね。あれだけテレビなどでトヨタさんの減産などが報道され、納車まで長い間待つことがわかっているのに、トヨタ車をみなさん買われるのです。ウチは最近何かと世間をお騒がせしていましたので、まだまだイメージが良くないようです」

■遅延からの回復でのスタートダッシュが肝心

カローラクロスの遅延で、ライバル車のヴェゼルの販売が増える可能性もあるが、ヴェゼルは人気が高く納期はすでに遅れており、カローラクロスを待ったほうが早いかもしれない
カローラクロスの遅延で、ライバル車のヴェゼルの販売が増える可能性もあるが、ヴェゼルは人気が高く納期はすでに遅れており、カローラクロスを待ったほうが早いかもしれない

 ホンダとて、カローラクロスが登場したので、相乗効果で販売増も期待できるヴェゼルがあるのだが、PLaY以外のグレードの納期はすでに2022年2月や3月に、PLaYにいたっては2022年7月あたりとなっているようなので(早くてという話)、下手したらカローラクロスのほうが納車は早いかもしれない。

 前述した日産系セールスマンの、「納期遅延でも多くの人がトヨタ車を購入する」というのは、「どうせトヨタ以外のメーカー車も納期がかかるなら」という気持ちがあるのかもしれない。

 残価設定ローンの利用が増え、新車購入時にリセールバリューを意識して選ぶひとも増えているので、短期間で新車を入れ替えるひとには、トヨタ以外のディーラーから「うちはすぐ納車できますよ」と言われたとしても、魅力的に映ることはあまりないようである。

 もちろん、事情があってすぐにでも新車が欲しいというひとにとっては、納車が早いというのは大きな魅力となるだろう。日系ブランドより、海を渡ってくる外資系ブランド車(輸入車)のほうが、さらに問題が切実なものとなっているとも聞いている。

 すでに、新車ではなく高年式車の多い各メーカーの認定中古車や、未使用中古車へ流れるひとも多くなっているとの話も聞いている。

 ただ、ある意味“納期遅延慣れ(そもそも納期遅延車が多かった)”しているトヨタ以外のブランド系ディーラーで、例えばヴェゼルなら半年や1年待ちとなっているが、しっかりと納車を待っているお客を引き留め続けられるかという疑問が残る。

 受注してからの生産状況の案内など、担当セールスマンから積極的にコミュニケーションを続けないと、たちまち納期遅延が、キャンセルも含めクレームとなって大問題になってしまうからである。

 さらに、トヨタ並みといかなくとも、今後は受注残を抱えながら、新規の受注を積み上げていく、いわばトヨタ系ディーラーのような状況がトヨタ系以外のディーラーでもしばらくは続くことになる。現状の生産遅延状況は時期が未定だが、いつかは回復されるだろう。

 ただ、その回復にトヨタが乗り遅れ、他メーカーが回復ペースでリードしてしまうと、人気の高さなどもあって納期遅延となっていた車種以外は、再び即納体制が整う。

 販売台数でトヨタ以外のメーカーが逆転することはまずないだろうが、“トヨタ一強”とは言っていられないほど、トヨタにはプレッシャーがかかることも間違いないだろう。

 本稿執筆時点では、間もなくライズが1200㏄NAエンジンへの換装及び、ハイブリッド仕様の追加設定を行う改良を実施予定で予約受注活動を行っているとの情報がある。

 また年末とされているノア&ヴォクシーのフルモデルチェンジは、発表だけは予定通り年内に行われ、11月から正式な予約受注がとれる体制が整うのではないかとの情報も入っている。

 このようなことからも、おそらくトヨタの方が現状打破してリカバリーするのは早いだろう。だがもし他メーカーに出遅れるようなことがあった時、トヨタがどのような手を打ってくるかは実に興味深いところだ。 

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