2シーター軽スポーツのホンダ「S660」に続き、スーパースポーツカーであるホンダ「NSX」も生産終了を発表と、超貴重だった国産のミッドシップスポーツカーが、立て続けに姿を消してしまった。
かつては、国産メーカーでもミッドシップを採用していたモデルはいくつかあったが、現在はほぼ、フロントエンジン(フロントミッドシップという呼び方もあるが)レイアウトだ。
海外では、現在もちらほら見られるミッドシップ。なぜ国産車は、ミッドシップレイアウトのクルマが少ないのだろうか。
文/吉川賢一、写真/HONDA、SUZUKI
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■クルマ好きが憧れるパッケージング
エンジンをクルマの中央付近に配置するミッドシップレイアウトは、「サーキットを速く走る」といった、割り切った目的に対しては、理にかなったパッケージングだ。
排気量2リッタークラスのエンジンでも約200kg、3リッタークラスともなれば約300kgにもなるエンジンは、車両重心に大きく影響する。
そのエンジンが後輪に近い位置にレイアウトされることで、重量配分は後ろ寄りとなり、リアタイヤにイニシャルで荷重が多くかかるため、リアが駆動輪の場合にはトラクション性能が上がる。
また、後ろ寄りの重量配分によって、フロントセクションは軽くなるため、旋回性(旋回初期の曲がり度合い)も良くなる。
その効果(クルマ鼻先の軽さ)は、街中の交差点やカーブのようなシーンでも、十二分に体感ができ、実に爽快な気分になれる。コーナーを抜けるたびに、まるで運転が上手くなったかのようにすら感じる。
このようなミッドシップレイアウトによる効果は、走りを愛するクルマ好きにとっては、たまらないものであり、クルマ好きにとってミッドシップレイアウトは、いつの時代も憧れのパッケージングだ。
実は国産車にも、以前は、ミッドシップレイアウトのクルマが比較的散見された。
例えば、1990年登場のトヨタMR2(AW)、2代目MR2(SW)、MR-S、マツダのオートザムAZ-1、ホンダビート、初代NSX、先述した2代目NSX、S660などだ。試作車で終えた日産MID4、コンセプトカーとして登場したスズキのMRワゴン(市販型ではFFに変更)も、ミッドシップレイアウトだった。
また非スポーツカーでも、エスティマやホンダZ、アクティ、バモス、ミツビシiなども、ミッドシップだ。ちなみにリアエンジン配置だと、スバルの軽トラ・サンバーも当てはまる。だがそのほとんどは90年代のクルマであり、2022年を目前とした現在、国産車でミッドシップレイアウトのモデルは存在しない。
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