スピンで大ピンチのWRCドライバーがとった驚きの行動とは!?

全てはコンマ1秒を削るため! スピンで大ピンチのWRCドライバーがとった驚きの行動とは!?

 WRCに代表されるラリー競技は、いわゆるサーキットレースとは違い、競技区間(=SS)を1台ずつ走り、そのタイムの優劣を競うものだ。スタート地点からゴールまでをもっとも速く駆け抜けたものが勝者となる。

 マシン同士の競り合いはないものの、コンマ1秒を争ってコーナーのイン側をカットしたり、ギャップをジャンプで飛び越えるなど迫力ある走りが楽しめる。

 今回はそのコンマ1秒を削るためにドライバーがとった必死の行動をご紹介しよう!

文/佐久間 健、写真/佐久間 健、NISSAN

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■凍った路面で180度スピン! ゴールは真後ろ! その時シャトリオは!?

日産 パルサーGTI-R。日産はこの前年の1991年にWRCに復帰していた

 前回はパニッツィのSS中のドーナツターン(記事リンク)を紹介したが、今回はWRCのSS中に行われた珍しい出来事を紹介する。舞台は1992年のWRC開幕戦のモンテカルロラリー、ドライバーはフランス人のフランソワ・シャトリオ。

 彼は1989年、1990年とプロドライブのBMW M3(E30)でフランスチャンピオンとなったほかWRCではツール・ド・コルスで、このM3で2位と3位になったキャリアを持つ。

 1991年に日産がパルサーGTI-RでWRCに復帰した翌年の1992年、シャトリオは日産チームのワークスドライバーとなる。ちなみに彼のチームメイトはトミ・マキネンだ。

 さて問題のシーンだが場所はディーニュの近くのSS3で、1月末の厳冬期の山頂近くは路面がところどころアイスバーンになっている。

 まずはトヨタセリカGT-Fourのアルミン・シュバルツは無難なコーナーリングでSSをフィニッシュし、続くランチアデルタHFインテグラーレのフィリップ・ブガルスキーはハーフスピン気味にインに車体を巻き込みながらゴールへ向かう。

トヨタ セリカGT-Fourをドライブするアルミン・シュバルツは無難なコーナリングでフィニッシュ
ランチアデルタHFインテグラーレのフィリップ・ブガルスキーは大きく外に流れながらもゴールへ

 このコーナーは日陰になっており、薄っすらとアイスバーンになっているのでスピンしやすい状況だ。

 そして問題のシャトリオだが、彼は凍った路面にアンダーステアから180度のスピンをしてしまう。しかし、ここからの判断がさすがだった。進行方向の真後ろに位置するゴールに向けてバックで走り続け、パルサーを止めることなく最後の20mを走り切ったのだ。

 これにはギャラリーは大喜び! 一斉に拍手と歓声で彼を迎えたのだ。

フランソワ・シャトリオがドライブする日産 パルサーGTI-R。アイスバーンで大きくスピンし……
ほとんど後ろ向きになってしまったが、シャトリオはそのままバックでゴールに向かって疾走
ギャラリーの喝采を浴びながらゴール。ミラーで後方を確認しながら走っているのがお分かりいただけるだろうか

 シャトリオは、明らかにスピンでのタイムロスを最小限におさえた方法でゴールしたといえるが「ルール上はいいのだろうか?」と思いながら撮影した。最終的にシャトリオは総合7位のリザルトを残しているので何も問題はなかったようだ。

 前回のパニッツィのドーナツターンと今回のシャトリオのバックでのゴールは、私がWRCを取材したなかでも2度と見ることができない珍しいシーンといえるだろう。

●解説●

 サファリなどの歴史あるラリーにフェアレディZやバイオレットなどでチャレンジして実績を積んできた日産は、1991年~1992年の2年間パルサーGTI-R(海外名サニー)でWRCにワークス参戦。

 ドライバーはスティグ・ブロンクビスト、トミ・マキネン、フランソワ・シャトリオを中心にイベントごとに変更していた。

 GTI-Rのコンパクトなボディにハイパワーなエンジンという組み合わせはライバルに対してアドバンテージを持っていたが、逆に狭いエンジンルームによる冷却不足やタイヤハウスの小ささによる自由度の低さに苦しむことになった。

 最高位は1992年の第2戦スウェディッシュラリー、ブロンクビストによる3位であった。

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