■直6エンジン、FR投入、EV比率増加……ユーザーの思いは
マツダには中期経営計画の着実なる実行しかない。20年度の通期業績を見れば、パンデミックという不確定要素の中でグローバル販売台数は対前年9%減の128万7000台。売上高で前年比16%減の2兆8821億円、営業利益は88億円で、前年比80%減、当期純損失317億円という現実がある。
こうした状況も影響し、中期経営計画の達成は25年度まで1年延期された。さらにパワートレーンに関するEVも混流生産できる マツダ工場改革を急ぎ、25年にEV専用プラットフォームを導入、2030年のEV比率を25%にするというプランなど、具体的に積極策を示している。
ここに来て正念場を乗り切るための最善の打開策を本格始動させているのだ。
当然のようにマツダが示したプラットフォームの棲み分けや、EVも含めたパワートレーンの話などについて、メディアもかなり賑やかである。だが少々乱暴な言い方をすれば多くのユーザーにとってプラットフォームの話やエンジンなどの議論は、あくまでも内輪のことである。
マツダにとってもっとも効率的な方法を選択し、少しでも魅力的な商品力を持った車を提供してくれればいい、という事なのだ。
だが、こうしたハード面のことを理解した上でマツダ車を選択する人たちは、実はそれほど多くはない。それ以上に、魂動デザインに魅力を感じ、「カッコいいから」を選択理由にしているユーザー層が相当数いるという、現実がある。
これまでクルマ好きたちの想いを中心に支えられてきたマツダは、ご自慢の「人馬一体感」が、そうした支持の根底にある。当然、エンジニアたちが追い求めてきた走りの感覚は、マツダ車の魅力の根幹を成す物であり、決してなくしてはいけないもの。今後も日々進化させるべき要素だ。
一方で、マツダをデザインで選択した人にとってFRとFFの違いは、あまり大きな問題ではなく、ひょっとしたらその違いすら分からないかもしれない。当然、スモールとラージで駆動方式も変えましたと説明したとしても、タイヤチェーンを装着するとき以外にそれを意識することはないかもしれない。
だが、以前から「世界シェアは2%。私たちはスモールプレーヤーである」と自認してきたマツダが、さらなる発展を遂げるためには、そうした、ごくごく普通のユーザーの獲得増が不可避だ。
■分かりやすいラインナップ整理はマツダの急務
そのためにも、もう少し分かりやすくラインナップを整理して欲しいと思ってしまう。
現在「マツダ+一桁数字」が、コンパクトカーやセダンのことであるというのは、一般のユーザー層にも取りあえず浸透してきた。
今後、新型マツダ2に高効率エンジンである「SKYACTIV-X 1.5+マイルドハイブリッド」や直列3気筒ディーゼルターボエンジン「SKYACTIV-D 1.5」などを搭載して登場すれば、さらにモデルの特長が際立つであろう。
そしてラージモデルとなるマツダ6が、直6エンジン搭載のFRスポーツセダンとして登場すれば、さらに差別化や理解度は進むはずである。
問題は、今後より力を注ぐことになるSUVである。国内投入モデルを見てみると、現段階では「CX+一桁数字」と「CX+二桁数字」が混在し、ラインナップを理解出来ない人たちもかなり存在する。
今後、CX-3がしばらく延命し、そこに新型CX-5投入となれば、話は少々ややこしい。CX-30、CX-60、CX-80などの二桁数字モデルとの混在による分かりにくさは、解消されないままだからだ。ブランド価値をより向上させるためにも、SUVの明確なラインナップ形成は急いで欲しいと思うのはそれがあるからだ。
かといって、これまで売り上げに大きく貢献し、知名度も高いCX-3、とくにCX-5と言うブランドを一気に変更することも、相当に難しい決断ではあるが……。
コメント
コメントの使い方